「FIREで海外移住」候補はどこ? 各国の税金事情を解説
資産運用によって経済的に自立し、早期リタイアを目指すFIRE。FIREは「誰でも早期リタイアが目指せる」とあって、日本はもちろん海外でも話題です。
FIREを実現すれば、何も日本に住む必要はありません。それどころか、海外に住んだ方がよりFIREでの生活がしやすくなります。
そこで今回は、「FIREで海外移住」を考える際の候補と、各国の税金事情を解説します。
FIREなら海外移住も可能
FIREでは、資産運用で得られる不労所得で生活費をまかないながら生活をしていきます。生活費が少ないほど、必要な資産はより少なくて済みます。しかし、FIREを実現できても、余裕がまったくなければ、FIRE後も厳しい節約を続ける必要があります。これでは、生活も味気ないものになってしまいます。
FIREを少ない資産で達成したいものの、ゆったりと暮らしたい…というときに検討したいのが、海外移住です。そもそもFIREを実現すると、働き方が自由になります。働き方が自由になれば、たとえば「会社の近く(通える範囲)に住む」といった必要がなくなります。今はリモートワークが普及してきたので、すでに住む場所に縛られずに働ける方もいるでしょう。そうすると、何も日本に住む必要もなくなります。
実際、世界の国々の中には、日本よりも物価が安い国・地域があります。マーサー「2021年世界生計費調査‐都市ランキング」によると、東京の物価は調査対象の209の国・地域で4位と非常に高いのです(なお、大阪23位、名古屋34位)。日本よりも物価の安い国に住めば、支出も少なくでき、FIRE後の生活もしやすくなります。
税金の面でも日本より有利な国があります。
日本では、買い物の際に10%(食料品など一部8%)の消費税がかかりますが、世界の国々の中には、消費税が少なかったり、一部の商品にはかからなかったりするところも。また、日本では原則10%かかる住民税も非課税になっている国が多くあります。
こうした国に海外移住すれば、生活コストをさらに下げられるでしょう。
FIREの海外移住先の候補6選
FIREの海外移住先の候補として6つの国を紹介します。なお、以下のデータは2022年6月6日調査時点のものです。
●FIREの海外移住候補1:タイ
・物価ランキング(マーサー調査):46位(バンコク)
・消費税:10%(現状7%に据え置き)
・住民税:なし
・所得税:0%〜35%の累進課税
東南アジアの中部に位置する常夏の国、タイ。物価ランキングは46位ですから、日本よりも多少安い、といったところでしょうか。
日本の消費税にあたるVAT(付加価値税)は本来10%で、引き上げが予定されていますが、現時点では見送られており、7%となっています。また、タイでは住民税にあたる税金は課税されません。
タイ国内で働いた場合には、日本と同じように年間所得に対して0%〜35%の税金(個人所得税)がかかります。累進課税の制度も日本とよく似ていて、所得から基礎控除・本人控除・配偶者控除・児童控除・生命保険料控除などの各種所得控除を差し引き、残った金額(課税所得)に所定の税率をかけて所得税を算出します。なお、所得が15万バーツ(約57万円)までの場合は非課税です。
参照:JETRO
●FIREの海外移住候補2:ベトナム
・物価ランキング(マーサー調査):139位(ハノイ)、143位(ホーチミン)
・消費税:10%(必需品は5%)
・住民税:なし
・所得税:5%〜35%の累進課税
インドシナ半島にあり、東側を南シナ海に面するベトナムは、近年急速に経済成長を遂げている国のひとつです。それでいて物価ランキングは日本よりもずっと低くなっています。
ベトナムの消費税(VAT)は日本と同じく10%となっていますが、水・食料品・農産品・医薬品などの必需品には5%の軽減税率が適用されています。食料品にかかる消費税は日本より3%分安いですね。また、タイと同じく住民税はありません。
ベトナム国内で働く場合にかかる所得税は5%〜35%の累進課税。所得が多い分には、段階的に高い税率が適用されます。所得からは基礎控除、扶養控除、社会保険料控除などを差し引くことが可能。月次の課税所得が500万ドン(約2万8000円)までであれば所得税は5%です。
