3章第9話:「玲奈のモヤモヤ」/恋する3センチヒール
着実にマンション投資について知識を深めていく玲奈。
そんな中あるモヤモヤが出てきて…
前回 3章第8話「ヒヨコ」
3章第9話「玲奈のモヤモヤ」
「玲奈さんは、メリットに関しては充分に理解して頂いているようなので、これからはリスクの話しをしましょうか」
紗愛子さんが用意してくれたカモミールティーを飲みながら、私は頷いた。
「玲奈さんが、思いつくところで一番大きくリスクに感じるのはどちらですか?」
さっき、紗愛子さんがパソコンで作成してくれたマンション投資シミュレーションを見た。
提携金融機関の「金利」の部分を人差し指でなぞった。
「銀行で融資を受けるのにあたって、金利が付くのは分かります。けど、この変動金利ってどういうものなんですか?金利が1%動いたら、1万円くらいローン額が増えますよね?そもそも、変動金利ってものが分からないので、私にとってはこれが一番リスクに感じちゃっています。まぁ、同じようにREITでも金利変動リスクってあるんですけど、あまり考えずにはじめてしまって。理解していないんです」
自分が分かっていなさすぎて、少し申し訳ない気持ちになった。
「変動金利って、なかなか聞かない言葉ですもんね」
紗愛子さんは、またルーズリーフに文字を書き込み始めた。
「はじめに、金利が上がる仕組みについてお話ししますね。まず、地価と日経平均株価が上がると世の中の景気がよくなってきます」
「あっ。バブルの時みたいな感じですか?」
「その通りです」
ルーズリーフに「バブル」の一言が足された。
「バブルは、ハイパーインフレと呼ばれる状態なので、財布の紐を締めるために金利が上昇します。つまり、景気が良くなるということは金利が上がるという事でもあるんですよ。ちなみに、不動産でいうと景気が上がるタイミングで地価も上昇するので、このタイミングで売って売却益を得ることも可能です」
「投資用不動産の購入価格には、専有部分と共有部分と土地の代金が含まれていますもんね。確かに、地価って重要ですね」
「そこも投資用不動産の面白いところだなぁって、私は感じています。ちなみに、変動金利の指標になるのは短期プライムレートです。現在の短期プライムレートは、最頻値1.475%で2009年に1月からマイナス金利導入後の2016年3月まで年間1%代で推移している状況なんです。ただ、やっぱりマイナス金利導入後、金利は下がっている傾向にあるなと肌に感じていますけどね」
「確かに、不動産業界は調子が良いって聞いたことあります!」
マイナス金利についてまとめてある雑誌に、そう書いてあったのを思い出した。
「お陰様で、現在は不動産投資に興味を持って下さる方が増えました。金利に関しては不安に思う方も多いですが、短期金利に関しては長期金利と違って日銀の金融政策でしっかりと管理されているんです。しかも、ローン会社で急な金利変動を起こせるのは1.25%と上限が決まっているんですよ」
「あっ」
私の中で、紗愛子さんの話しが綺麗に繋がった。
「金利が上がるということは、地価が上がって、景気がよくなったということになるから、つまり…不動産価格も上がっているっていうことになるんですね!」
紗愛子さんは、嬉しそうに笑って、小さく拍手をした。
「そうなんです!近い将来、金利が上昇することは無いとは言い切れませんが、現在の金融緩和政策や消費税増税を前にして考えると、青天の霹靂が起きない限り、金利ってそんなにリスクではないんじゃないかと個人的には思います」
「確かにそうですね。金利に関しては、しっくりきました」
「金利に関しては…ということは、他にもリスクに感じている点があるっていうことですね。お伺いします」
紗愛子さんは、また新しいルーズリーフを机に広げた。