10月消費税増税! キャッシュレス決済はどこまで普及する?

マネーケア

2019年10月の消費税増税に合わせて、キャッシュレス決済によるポイント還元がスタート。5%または2%の還元が2020年6月まで、9か月間行われます。
キャッシュレス決済手段には、クレジットカード・デビットカード・プリペイドカード・電子マネー・スマホ決済(QRコード決済/IC決済)があります。

小売・飲食・サービスなどの中小売店では5%、フランチャイズのコンビニ、レストラン、ガソリンスタンドでは2%の還元を受けることができます。また、AmazonなどのネットショッピングやECサイト上の中小店舗も対象です。

今回は、キャッシュレス決済はどこまで普及するのか、政府の狙いにも触れながら考えていきたいと思います。

知名度が高いスマホ決済、実際の利用率は10数パーセント

キャッシュレス決済に注目が集まった大きなイベントといえば、「PayPay」(ペイペイ)が2018年12月4日から実施した「100億円あげちゃうキャンペーン」ですよね。このキャンペーンは10日間で終了と圧倒的な速さで終わりましたが、このことがきっかけで一気にキャッシュレス決済に注目が集まりました。

以来、LINE Pay、楽天ペイ、d払い、Origami Payなど〇〇ペイ(総称して「スマホ決済」と呼ばれますが)が乱立し、多くのメディアでも連日スマホ決済について報じられているので、知らない人を探す方が珍しいでしょう。
でも、知っている人は多くても、スマホ決済利用者はまだまだ少ないのが現状です。

NECソリューションイノベータが公表した「一般消費者におけるキャッシュレス利用実態調査レポート」によれば、スマホのQRコード決済利用率は18.7%、スマホのIC決済利用率は13.2%となっています。現金の利用率は96.4%、利用頻度も週に4回と、まだまだ現金社会なのがわかります。


出典:NECソリューションイノベータ「一般消費者におけるキャッシュレス利用実態調査レポート」https://www.nec-solutioninnovators.co.jp/ss/retail/whitepaper/05/

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調査対象:15~69歳の男女 マクロミルモニタ登録者
調査時期:2019年7月5日~7月7日
調査地域:全国
調査方法:インターネット調査
有効回答数:3,098サンプル
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同レポートによれば、スマホ決済は主にコンビニで1,000円未満の買い物で利用されているとのこと。
また、スマホ決済利用者の年齢層を見ると、男女ともに20-30代が多く、年齢が上がるにつれてスマホ決済利用率が減っていくという具合です。

知名度はあっても、利用者は少ないというのが見て取れたと思います。
今後もこの傾向は続くのかどうかですが、キャッシュレス還元によって風景は少しずつ変わっていくのではないかと考えられます。

「キャッシュレス還元」を実施する意図は?

日本は現金社会であり、キャッシュレス決済の世界では後進国。
経済産業省「キャッシュレス・ビジョン」(2018年4月)によると、日本のキャッシュレス決済比率(2015年)はわずかに18.4%となっています。隣の韓国が89.1%、中国が60.0%、アメリカが45.0%であることと比べると、とても少ないといえるでしょう。
国はこれを2025年に40%、将来的には80%まで引き上げようとしています。

キャッシュレス還元を推進する理由は主に2つ考えられます。
一つが消費増税によって、家計の負担が増さないように、消費の冷え込みを抑えるというもの。

そしてもう一つの理由が、このキャッシュレス決済比率の底上げです。

キャッシュレス社会が浸透すると、事務効率化を通した事務コストのカット、決済に関連する諸々の時間の節約、少子高齢化による人手不足の改善、紙の削減を通じてエコロジカルな社会の実現、キャッシュレス決済に慣れた外国人観光客の需要の取り込み、データ化された購買情報を活用した高度なマーケティングの実現など期待されます。

国の狙いは以上の通りですが、私たち消費者にとってはキャッシュレス還元を受けない手はないかなと思います。
9か月間をキャッシュレス決済で生活するか、現金決済で生活するか、人によって還元金額は異なりますが、仮に月3,000円の還元を受けられたら9か月間で2万7,000円の差になります。

このポイント還元の原資は国のお金ですが、元を正せばそのお金は私たちの税金です。
スマホ決済を利用するかどうかはさておき、キャッシュレス決済を避けるのは損です。現金払いに固執せずに、税金が還元されるチャンスをしっかり掴みましょう。

2025年に40%を目指すべく、次なるキャッシュレス還元策も

政府が2019年9月3日に開催した「デジタル・ガバメント閣僚会議」において議題に上がったものが「マイナポイントを活用した消費活性化策」というもの。マイナポイントというポイントで消費活性化を図る、ということのようです。

マイナポイントは、マイナンバーカードを取得した人が設定できる「マイキーID」で管理するポイント。マイキーIDを設定した人が、民間のスマホ決済手段に一定金額をチャージすると、国のお金がプレミアム分としてマイナポイントの上乗せをするというしくみのようです。

現在、2万円チャージするとマイナポイントが5,000円分上乗せされて、2万5,000円分となるという案が有力とのこと。これは、還元率になおすと25%。
2019年9月時点でマイナンバーカードの保有率が13.9%なので、マイナンバーカードの普及が第一の目的だとは思いますが、ポイント還元を受ける条件として「スマホ決済」としているので、キャッシュレス決済比率を底上げする狙いもあるのでしょう。

まとめ

キャッシュレス決済の中で、ポイント還元率が高いのがやはりスマホ決済です。
とはいえ、普段のライフスタイルや生活圏によっても、使いやすいサービスは変わります。クレジットカード、電子マネー、スマホ決済はひと通り使える環境を整えて、キャッシュレス生活を楽しんでみてください。

頼藤 太希

(株)Money&You代表取締役/マネーコンサルタント 中央大学客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。...

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