●FIREの海外移住候補3:カンボジア
・物価ランキング(マーサー調査):125位(プノンペン)
・消費税:10%(一部サービスは0%)
・住民税:なし
・所得税:0〜20%の累進課税(給与税)
世界遺産「アンコールワット」が有名なカンボジア。カンボジアも、物価ランキングは125位と、ベトナム同様物価が安いので、生活コストを大きく下げられるでしょう。
カンボジアの消費税(VAT)は食料品も含めて10%ですが、医療サービスや医薬品、公共交通サービス、電力・水道などのサービスには課せられません。そしてカンボジアでも、住民税はかかりません。
カンボジア国内で働いた場合の所得税(給与税)の税率は0%〜20%と、日本はもちろんタイ・ベトナムと比べて税率の上限が少なくなっています。所得控除には扶養控除があります。これを控除したあとの給与金額が130万リエル(約4万1600円)以下であれば給与税はかかりません。
参照:JETRO
●FIREの海外移住候補4:ミャンマー
・物価ランキング(マーサー調査):104位(ヤンゴン)
・消費税:5%(商業税)
・住民税:なし
・所得税:0%〜25%の累進課税
稲作が盛んなミャンマーも、物価ランキングは104位と、それほど高くはありません。消費税にあたる商業税は5%ですが、食料品・農業品・畜産品など、さまざまな非課税品目が設けられています。ホテルや観光サービスの税率は3%です。しかし、乗用車、宝石類、酒類、たばこなど、特定の品目については最大で80%までの高い税率が課せられます。住民税はありません。
ミャンマー国内で働く場合の所得税率は0%〜25%。所得控除には基礎控除・配偶者控除・親の扶養控除・子女の扶養控除・保険料控除があります。これらを差し引いた課税所得が200万チャット(約14万円)以下であれば、所得税はかかりません。
参照:JETRO
●FIREの海外移住候補5:インドネシア
・物価ランキング(マーサー調査):104位(ジャカルタ)
・消費税:11%(付加価値税)
・住民税:なし
・所得税:5%〜35%の累進課税
中国、インド、アメリカに次いで4番目に人口の多いインドネシアですが、物価はミャンマーと同じ水準となっています。
消費税にあたる付加価値税は2022年4月に10%から11%に上昇。2025年1月からは12%となる予定です。また別途「奢侈品(しゃしひん)販売税」という、いわゆるぜいたく税があり、一部の品目には10%〜最大200%と、非常に高い税率が適用されます。インドネシアでも、住民税はありません。
インドネシア国内で働く場合の所得税率は5%〜35%。所得控除には基礎控除・配偶者控除・扶養控除・業務関連控除などがあります。これらを差し引いた課税所得が5000万ルピア(45万円)までであれば、所得税率は5%となります。
●FIREの海外移住候補6:シンガポール
・物価ランキング(マーサー調査):7位(シンガポール)
・消費税:7%
・住民税:なし
・所得税:0%〜22%の累進課税
マレー半島の先端にある島々からなるシンガポールは、東南アジアの中でもっとも経済が成長した国です。物価ランキングは7位と、東京とほとんど変わりません。しかし、消費税(GST:Goods and Services Tax)は7%と、日本より安くなっています(なお、2023年1月からは8%、2024年1月からは9%と段階的に値上がりする予定)。そのうえ、住民税も非課税なので、生活コストがその分抑えられます。
シンガポール国内で働く場合の所得税は0%〜22%の累進課税。所得控除には基礎控除のほか、高齢就労者の基礎控除、配偶者控除、扶養控除などが用意されています。これらを差し引いた課税所得が2万シンガポールドル(約189万円)までであれば、所得税率は5%。仮に働いたとしても、税率は最大でも20%ですので、日本で働くよりもずっと税金が少なく済みます。
なお、シンガポールでは相続税や贈与税も課されないため、節税目的で移住する富裕層も多いといわれています。
参照:JETRO