我が子が損する行動をしないために。親子で学ぶ「行動ファイナンス」
何気なく目にした「ミレニアル世代のマネー学 #14」の記事。するとそこには、無駄遣いを減らすために知っておきたい知識が、具体例と共にわかりやすく書かれていました。
そこで筆者は、この記事を参考に、小学4年生の娘と共に「行動ファイナンス」について考えることに。今回は、その様子を詳しくご紹介します。
「ミレニアル世代のマネー学 #14」で学べること
「ミレニアル世代のマネー学 #14」の記事で取り上げられているのは「行動ファイナンス」。というもの。行動ファイナンスとは、経済学に心理学を結び付けた研究のことです。
もともと、経済学の観点では「人は合理的に行動するもの」と考えられています。しかし、実際にはそうとは限りません。そこで研究されているのが、「行動ファイナンス」。人間とは、常に合理的に行動するわけではなく、しばしば判断を誤ってしまうもの…。その前提に立って、経済を考える学問のことです。
記事内では
・何かを判断するときに物事を直感で考える「ヒューリスティック」
・「損をしたくない」という気持ちが合理的判断を誤らせてしまう「プロスペクト理論」
について、具体例も交えながらわかりやすく解説されています。しかも、記事に挙げられている具体例は、どれも筆者の身につまされるものばかり。筆者は、この記事を読んで、「行動ファイナンス」について知識を身に付けておくことで、「合理的な経済行動」を意識できるようになり、無駄遣いも減らせるような気がしました。
ちょうど時を同じくして、娘が誕生日に貰ったお祝いの使い道を考えていたので、これはいい機会、とばかりに親子で「損をしないための、行動ファイナンスに基づく勉強会」を開くことにしました。
我が子と考える「ヒューリスティック」
まずは、親子で「ヒューリスティック」について考えるにあたり、筆者は簡単に、2枚の絵を描きました。1枚は、行列ができているドーナツ屋さんの絵。もう1枚は、行列のできていないドーナツ屋さんの絵です。
この2枚を見せながら、筆者は娘にこう質問しました。「もし、ドーナツを買いに行くなら、どちらのお店で買う?」すると、娘は間髪入れずに「行列ができている方!」と回答。理由を聞いてみると…。
「だって、行列ができているということは人気があるってことだから、きっと美味しいんだろうなと思って」これこそが、行列ができている光景を見ただけで「美味しいに違いない」と判断してしまう、典型的なヒューリスティック!
確かに、ヒューリスティックには「物事を素早く判断できる」という利点もありますが、行動ファイナンスでは、「直感が合理的判断の妨げになってしまう」という、どちらかというとネガティブな意味合いで語られることが多いようです。
そこで筆者は、さらに娘にこう問いかけました。「でも、実際にどちらのお店のドーナツも食べていないよね?もし、行列のできるドーナツ屋さんには、あなたの大好きなチョコレートのドーナツは置いていなくて、苦手な味のものばっかりだったらどうする?」
すると娘は、しばし黙り込んでこう言いました。「行列ができているから絶対美味しい!と思っているから、すごくショックを受けると思う」。確かに娘の言う通り。「行列ができている=美味しいに違いない」という思い込みは、誤った判断を生むだけではありません。
期待値が大きいぶん、誤りに気付いたときの失望感も、より一層大きなものになるのではないでしょうか。そこで、娘と「このような失敗をしないためにどうすればいいのか」を考えました。
出た答えは以下の通り。
・見た目だけで判断せずに、しっかりと情報収集を行うこと
・周りの人に感想を聞くときは、いい意見だけでなく、悪い意見も聞くこと
人生において「1秒でも早く買い物をしなければならない」という瞬間は、さほど訪れません。買い物など、支出を伴う場面では「みんながやっているから」「友達がいいと言っていたから」などという安易な理由ではなく、自分でしっかりと情報収集をして、総合的に判断することが大切だね、と話し合った次第です。
「心の会計」について実体験をもとに考えてみた
前述した通り、当時娘は、誕生日のお祝いで貰ったお小遣いの使い道をあれこれ画策していました。おもちゃを買おうか、可愛らしい文房具を買おうか…。そこで筆者は、娘に次のような質問をしてみました。
「お誕生日に貰った1,000円で何買おうか考えているけれど…。お手伝いのアルバイトで貯めたお小遣いは『大切にしなきゃ』って貯金箱に入れているよね?もう1,000円くらい貯まったんじゃない?なんでそっちは大切にしているの?」
すると娘は、さも当然、という顔で答えました。「だって、貯金箱のお金は、私が頑張ってためたお金だから」娘の「頑張って貯めたお金は大切にしなきゃ」という考えは、損をしたくないという人間の心理が合理的な判断を鈍らせる「プロスペクト理論」の中の「心の会計」に該当します。
心の会計とは、お金の出どころや保管場所、使い道などによって、「大切にするお金」「使ってもいいお金」と、勝手に扱い方を変えてしまうこと。私たちが何気なく口にする「宝くじが当たったらパ~っと使ってしまおう!」。これも心の会計の一例です。
意図せず手に入ったお金や、楽して手に入れることができたお金、いわゆる「あぶく銭」に関しては、どうしても財布のひもが緩んでしまいがち。そういえば、昔から、「悪銭身に付かず」と言われていますよね。
これは、「賭け事などで手に入ったお金は、とかく無駄なことにどんどん使ってしまうので、貯めることなどできない」という意味。結局、あぶく銭は自分自身のお金であるという感覚がないため、ついつい簡単に使ってしまうということなのでしょう。
逆に、苦労して手に入れたお金に対しては、苦労した分だけ出費に痛みや罪悪感を伴います。娘は、お手伝いで手に入れたお金は、「頑張って貯めているのだから大切にしなければいけない」という認識でいるのです。
このように、同じ金額でも、入手方法が違うだけで価値の感覚が大きく異なる…つまり、お金に対して合理的判断ができなくなってしまうのが、「心の会計」の怖いところ。そこで、娘にこう話してみました
「お祝いで貰った1,000円と、頑張って貯めた1,000円。足すと2,000円になるよね。でも、お祝いのお金をあっという間に使っちゃったら…2,000円貯めるのに、また何日も頑張ってお手伝いしなきゃいけなくなるよ?そう考えると、お祝いの1,000円も『大切なお金』になるんじゃないかな?」
すると、それもそうだな、と納得した様子の娘。「すぐに使っていいお金と、大切にしなきゃいけないお金、という分け方はおかしいね」と理解してくれたようです。
私たちも、想定外でお金が手に入る機会があると、ついつい浮かれてしまい、お高いお店で食事をしたり、友人や知人に景気よくおごったりしてしまいがち。でも、思わぬ収入があったときは、一度口座に入金するなどして、ひと呼吸置いてみましょう。 冷静になった頭で使い道を考えれば、苦労して得たお金と同様、扱い方をじっくり吟味できるようになり、マネーケアの習慣がまた一つ身につくのではないでしょうか。
大切なのは「合理的判断」ができるかどうか
「損をしたくない」という考えが、時に合理的判断の妨げになってしまう、ということがよくわかった「ミレニアル世代のマネー学 #14」の記事。今回は、身近な例を挙げて娘に記事内容をアウトプットすることで、さらに理解を深められた気がします。これからも、機会があれば娘と「マネー学」を勉強していきたいと思います。