2022年4月、年金手帳廃止へ。今後の手続きはどう変わる?

2022年4月、年金手帳廃止へ。今後の手続きはどう変わる?
マネーケア

2020年6月に「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」(以下、「年金制度機能強化法」※1) が公布されました。これにより、2022年4月以降、年金手帳が廃止されることになります。
長年にわたり大切なものと認識されてきたはずの年金手帳。一体なぜ廃止になるのか、そもそも何のために持っていたのか。
今回はいままで年金手帳が果たしてきた役割と、廃止になった後どうなるのか説明します。
※1:https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/000636611.pdf

2020年6月に年金制度改正法が成立

今後ますます寿命が延びて、少子高齢化が加速すると、年金制度を支える現役世代の人口が急激に減少すると言われています。そのため若い人は、自分が高齢者になったときに、本当に年金がもらえるかどうか不安に思うでしょう。

こういった将来の不安を解消するために政府は、高齢者や女性にもできるだけ働いてもらって、より多くの人がこれまでよりも長い期間にわたって働きやすい形で働けるような社会になることを目指しています。
こうした社会の変化を年金制度に反映して、長くなるであろうリタイア後に経済的に充実してもらいたいとして2020年6月に年金制度改正法が成立※2しました。

今回の改正では、主に下記の4つの見直しが行われることになりました。

①被用者保険(厚生年金保険・健康保険)の適用拡大
②在職中の年金受給の在り方の見直し(在職老齢年金制度の見直し、在職定時改定の導入)
③年金の受給開始時期の選択肢の拡大
④確定拠出年金の加入可能要件の見直し

このような年金制度の見直しが行われる一環として、年金手帳の廃止も行われることになったのです。
※2:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00006.html

年金手帳ってなに? なぜ廃止されることになったのか

年金手帳は1974年11月以降、交付されて※3きました。20歳になると国民年金の被保険者となるので、20歳以上の人は下記のいずれかの年金手帳を持っているはずです。

年金手帳

年金手帳
(出典:日本年金機構ホームページ※4より)

年金手帳は、発行された年によって表紙の色が異なります。
例えば、1960年10月~1974年10月に国民年金の被保険者資格の取得手続をおこなった人には、茶色の手帳(写真左)が発行されていました。
また、1974年11月から1996年12月までに被保険者資格の取得手続きをおこなった人には、オレンジ色の手帳(写真中央)が発行されていました。
そして、1997年1月以降は青色の手帳(写真右)が発行されています。現在の発行者は、「日本年金機構」ですが、1997年1月から2009年12月までに発行されたものは、発行者が「社会保険庁」となっています。

このように、長年にわたり交付されていた年金手帳ですが、主に2つの役割がありました。

①保険料納付の領収の証明
②基礎年金番号の本人通知

しかし、最近では被保険者情報が既にシステムで管理されていることと、個人番号(以下、マイナンバー)の導入によって、上記のような役割を果たすものが手帳形式である必要がなくなったことが、年金手帳廃止となる背景と考えられます。また、年金手帳発行に関する事務コストは、 年間2.7億円(2016年度実績)※5ともいわれており、この分のコスト削減効果も期待できるのです。

※3:https://www.nenkin.go.jp/n/www/sia/top/kaikaku/kiroku/tokubetsubin/tetyou_hensen.html
※4:https://www.nenkin.go.jp/service/seidozenpan/20131107.html
※5:https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/000636611.pdf

どんなときに年金手帳は使われていたのか。

普段の生活ではあまり手に取ることのない年金手帳ですが、皆さんはどこに保管していますか?
厚生年金に加入している人は、会社に預かってもらっているという人もいるのではないでしょうか。
なぜ会社が保管している場合があるのかというと、会社が行う社会保険の手続きに年金手帳に記された基礎年金番号が必要だったためです。

基礎年金番号は年金手帳(青色)の見開き1ページ目に記載されています。
基礎年金番号
出典:厚生労働省年金局「その他の制度改正事項及び業務運営改善事項について」より一部筆者加工

以前は住所や氏名が変わった際にも手続きに基礎年金番号※6が必要で、その都度、会社に年金手帳を提示する必要がありました。もし年金手帳を紛失した場合は、再発行の手続きは会社でやることになっていたため、入社時より会社で従業員の年金手帳を保管し、退職する際に返却としている会社が多くあったようで、預けなくてはいけないという決まりがあったわけではありません。
※6:https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/hihokensha2/20150320.html

では、現在年金手帳を持っている人は、今後どのように取り扱えばよいのでしょうか。年金手帳を提出する必要がある場合の注意事項を、一つずつ確認してみましょう。

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小野 みゆき

中高年女性のお金のホームドクター 社会保険労務士・CFP・1級DCプランナー・年金マスター・1級ファイナンシャル・プランニング技能士 企業で労務、健康・厚生...

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