東京、神奈川、埼玉、千葉…一都三県「平均年収」で年金額はどうなる?
「人生100年時代」。80代、90代まで長生きすることが当たり前になってきました。実際に年金を手にするまでには時間がありますが、その一方で退職後のお金のことが心配な人が多くいらっしゃいます。安心できる老後を迎えるためには、自分の年金が、いつから、どれくらいもらえるのか、目安を知ることが第一歩です。
今回は、一都三県(東京・神奈川・埼玉・千葉)のお住まいの方の年金受給額を試算し、老後資金を増やす方法を学んでいきましょう。
年金受給額はどう計算される?
日本の公的年金は、職業によって加入する年金制度が異なります。自営業やフリーランス、専業主婦などが加入する国民年金と、会社員や公務員が加入する厚生年金に分けられ、受け取る年金が異なります。
老後に受け取る年金は、前提として国民年金・厚生年金のいずれかに少なくとも10年間加入して、保険料を納めている必要があります。国民年金から支給される老後の年金を「老齢基礎年金」といいます。厚生年金に加入していた場合には、老齢基礎年金にプラスして老齢厚生年金を受け取ることができます。
国民年金は、20歳から60歳になるまでの40年間加入して保険料を納めて、65歳から年金を受け取るしくみになっています。もし加入期間が40年に満たない場合や未納期間や免除期間がある場合には、年金が減額されてしまいます。
国民年金の受給額の計算は、保険料の納付月数で決まります。2022年度の老齢基礎年金額は、満額の場合は、年額77万7800円です。何らかの事情で満額の年金が受け取れない場合には、60歳から65歳の間で保険料を納める「任意加入」という方法があります。
一方、厚生年金は加入月数と収入に応じて納めた額に比例して年金の額が決まります。厚生年金に加入している人は、老齢基礎年金と老齢厚生年金をセットで受取れます。年金額は、厚生年金に加入していた期間の平均的な月収、給付乗率(1000分の5.481)と加入期間を掛け合わせて計算します。毎月の給与やボーナスが高いと、もらえる年金額も多くなるしくみです。
40年間厚生年金に加入して働いた場合の年金額は、老齢基礎年金と合わせて次の計算式でおおよその受給額を求めることができます。
(平均月収額×0.005481×480か月)+77万7800円(老齢基礎年金)
ちなみに厚生労働省の「令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、全国の平均年金月額は、厚生年金で14万6145円、国民年金で5万6358円 になっています。
日本人の平均年収はいくら?
最近、諸外国と日本の違いが話題になるなか、日本の年収が海外の国々と違い、この20年間上がっていないことが取り上げられています。一体、日本人の年収はいくらなのでしょうか。今回は、厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」をもとに、日本人の平均年収を探っていきます。前提として、企業規模が10人以上という条件で平均を求めています。
まず、日本全国の平均年収を見てみましょう。ここでは、決まって支給する現金給与額は「給与額」、賞与その他特別給与額は「賞与等」と改めて表現しています。
日本人の平均年収男女計では、約489万円です。男女別に見ると、男546万円、女385万円と男女間で年収に大きな差があります。
●日本人の平均年収
※図表:「令和3年賃金構造基本統計調査」をもとに筆者作成(Excelデータ「1-10-sanko1」を参照)
次に、年代別の平均年収を見てみましょう。
男女計の年代別年収では、年齢が低いときには給与やボーナスが低く、50代でピークを迎えた後、60代以降は下降していく傾向にあります。収入は、事業規模以外にも学歴や業種なども金額に影響があります。
平均年収の年齢は、大体40代前半になっていることが多くなっているので、年金額を計算する平均的な月収は、「40~44歳」の階級を用いるとよいでしょう。現在では年功序列の賃金体系も崩れてきているので、よりシビアに見積もるのならば、「30~34歳」の階級で見積もってもいいかもしれません。
●年代別給与額・賞与等と年収(男女計)
※図表:「令和3年賃金構造基本統計調査」をもとに筆者作成(Eecelデータ「1-6-1-1」を参照)
さらに平均年収は、働く地域によっても異なります。大都市では年収が高い傾向にあり、その中でも首都圏の一都三県のうち東京都と神奈川県では全国平均より収入額が高くなっています。その年収の内容を東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県にしぼって分析してみました。
男女計の平均年収が489万円であるのに対して、平均額を上回っているのは、東京都の584万円と神奈川県の541万円です。東京都に近い埼玉県と千葉県は、平均年収額より若干低い金額であるのは予想外でした。また東京都を例にとると、男性の年収に対して女性は、約7割しかありません。男女計の平均値だけを見て将来設計を考えると、見込み違いが生じてしまいます。平均値というものさしは便利ですが、ライフプランを考えるにあたっては、「自分の場合どうなのか」という視点が必要です。
●一都三県の給与額・賞与等と年収
※図表:「令和3年賃金構造基本統計調査」をもとに筆者作成(Excelデータ「1-10-1-6」、「1-10-1-7」を参照)