2章第7話:「甘いココアと…」/恋する3センチヒール

恋する3センチヒール

FXの話を詳しく教えてくれる大介。
小悪魔な態度をする玲奈の心の内は・・・?
前回 2章第6話:「てこの原理」

2章第7話:「甘いココアと…」

「別に、俺だけのやり方って訳じゃないから」

照れたような顔をして、大介さんは笑った。
いつもよりも肩の力が抜けて、リラックスした表情の大介さんは、カフェ男子に相応しい空気感を完全に醸し出していた。
すごい適応力だなぁと、甘くて濃厚なココアを口に含みながら思う。

「銀行にお金を預けると金利がつくでしょ?例えば、日本の金利が年間0.1%でオーストラリアドルの金利が年間5%だった場合の金利差は、何%でしょう?」

「4.9%ですか?」

「そう、正解!この例でいくと、オーストラリアドルを保有している間は、ずっと4.9%の金利がつくことになる。この二国間の金利差のことを”スワップポイント”っていうんだ。保有した金額と、その期間分のスワップポイントを受け取ることが出来るから、日本円で銀行に預金するんじゃなくて、日本のFX会社に外国通貨で保管しておくだけで勝手に金利がついて、少しずつお金が増えていくっていう仕組み」

「大介さんは、スワップポイント狙いでFXをやっているっていうことですか?」

「そ!FXってさ、平日は24時間市場が開いていて売買可能なんだ。日本の株式市場は9時から15時までしか動いていないから寝不足になる心配はないんだけど、FXでいうと日本時間の夜の22時から24時はロンドンやニューヨークとか大きな市場が活発になる時間だし、恥ずかしい話、気になってしまって一時期不眠症になった」

大介さんは、てっきりプライドが高いものだと思っていた。
だからこそ、自分の失敗話しをしたことが意外で新鮮だった。
カフェにいる大介さんは、いつもよりも距離が近く感じる。

―これがモテる男子の戦略?まさか?

甘いココアで心がほぐれたのか、私も大介さんに自分の心を許しはじめていると感じた。

「大介さん、お仕事大変そうなので、どちらにせよ睡眠不足なイメージですけどねっ」

「いやいや。レバレッジ5倍くらいしか掛けなかったけど、それでも自分の資産が絡んでくると、マーケットが気になっちゃうから眠れなくなった」

「下がっちゃったら、損ですもんね」

「いや、上がるか下がるかの見込みを立てて、それが当たればいいから、下がる見込みを立てて、本当に下がったら得もする。為替差益を狙った取引だからね。この場合逆に上がったら損するし。上がっても下がっても、得する人と損する人が出てくるのが、面白いよね!」

楽しそうに、大介さんは笑った。
屈託のない笑顔は、俊明くんと重なった。
明日は、俊明くんと2人で大介さんに教わった肉バルへ行く。
少しだけ小悪魔な気分で、残りのココアを飲み干した。

2章第8話:「焼肉の煙と過去」

みかみ

パグ犬愛好家。 趣味は、投資。夢は、世界を虜にする小説家。

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