行政手続のIT化で、各種手続がワンストップで可能に
行政手続がインターネットでできるようになる、「デジタルファースト法案」が、2019年3月15日に閣議決定されました。このデジタルファースト法案によって、社会全体のデジタル化が一気に進みそうです。
私たちの生活に今後どのような影響があるのか見ていきましょう。
行政手続のIT化をすすめるデジタルファースト法案
社会全体のデジタル化の鍵をにぎるマイナンバーカード。身分証明書として利用できるほか、行政手続のオンライン申請や、e-TAX(インターネットを利用して税金の手続きができるサービス)等、様々なサービスに利用できます。
しかし、マイナンバーカードの普及は遅れています。
2015年10月からマイナンバーカード交付申請がはじまりましたが、2018年12月時点の交付率は、全国の人口に対して12.2%(総務省)にとどまっているのです。
デジタルファースト法案が成立すれば、マイナンバーを知らせる紙製の通知カードは廃止されますが、それによりマイナンバーカードが普及し、行政手続がさらに便利に、国民や企業の負担が減ることに期待できそうです。
デジタルファースト法案は、マイナンバー法・公的個人認証法・住民基本台帳法を一括改正した上で、次の(1)~(3)の3原則が大きな柱となります。
(1)デジタルファースト
役所での手続きは、窓口を何カ所も回ることが少なくありませんが、そのような不便が解消されます。
わざわざ役所まで行かなくても、インターネットで手続きが完了できたら便利になりますね。
(2)ワンスオンリー
たとえば引越しや結婚などで住所や入籍後の姓が変わるとき、一度変更の届け出をしてしまえば、その情報が共有されるようになります。
ワンスオンリーの実現で、何度も新しい住所などを記入する手間や時間が省略できます。
(3)コネクテッド・ワンストップ
「ワンスオンリー」で一度変更の手続きをした情報が共有されることで、関連する複数の手続きが不要になります。
住所や姓が変わると、電気やガス・水道の手続きをはじめ、運転免許証やパスポート、社会保険関係の手続きなどなど、それぞれの手続きをそれぞれの機関でする必要がありますが、1カ所でできるようになります。
住民票の手続で電気・ガスなども契約変更できる!?
まずは2019年度から引越しに伴う手続きが一元化されます。
引越しの際に、ネットで住民票の移転手続き(デジタルファースト)をすることで、住所などの情報が転用(ワンスオンリー)され、水道や電気・ガスの変更手続きが不要(コネクテッド・ワンストップ)になります。
引越しをするだけでも大変な作業が多くある中、同時に様々な契約変更の手続きを複数で行なっていたところを、この3原則により効率化とともに負担軽減など大きな効果が期待できます。
また、要介護・要支援認定の申請もネットで完結できるほか、2020年度には法人設立の負担も軽くなります。
さらに、海外に住む日本人もマイナンバーカードで納税や年金受給の手続きができたり、婚姻届の提出、パスポートの発給申請や本籍地ではない自治体で戸籍情報の照会ができたりするようにもなります。
今回の法案の条文には、「民間手続きのオンライン化を可能とする法制上の措置を講じる」と明記されているため、将来的には民間のサービスへの効率化も期待できそうですね。
IT化が進んだ社会で気をつけたいこと
デジタルファースト法案をはじめ、さまざまなところでIT化が進んでいます。
金融(ファイナンス:Finance)と技術(テクノロジー:Technology)を組み合わせたフィンテック:Fin Techの身近な例として、スマートフォンを利用した送金を利用している人もいるのではないでしょうか。
また、10%への消費増税に伴って、キャッシュレス決済によるポイント還元がされると言われています。これをきっかけに、今後キャッシュレス化が進むと思われます。
これらの技術革新によって便利になった一方で、個人情報の漏えいや詐欺事件にも注意を払う必要が出てきました。
被害にあわないためには、個人情報やクレジットカードの情報など、金銭に関わる情報をインターネット上で入力する際は慎重に行ないましょう。
そのサイトが本物であることを確かめるには、その企業をインターネット検索して、同じサイトが出てくるか試してみるのもひとつの方法です。
また、「フィッシング対策協議会」から随時報告されているニュースから、ネット詐欺の手口を知っておくこともリスクの軽減につながります。
まとめ
今までは、時間と労力を費やして当たり前のように行っていた手続きが、デジタルファースト法案の成立後には、これらの手間が大きく省けるようになります。
その一方で、「自己の情報は自ら守る」こともITリテラシーを高める上で重要なことになってくるでしょう。