3章第8話:「ヒヨコ」/恋する3センチヒール

恋する3センチヒール

運命的な出会いを果たした玲奈と紗愛子。
この運命に身をゆだねて、玲奈は新たな資産運用を始めるのか…

前回 章第7話「紗愛子さん」

3章第8話「ヒヨコ」

「道、迷ったりしませんでしたか?」

「大丈夫でしたっ」

今回は、紗愛子さんの会社の応接間でお話しを伺うことになった。
会社であれば資料なども充実しているだろうし、何より紗愛子さんが働いている会社が、どんな会社なのかが気になって、私から紗愛子さんにお願いした。

「それにしても、綺麗なオフィスですね」

「去年、移転したばかりなんです」

紗愛子さんは、嬉しそうに微笑んだ。

「今日は、メガネなんですね」

銀の細いフレームのメガネ。

「パソコンを使う時だけ、メガネなんです。ブルーライトカット仕様で、少し青いんですよ」

紗愛子さんは、メガネを外してレンズを光に当てて見せてくれた。
ほんのりブルーがかっている。

「今日は何でも、聞いてくださいね」

メガネをかけなおした紗愛子さんは、キリッとした表情をした。

「ちなみに、玲奈さんは、ワンルームタイプの投資用不動産の話しは聞いたことありますか?」

「ちゃんと聞いたことないです」

「もしかしたら、玲奈さんがご自身で勉強した部分と重複するところもあるかも知れませんが、一から説明させて頂きますね。最初に、簡単に投資用不動産の仕組みについてお話しさせて頂きます」

紗愛子さんは、ルーズリーフに絵を描き初めた。

「仕組みはとっても簡単なんです。玲奈さんは、一人暮らしで1Kのマンションに住んでいると前回おっしゃっていましたよね。今、払っている家賃はどこに消えているかご存知ですか?」

「オーナーさんですか?」

「そうです!じゃあ、その玲奈さんが払った家賃をオーナーさんは何に使っているでしょう?」

「物件のローン返済ですか?それかもう、家賃収入を得てそのまま不労所得として使っていたり…」

「大正解です」

ルーズリーフに、家賃を笑顔で受け取るオーナーの絵が足された。

「例えば、3000万円の物件を35年間分月々10万円でローンを組んだとします。そこに、家賃収入が9万円入ってくると差額が1万円ですよね。リスク無しの架空の話しで話しますが、35年間で420万円支払って、資産価値3000万円の物件を手にするっていう仕組みです。こういうのをレバレッジっていうんです。少ない力で、大きな物を動かすっていうことです」

紗愛子さんのペンが書き出す文字を追っていく。
柔らかいけれども、軸がぶれていない美しい字。

「と、いうことは…、35年後は、家賃月々9万円を生み出してくれて、年108万円手に入るっていうことですよね。つまり、約4年間で支払額実質0円の資産価値3000万円の物件が手元に残るっていうことですか?」

「リスクを一切無視して考えると、そういうことになります」

「そこで2000万円とかで売れたら、売るのも良し。そのまま持って、家賃収入を得るのも良しっていうことですね!」

一度ペンを動かすのをやめて、紗愛子さんは私を見ると感心したように頷いた。

「玲奈さん、よく勉強していますね」

私は、小さく首を振った。

「周りの人達を見ていて、呑気に生きているなぁっていう人がいて。いや、呑気に生きている人が悪いって訳じゃないんです。ただ、呑気に生きている人にも二種類いるなと思って。将来的に、備えをした上で呑気に生きている人と、備えはないのに呑気に生きている人。多分、備えがない人は、備えがある人と自分が大差無く生きているように見えていると思うんです。けれど、時が経って、人生の床がもし抜け落ちた時に、備えのある人とない人では大きな差が出てきますよね?私は、備えがある上で呑気に生きていきたいだけなんです。そして、気が付いてない人に、何か気が付くキッカケを与えられる人になりたくて勉強を始めました。けど、まだヒヨコレベルなんですけどね」

「なるほど…。熱い思いが、あるんですね。玲奈さんなら、必ず立派なニワトリになれますよ」

優しい眼差しで、紗愛子さんは微笑んだ。

3章第9話:「玲奈のモヤモヤ」

みかみ

パグ犬愛好家。 趣味は、投資。夢は、世界を虜にする小説家。

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