【Z世代のマネー学】資産運用の結果に影響を及ぼす「金融商品のコスト・税金」

資産運用の結果に影響を及ぼす「金融商品のコスト・税金」
マネーケア

銀行にお金を預けても、お金はほとんど増えません。ミレニアル世代・Z世代と呼ばれるみなさんがこれからお金を増やしたいならば、投資をすることが欠かせません。

投資をするというと、つい「いくら儲かるか」「どのくらい増やせるか」に目が行きがちです。その気持ちはわかるのですが、それよりも気にしてほしいことがあります。それは、「金融商品のコスト・税金」です。なぜなら、金融商品のコストや税金が、資産運用の結果に影響を及ぼすからです。

今回は、金融商品のコスト・税金について解説していきます。
▶︎前回:老後資金2000万円問題とはなんだったのか。本当に必要な資金はいくら?どう準備する?

取引手数料を甘く見てはいけない! 投資信託は「信託報酬」に要注意

投資では、主に商品を買うとき・商品を保有しているとき・商品を売るときに所定の手数料がかかります。

主な金融資産の取引手数料

主な金融資産の取引手数料
表:筆者作成(2021年3月2日時点)

上の表のとおり、取引手数料は商品の種類や投資を行う金融機関によって異なります。ただ、共通しているのは、基本的には手数料の分だけ損になるということです。ですから、手数料は安いに越したことはありません。

しかも、取引手数料はどの金融機関を選ぶかによっても異なってきます。

たとえば、株式投資の際にかかる売買手数料。多くの金融機関では、ひとつの注文が成立(約定)するごとに手数料がかかる「約定ごと」のプランと、1日の約定代金の合計額で手数料が決まる「定額」のプランの2つを用意しています。

主なネット証券の取引手数料

1注文ごとの約定代金に応じた手数料(現物取引)
1注文ごとの約定代金に応じた手数料(現物取引)
表:筆者作成(2021年3月2日現在、税抜き)

1日の約定代金合計額に応じた手数料(現物取引)
1日の約定代金合計額に応じた手数料(現物取引)
表:筆者作成(2021年3月2日現在、税抜き)

約定ごとに手数料がかかるプランの場合、株式を買うとき・売るときにそれぞれ手数料がかかります。
たとえば、300万円の株式を買って売った場合(価格変動はなかったものとします)、楽天証券やSBI証券の手数料の合計は1842円なのに対し、マネックス証券では9000円かかります。7000円以上の差があるのです。

また、定額のプランの場合、最近は「1日100万円まで0円」とする証券会社が増えてきました。
以前は「取引回数が少ないなら約定ごと、多いなら定額制」とお話ししていましたが、頻繁に取引をしない方でも、定額制を選んだ方が手数料を節約できるケースがあります。自分がどんな取引をするかで選ぶといいでしょう。

以前の記事(【ミレニアル世代のマネー学】金融商品の特徴と、リスク、リターンを教えて!)でおすすめした投資信託では、買うときに購入時手数料(販売手数料)・保有中に信託報酬、そして売るときに信託財産留保額という手数料がかかります。

このなかで、投資信託を買う際に最も重要なのは、信託報酬です。
信託報酬は、投資信託を持っている間ずっと、資産から少しずつ引かれていきます。投資信託は、長期・積立・分散投資で長期間にわたって保有することが多いので、ほんの少しの差が大きな利益の差となることがあるのです。

たとえば、信託報酬が0.8%のファンドAと、信託報酬が1.5%のファンドBがあったとします。この2本の投資信託は、どちらも年3%の運用利回りを得ることができました。この2本の投資信託に毎月3万円ずつ積み立てをした場合、リターンにどのくらい差がつくと思いますか。

信託報酬の差は30年後にどう表れる?

運用利回り3%のファンドに、毎月3万円の積み立てをした場合(※税金は考慮せず、複利計算)
運用利回り3%、毎月3万円の積み立てケース
グラフ:筆者作成

ファンドAの資産総額は1526万円だったのに対し、ファンドBの資産総額は1360万円。たった0.7%の違いが、30年で166万円もの違いを生んだのです。

こうしてみると、信託報酬は少しでも安い商品を選んだほうがいいことがわかりますね。

なお、購入時手数料は購入する金融機関によってかかる場合・かからない場合があるので要注意。最近は購入時手数料のかからない「ノーロード」と呼ばれる投資信託が増えてきています。また、売るときの信託財産留保額は、投資信託の運用を安定させるための手数料なので、長期保有する前提であれば、あったほうがいいともいえます(ない投資信託も多くあります)。

外国債券を売買するとき、外貨預金をするとき、FX(外国為替証拠金取引)をするときなどには、為替手数料がかかります。
為替手数料は、他の通貨への両替にかかる手数料です。たとえば円をドルに交換するときいくら、ドルを円に交換するときにいくら、という具合にかかります。通貨の価値は
日々変動しています。その変動によって、利益が変わってくることもあります。

外国債券や外貨預金の場合は、購入時(預け入れ時)にいくら、売却時(引き出し時)にいくらという具合に、金融機関ごとに定められた金額を支払います。たとえば三菱UFJ銀行のネットバンキングで1万ドルを預金する場合の為替手数料は、25銭×1万ドル=2500円となります。
FXの場合は、通貨を買うときの為替レートと売るときの為替レートに差があります。この差(スプレッド)が手数料になります。スプレッドは原則として固定されていることがほとんどですが、相場が急変したときなどに広がる(大きくなる)ことがあります。

さらに、実は生命保険でも販売手数料を支払っています。
生命保険に支払う保険料には、将来の保険金支払いに充てられる「純保険料」と、保険会社の経費となる「付加保険料」が含まれています。純保険料はどの保険会社も同じですが、付加保険料は保険会社が自由に決められます。この付加保険料の中に含まれるのが販売手数料です。
生命保険の販売手数料は商品によりまちまちで、公表されていないケースも多くあります。一般的には、円建ての保険でおおよそ2〜3%、外貨建ての保険で6〜8%。他の投資に比べて高くなっています。

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頼藤 太希

(株)Money&You代表取締役/マネーコンサルタント 中央大学客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。...

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