若者の「投資のトラブル」を事例で解説。投資する上で注意したいこととは
今や投資は、お金を増やすのに欠かせないもの。このところ、家計や経済の不安から投資をスタートさせる人も増えています。しかし、「お金を増やしたい」という気持ちにつけこんだ悪徳商法も、残念ながら増えているようです。今回は、若者が引っかかっている投資のトラブルの事例をご紹介。失敗を防ぐために心がけるべきことを解説します。
若者の消費者トラブルが後を絶たない
日々の生活でトラブルが生じたときの相談窓口になるのが「国民生活センター」です。国民生活センターでは、集まった情報をもとに注意喚起を行なったり、問題の解決を図ったりしています。
2020年度、国民生活センターに寄せられた相談の総件数は93万9343件(※1)。 2008年度以降、毎年90万件前後で推移しているそうです。そのなかで、「18歳・19歳」「20〜24歳」の年度別相談件数も、おおむね同水準で推移しています。
●「18歳・19歳」「20〜24歳」の年度別相談件数(平均値)
国民生活センターの資料より
一見、数が少なく感じられるかもしれませんが、これは「18歳・19歳」「20〜24歳」それぞれの年齢の相談件数の「平均値」だからです。つまり、2020年度でいえば、「18歳・19歳」は2倍の9640件、「20〜24歳」は5倍の3万8705件の相談が寄せられていることがわかります。
2022年4月から、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられます。現状、18歳・19歳の「未成年者」が親の同意を得ずに行なった契約は、民法の「未成年者取消権」によって契約を取り消すことができます。しかし、2022年4月からは、18歳・19歳も「成年」ですので、この方法では契約が取り消せなくなります。この点は、国民生活センターも注意喚起(※2)しています。
※1:独立行政法人 国民生活センター「消費生活年報 2021」
※2:独立行政法人 国民生活センター「若者の消費者トラブル」
投資では実際にどんなトラブルがある?
消費者トラブルにはさまざまなものがあります。そのなかで、投資のトラブルにはどんなものがあるのでしょうか。代表的な事例を見てみましょう。なお、以下事例は国民生活センター・金融庁・財務省などが公表している事例を要約したものです。
●投資にまつわる消費者トラブル1:無登録業者とのバイナリーオプション取引
【事例】
・SNSで知り合った「バイナリーオプションで確実に儲ける方法を教える」という人に勧められてバイナリーオプションのサイトに登録。「10万円入金するとボーナスが10万円つく」と説明されため、10万円をクレジットカードで決済した。しかし、その後操作もわからず、出金もできなかった。
・「月々40万円から60万円の儲けがある」と誘われ、紹介されたサイトにクレジットカードで6万円支払った。しかし、その後連絡が取れなくなった。取引はしていないので「出金したい」とサイトに連絡したが「出金はできない」と回答があった。
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バイナリーオプションは、お金を支払った上で一定時間後の為替レートや株価指数が上がっているか下がっているかを2択で予想する取引。予想が当たると支払ったお金に加えて払い戻し(ペイアウト)が受け取れますが、外れると支払ったお金が没収されてしまいます。
バイナリーオプションは、投資のサービスとしては確かにあり、証券会社やFX会社などで扱っています。しかし、これらの事例で登録したサイトを運営しているのは、いずれも海外の無登録業者だったのです。たとえ海外の業者であっても、バイナリーオプションのような金融商品取引を行う場合には、「金融商品取引業」の登録が必要です。しかし、この業者に関してはそうした登録がなされていませんでした。ですから、そもそも違法な業者ですし、きちんとしたバイナリーオプションのサービスを提供している業者かどうかすら、怪しいでしょう。
また、バイナリーオプションは上がるか下がるかの2択の取引ですから、一見簡単そうですし、少額から取引できるので、リスクも少なく感じられます。しかし、実態はオプションという高度な仕組みを使って行う、リスクの高い取引。その簡単さから気軽に何度も取引をしてしまいがちですが、結果として大きく損する可能性もあります。
出典:国民生活センター「無登録業者とのバイナリーオプション取引は行わないで!」
●投資にまつわる消費者トラブル2:暗号資産(仮想通貨)のリスクをわきまえずに購入
【事例】
・SNSで知り合った人に誘われて参加したセミナーで「日本円を暗号資産に換えて海外事業者の専用口座に入金すると高い利息がつく」と説明されたため、40万円を送金。しかし出金することができなくなった。
・「海外の事業者に暗号資産で投資をするとAIが自動運用し、月々10 万円の配当がある。人に紹介するとさらにお金が入る」と説明を受け、ローンも組んで計150万円を投資。しかし、配当はまったく手に入らず、出金もできない。投資したお金は3万円ほどになった。
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暗号資産(仮想通貨)は、ネット上でやり取りされるお金のようなもの。「ビットコイン」といえば、聞いたことがあるでしょう。暗号資産は円やドルといった「法定通貨」とは違い紙幣や硬貨はなく、国も価値を保証していません。個人間で送金できるなど、メリットもあるのですが、今のところ実用的な面よりも投機的な面で売買されています。ですから、事例のように儲かると思って投資してしまうのですね。実際、国民生活センターのデータによると、近年10代・20代からの相談の割合が増加しているそうです。
一部の名のしれた暗号資産は、日本の取引所でも取引できます。それでも、価格の変動が激しい商品です。ましてや、その他の細かな暗号資産は、実態がよくわからないものがほとんどなのが現実。価格が急落することもありますし、事例に出てきた海外の事業者自体がそもそも架空の業者ということもありえるのです。
出典:国民生活センター「情報商材や暗号資産(仮想通貨)のトラブル」