海外資産への課税強化、ターゲットは富裕層?!

税金

申告漏れで追徴金1億円という過去の事例も

2014年に国外財産調書の提出の制度が始まって以降初めての告発が、2019年7月にありました。京都の会社経営者が2億円以上の所得隠しを行い、8,300万円を脱税、さらにそのうちの7,300万円が香港の自身名義の口座にあるにもかかわらず、国外財産調書を提出していなかった疑いがあるのです。そのことによる重加算税を含む追徴税額は、1億1,000万円以上だったということです。

今回の場合は脱税によるペナルティを含むため、高額の追徴課税となりましたが、国外財産調書を期限内に、正当な理由なく提出しなかった場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処される可能性があります。
※日本経済新聞「国外財産調書を未提出疑い 7300万円、全国初告発」

課税強化でどう変わる

2020年の税制改正では国外財産調書制度等の見直しが行われ、加算税が強化されます。
相続時に提出済みの国外財産調書に相続人より相続税の修正申告があった場合、調書が提出されていれば現行では加算税の加重はありませんでした。
しかし、改正後は原則的に加算税の加重対象になります。

国外財産調書は提出しているが関連資料の提示を求められても提示しなかった場合、現行では5%の軽減措置があり5%の加重でしたが改正後はその軽減措置がなくなり10%になります。
また、そもそも国外財産調書を提出していなかったり、記載に不備があったりした場合は、現行では15%ですが、関連資料の提示を求められても提示しなかった場合は20%の加重となります。

つまり、故意に国外財産調査書を提出しなかったり、虚偽の申告をしたり、関連書類の提出をしなかったりすると、より重い加算税が課せられることとなります。

関連資料というのは、海外資産の取引記録のことで、現行は海外財産の情報を提出すればよかったのですが、改正後は取引に関わる記録の保管もする必要があります。預金の利子や不動産の賃料、株などの有価証券の配当や売却益なども含まれます。
記録の保管は義務ではありませんが、税務調査なので提出を求められたときに提出しなければならず、提出できないときは重いペナルティを課せられることになるため、保管は必須になることでしょう。

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まとめ

国税庁は富裕層の申告漏れの所得や資産について監視を強化しています。資産の流出と租税回避を防ぐために対策が取られていきます。正しく申告せずにいると、重い加算税を支払うことにもなります。初めから正しい申告をしておきましょう。

黒須 かおり

ファイナンシャルプランナー CFP® 女性を中心に、一生涯を見守るFPとしてmoney&キャリアのコンサルティングを行う。幸せになるためのお金の知識...

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