2章第5話:「代官山のカフェ」/恋する3センチヒール
どんどんと心を揺さぶる大介。
また会いたいと告げられて玲奈は・・・
前回 2章第4話「ワインと彼女」
2章第5話:「代官山のカフェ」
「おっ。俺のマキアート、くまさんになってる」
私服姿の大介さん。白いシャツに紺色のジャケットに、ロールアップされているベージュのパンツ。
斜めがけの鞄。
女子率の高い代官山のカフェにも、大介さんは違和感なく馴染んだ。
「わ!可愛いですね。私も、ラテを注文すればよかったな」
「玲奈のココアも、生クリームふわふわじゃん」
「大介さん、カフェ好きだったんですね」
「バーには、バーの良さ。カフェには、カフェの良さ。飲食店という括りでは同じでも、全然違うから面白いよね」
前回の金曜日、正確に言えば一昨日の夜。
別れた後に予定を確認して来週の金曜日で約束しようとしたら、日曜日のお昼が空いていたらカフェに行こうと提案された。
「ほんと、大介さんって女の子にモテそうですよね」
「そう?玲奈だって、モテるでしょ?」
「いや、私は全然です。去年、二年間付き合った彼氏と別れたあとは、なーんにもなくて。元彼も、音信不通なんです。何か自分に、欠陥がある気がしちゃって。最近は、今後一生独身だとしても、自分で自分を養える人間になれるようにならなきゃって思いはじめて…」
「あ、だから運用に興味があるの?」
「まぁ、理由はそれだけじゃないんですけどね」
「そっか。玲奈に、欠陥があるようには見えないけれど」
「へへっ。そう言ってもらえると嬉しいです。頑張ります」
ギラギラしているイメージの大介さんに、こんな一面があったとは。
テーブルに飾られているマーガレットのピンク色の花の先に、ゆっくりとマキアートに口づける大介さんの姿。
大介さんの睫毛の長さに、思わず見とれてしまった。
やっぱり、大介さんは王子に相応しい…。
「ん?」
私の視線に気が付いた大介さんと、目が合った。
「えと…」
なぜだか、顔が熱くなった。隠すように、言葉を絞り出す。
「FXについて、教えてください!」
大介さんの真ん丸とした目が、更に丸くなった。