第1話:再会/恋する3センチヒール
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一年ぶりに再会した男女が、東京を舞台に繰り広げる”お金”にまつわる恋愛小説。
第1話「再会」
「玲奈さん、お久し振りです」
表参道のA3出口近く。19時過ぎ。
都内有数のオシャレタウンだということだけあって、私の前を沢山の足音が素通りしていった。
そんな中、私の名前を呼んだ声に、携帯電話から視線を上げた。
「久しぶり!なんか、スーツ着ていると俊明くんじゃないみたい」
真新しいスーツに、短めの髪がしっかりとジェルでセットされている。
3年前の学生時代に、アルバイト先のカフェで働いていた姿が脳裏に浮かんでいた。
「今年の4月から、自分も社会人になったんで。もうエプロンつけて、オーダーはとりません」
「ふふっ。そっか、そっか」
「玲奈さんも、すっかりキャリアウーマンって感じですね」
「そう?」
「なんか眩しいっす」
笑うと目が線になって、口元から八重歯が顔を出す。
俊明くんの変わらない笑顔を見て、胸の奥がきゅっと引っ張られたような感覚が微かにした。
ほんの、微かに。
「新社会人の方が、眩しいって。私はもう、フレッシュさには欠けているから」
「いや、けど、玲奈さん輝いていますよ?」
「よーし。今日は奢っちゃおうかなー」
「よっしゃ!」
「こら」
スーツの腕を少し捲り上げて、腕時計の時間を確認する。
ピンクゴールドの輝きが、私を女にした気がした。
「お店予約してあるから、いこっか」
「えっ。お店予約してくれたんですか?」
「スムーズな方が、良いでしょ?」
ピースサインをして、笑って見せた。
学生時代には、調子に乗ってよくやっていたポーズ。
アルコールを摂取していないのに、はしゃいでいる私がいた。
「玲奈さん、変わってないですね」
「そう?」
スーツ姿にときめいた事を隠すように、コツコツと見慣れた表参道の街を歩く。
見慣れない、スーツ姿の後輩と。
少しだけ、いつもの街の光が温かく見えた。