学生時代の年金、追納しないとどうなる?しなくても年金はもらえるの?
例えば、20~60歳までの40年間、国民年金保険料をすべて納付した場合と、大学に進学し、20歳~22歳まで学生納付特例で2年間未納のまま追納せず、38年間だけ国民年金保険料を納めた場合で比較すると以下のようになります。
表:日本年金機構ホームページ資料より筆者作成
国民年金を2年間未納のままであれば、実際に支給される年金は95%。受給額の差は年間約4万円であり、一生涯にわたり影響することになります。
仮に老齢基礎年金を65~95歳まで30年受け取ったとすれば、4万円×30年間=120万円となり、大きな差ができることがわかります。
将来受け取る年金額を、少しでも増やすためにも、追納することをおすすめします。
追納はどんなタイミングですべきか
将来、満額の老齢基礎年金を受けるため、追納のタイミングでの注意点があります。
まず、保険料の追納は、過去10年分までできます。とはいえ、実際に追納するのが、3年以上経過すると、経過期間に応じて加算額が上乗せされてしまいます。そのため、基本的には2年以内に追納するようにしましょう。
追納する順序は、実際に学生納付特例で猶予された古い期間の保険料からとなります。
2021年度の追納分がどのくらい加算されるのか以下の表で確認してみましょう。
表:日本年金機構ホームページ資料より筆者作成
10年前の保険料(15,020円)で見てみると、約2%である330円の加算額が追加されることになります。なお、この加算額は国民年金保険の支払いが遅れたペナルティのようなものであり、割高な保険料を支払ったとしても、将来受け取る年金がその分多くなるわけではありません。なるべくなら、加算額のない2年以内に追納するようにしましょう。
社会保険料控除で税金が戻る場合もある
追納した国民年金保険料は、会社員が給与から天引きされる健康保険や厚生年金と同じく、社会保険料控除として扱います。
そうすることで、その年の課税所得から控除され、税額を安くすることができます。
対象になるのは、その年の1~12月までに追納した国民年金保険料が全てです。もし、2年分を1年でまとめて支払ったとすれば、2年分すべてが社会保険料控除に含まれます。
なお、追納は、本人だけでなく、ご家族(配偶者または両親いずれか)が代わって追納された場合でも、社会保険料控除に含めることができます。
実際に社会保険料控除を受けるには、年末調整や確定申告で行います。その際、国民年金保険料を支払ったことを証明する「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」の添付が必要です。このように、国民年金保険料の追納は税法上とても有利な面があります。
追納は1ヶ月単位でできるので、今お金がない人は計画的に追納
そのときどきの事情もあり、1年分まとめなかなか…という場合もあるでしょう。そんなときは、社会人の生活に慣れ、収支のバランスが把握できた段階で、毎月1ヵ月ずつ追納するなど、無理のない金額を納めると良いでしょう。追納したら、忘れず社会保険料控除を受けましょう。
追納期限が過ぎてしまったら
追納期間は10年以内なので、その期間をすぎると追納はできなくなります。しかし、その場合は60歳から65歳になるまでの間に国民年金に任意加入するという方法があります。そうすることで、追納と同じような効果を得ることができます。
そのためにも、今のうちから、国民年金保険料がうっかり未納になっていないかを「年金定期便」や「ねんきんネット」などできちんと確認しておきましょう。
「将来年金が受け取れなくなる」ことはまずないが、自助努力で準備は必要
公的年金は、現役世代から集めた年金保険料を、そのときの高齢者に対して支払うという「世代間扶養」の仕組みです。少子高齢化が急速に進む中、この仕組みに対して「将来的に年金制度は崩壊するのではないか」と心配する人も多くいます。
しかし、公的年金制度は、「物価スライド制」という、物価が上昇したら年金保険料と受け取る年金額がバランスを取る仕組みになっています。
また、老齢基礎年金の財源は、年金保険料を積み立てた「年金積立金」だけでなく、「国庫負担」という政府のお金でもまかなわれています。このような、手堅いシステムでできているため、「将来年金が受け取れなくなる」ことはまずないといえます。
しかし、年金の支給額が減額となったり、年金の受給開始が遅くなったりする可能性はあるかもしれません。
そんな場合を想定し、老後資金の準備には、iDeCo(個人型確定拠出年金)やつみたてNISAがおすすめです。なぜなら、これらの制度は、株や投資信託など金融商品の運用で得た利益に対してかかる20.315%の税金をゼロにできる制度だからです。
それぞれについて簡単に紹介します。
iDeCo(個人型確定拠出年金)について
iDeCoとは、日本国内に住む原則20歳以上60歳未満の人が対象となる、老後資金を貯める制度です。iDeCoの主な特徴は、3つの節税メリットです。1つ目は、掛金の全額が所得控除の対象となり、所得税や住民税が安くなります。2つ目は、運用益にかかる税金がゼロになります。3つ目は、受け取るお金が公的年金控除や退職所得控除の対象となること。注意点としては、60歳までは引き出しできないことです。
つみたてNISAについて
つみたてNISAは、日本国内に住む原則20歳以上の人が対象で、年間40万円(月額であれば約3万3,000円)の投資金額に対する運用益を20年間非課税にできます。また、つみたてNISAの対象に選ばれた商品は、長期の積立や分散投資に向いていて、手数料が安いなど金融庁の基準をクリアしています。そのため、初めて投資をしようとする人にとって取り組みやすいといえるでしょう。また、つみたてNISAは、預けたお金は自由に引き出しができます。
それぞれの制度の違いを理解し、自分にあったものからはじめてみるとよいでしょう。ですが、老後資金は、公的年金がベースとなります。まずは、追納で老齢基礎年金の満額受給を目指すのが先です。その上で、iDeCo、つみたてNISAなどの制度を活用しながら、じぶん年金を準備するようにしましょう。