「手取りの給与」はどう決まるのか

「手取りの給与」はどう決まるのか
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給料日が来ると、口座に給与が振り込まれるとともに、会社から給与明細が手渡されます。口座に振り込まれる給与は、誰もがチェックするでしょう。しかし給与明細はどうでしょうか。よく見ていない方も多いのではないでしょうか。

今回は口座に振り込まれる給与、「手取りの給与」がどう決まるのか、紹介します。

手取りの給与は総支給額から総控除額を引いた金額

手取りの給与とは、給与や手当など、会社からもらえるお金の合計額から、社会保険料や税金など、会社があらかじめ控除する(差し引く)お金を引いた残りの金額です。

会社からもらえる給与明細には、「勤怠」「支給」「控除」の3つの項目があります。勤怠には給与計算のもとになる勤務状況、支給には会社からもらえるお金の種類と内訳、控除には会社が差し引くお金の種類と内訳が記載されています。

支給の合計(総支給額)から、控除の合計(総控除額)を差し引いた金額が手取りの給与、つまり口座に振り込まれる給与となります。

手取りの給与が正しいかをチェックするためにも、ぜひご自分の給与明細を用意していただければと思います。以下ひとつずつ、確認していきましょう。

「勤怠」には何が書いてある?

給与明細の勤怠欄には、1か月の勤務状況が書かれています。

「勤怠」の主な記載内容

・出勤日数:出勤した日数
・欠勤日数:欠勤した日数(給与の支払いなし)
・有休消化日数:有給休暇をとった日数(給与の支払いあり)
・有休残日数:有給の残り日数
・労働時間:働いた時間
・遅刻早退時間:遅刻・早退によって仕事をしなかった時間(給与の支払いなし)
・残業時間:残業で働いた時間
・休日労働時間:休日に働いた時間
・深夜勤務時間:22時〜翌5時の間に働いた時間

会社によっては名称が違う場合や、他の日数・時間が記載されている場合もあります。もっとも、勤怠欄に書いてあることはそれほど難しくないでしょう。タイムカードや勤怠の記録などと給与明細の内容を突き合わせて、正しく反映されているかを確認しましょう。

「支給」には何が書いてある?

給与明細の支給欄には、会社からもらえる給与や手当などが書かれています。

●「支給」の主な記載内容

・基本給:毎月固定で支払われる基本的な賃金
・時間外手当:残業をした場合に支払われる手当
・役職手当:「主任」「課長」「係長」などの役職についている人に支払われる手当
・資格手当:業務上必要な資格を持っている人に支払われる手当
・住宅手当:従業員が住む家や部屋に対する手当
・通勤手当:通勤にかかる費用に対する手当

会社によっては名称が違う場合や、他の手当が支給される場合もあります。

基本給・役職手当・資格手当は、昇給・昇進したり新たに資格を取ったりしない限り毎月同じ金額です。また、住宅手当や通勤手当も同様に、住宅や通勤経路が変わらないならば毎月同じはずです。誤りや支給漏れがないか、念の為確認しましょう。

残業代がきちんと計算されているか要チェック

一方、時間外手当は、残業時間によって金額が毎月変わります。勤怠欄に残業時間や休日労働時間などが書かれているときは、それが正しく時間外手当に反映されているかを確認する必要があります。

労働基準法では、法定労働時間(原則1日8時間、1週40時間)が定められています。これを超えて残業を行なった場合は、割増した残業代が支払われるしくみになっています。

残業代は、1時間あたりの賃金の25%増が基本ですが、法定休日(毎週1日または4週で4日以上の休日)に働いた場合は35%増、午後10時〜翌午前5時に働いた場合は25%増となります。これらは重複するので、たとえば「平日残業で午後8時から深夜0時まで働いた」という場合は、午後8時から10時までの2時間は25%増、10時から0時までの2時間は50%増になります。

なお、法定労働時間内で残業をする場合(法内残業)については、残業代の割増は発生しません。たとえば、午前9時から午後5時まで(休憩1時間・所定労働時間7時間)勤務の人が午後6時まで1時間残業をしても、残業時間が法定労働時間の1日8時間の中に収まっていますので、残業代は割増にはなりません。「午後5時から7時まで残業した」という場合は、午後6時から7時までの1時間については残業代が25%割増になります。

また、裁量労働制を採用して、あらかじめ固定残業手当が支払われている場合でも、固定残業手当分を超える残業を行なった場合には、その超えた分の残業代は支払われるルールです。「裁量労働制だからいくら残業しても残業代なし」とはなりませんので、給与明細を見ておかしいと思ったら、会社の経理など所管部署に確認してみましょう。

通勤手当は非課税扱い

通勤手当は、自宅と会社の通勤にかかる費用に対する手当で、非課税扱いとなります。ちなみに、営業で外を回ったり、会議のために出張したりといった、仕事上の移動にかかる費用は給与とは別の交通費です。経費精算の対象となります。

「控除」には何が書いてある?

給与明細の控除欄には、会社から引かれる社会保険料や税金が記載されています。

「控除」の主な記載内容

・厚生年金保険:65歳になったときなどにもらえる厚生年金の保険料
・健康保険:業務外の病気やケガのときの医療費負担が減らせる健康保険の保険料
・介護保険:介護サービスの負担が減らせる介護保険の保険料(40歳以上)
・雇用保険:失業したときなどに手当がもらえる雇用保険の保険料
・所得税:所得にかかる税金
・住民税:お住まいの都道府県・市区町村に納める税金(社会人2年目以上)

会社によっては、他の費用が控除されている場合もあります。

冒頭でも触れたとおり、手取りの給与は、総支給額から総控除額を引いた金額です。ですから、どんなお金がいくら引かれているかはとても重要です。

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頼藤 太希

(株)Money&You代表取締役/マネーコンサルタント 中央大学客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。...

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