2章第6話:「てこの原理」/恋する3センチヒール
大介と目があっただけで、なぜだか熱くなってしまった玲奈。
二人の間を繋ぐものはお金の話だけではない・・・?
前回 2章第5話:「代官山のカフェ」
2章第6話:「てこの原理」
「玲奈は、海外旅行とか行く?」
「あっ。この前、ハワイに行きました」
そういえば、SNSでハワイ旅行の写真を見たような気がした。
花モチーフの髪飾りをつけて、はしゃいでいる一枚。
あの写真をチラッと見たときには、こうやって再会するとは思ってもみなかった。
目の前にいる彼女の顔を改めて見た。
彼女は、少し不思議そうな顔をして、小さく首を傾げた。
「ハワイに行った時にさ、お金って両替した?」
「しました!」
「自国の通貨を外国の通貨に両替する行為を外国為替取引っていうのは、知っているかな?例えば1ドル100円で交換したものが、日本に帰国して1ドル120円になっていたら、ドルから円に交換した時にプラス20円でしょ?簡単にいうと、この為替レートの差額が儲けになる仕組みがFX。FX会社や証券会社に証拠金っていう形でお金を預けて取引をする」
「なるほど!」
しっくりときたようで、彼女は腕を組みながら二回頷いた。
「仕組みについては、なんとなく理解したんですけれど、FXってハイリスクハイリターンっていう印象が強くて。どうして世間一般的に、こういうイメージがついてしまっているんですか?」
「いい質問だね」
褒められたことが少しくすぐったかったのか、彼女は少女のような表情をした。
表情豊かな点は、間違えなく彼女の魅力だ。
この表情の下に、貪欲に金融知識を欲しているのが興味深い。
「レバレッジって聞いたことある?」
「てこの原理ってやつですか?少ない力で大きなものを動かすっていう」
「そう!FXでいうと、少しのお金で大きなお金を動かすことをいうんだ。レバレッジは、資金を担保にして、その25倍までの金融の取引が行える仕組み」
「えっ。100万円預けたら、2500万円までの取引が出来るっていうことですか?」
「そうだよ」
携帯電話を取り出すと、改めて25倍について計算したらしく、彼女は開いた口が塞がらないというような顔をして、顔を上げた。
「例えば、自己資金100万円あって、レバレッジを25倍かけて2500万円分にして、1ドル100円で購入したら25万ドルになるでしょ?で、1ドルが円安になって105円になれば25万×プラスの5で、125万円儲かることになるけど、逆に円高になって95円になったら125万円損するっていうこと!」
「うわ」
「これが、ハイリスクハイリターンといわれる所以。けれど、俺はあまりリスクをとらないFXのやりかたをしてる」
「こっそりでも良いので、教えてください」
彼女は耳の横に手を当てて、身体を少し近づけた。