国の税金はどこから徴収されて、何に使われている?防衛費「1兆円増」はどこから補う

国の税金はどこから徴収されて、何に使われている?防衛費「1兆円増」はどこから補う
マネーケア

2022年に起きたロシアのウクライナ侵攻は、年を越して長期化しています。この侵攻によって、世界的に食料やエネルギー資源が高騰し、私たちの生活にも大きな影響を与えています。今さらながら、経済の安定や発展は、平和な社会があって成り立つものだと痛感させられました。そこで日本においてもウクライナの問題は、明日の日本かもしれないとの危機感から防衛力の強化が国の予算に反映されることになりました。

今回は、私たちの限られた収入の中から納めている税金が、安全保障政策の転換によってどのように使われていくのか税金の使い道に注目してみましょう。

国の歳出と歳入はどうなっている?

私たちが安心で豊かな生活を送るために、公共の施設の利用や公共サービスに税金が使われています。国の財政は、4月から翌年3月までの期間で計算し、収入のことを歳入、支出のことを歳出といいます。国の会計には、一般会計と特別会計の2種類があります。このうち一般会計は、国の基本的な活動を行うもので、毎年、歳入と歳出の予定が計画されます。

毎年12月に財務省の報告をもとに内閣で予算案が作られ、その後国会で議決を経て予算が成立することになります。

この一般会計の予算総額は、毎年膨張し続けており、11年連続で増額の更新をしています。2023年度の一般会計の総額は114兆3812億円となり、増加幅もリーマンショック後の2009年の5.4兆円を上回り、6.7兆円増と過去最大になりました。

主な歳出の内訳

・社会保障費    36兆8889億円(+1.7%増)
・国債費      25兆2503億円(+3.7%増)
・地方交付税交付金 16兆3992億円(+3.3%増)
・公共事業費    6兆600億円(+0.04%増)
・防衛費      6兆8219億円(+26.3%増)
・防衛力強化資金  3兆3806億円(新設)

※讀賣新聞「来年度予算案を閣議決定、防衛費は過去最大6兆8219億円…GDP比1・19%」から引用

それでは、歳出の内訳を見ていきましょう。

一番多い支出は、歳出の3分の1を占める社会保障費です。
薬価(病院の薬の公定価格)の引き下げにより圧縮したものの高齢化の自然増などで6154億円増えています。前年度より1.7%増え、36兆8889億円を計上しています。
子育て支援では、出産育児一時金を42万円から50万円へ増額し、新設の「出産・子育て応援交付金」を実施し、相談支援と給付の両面からサポートします。2023年4月に発足する「こども家庭庁」の費用も含んでいます。

次に多いのが国の借金の返済となる国債費です。25兆2503億円となっており、3.7%の増加になっています。しかし今後、借金返済には問題が待ち受けています。
それは金利が上昇すれば、これ以上の利払いの負担増加も懸念されることです。

財務省の推計によると、2025年時点で金利が想定より1%上がると元利払いにかかる国債費は3.7兆円上振れし、金利が2%上がると7.5兆円増えると予想されています。2023年度の公共事業費が約6兆円なので、金利の上昇によっては公共事業費総額を超える負担増になる可能性があります。

地方交付税交付金は、一定水準の行政サービスの提供に必要な費用を地方税の収入で賄えない自治体に配るものです。デジタル田園都市国家構想に予算を1000億円投じて、自治体業務のデジタル化の推進、デジタルを活用した観光、農林水産業の支援を目指します。

歳出で注目すべきは防衛費で、2022年当初予算とくらべて26.3%増の6兆8219億円です。公共事業費の6兆600億円を超えています。さらに防衛力強化資金が新設され、3兆3806億円となっています。防衛力の強化といっても、まだ始まったばかりです。

政府は今後、防衛費と関係費の総額を2027年度にはGDP(国内総生産)比2%に引き上げる方針で、単純比較で安全保障の支出は世界第3位まで上昇する見込みです。

主な歳入の内訳

・税収       69兆4400億円
・新規国債発行額  35兆6230億円

出典:讀賣新聞

歳入では、税収を過去最大の69兆4400億円と見込んでいます。

消費税と法人税が大幅に伸びると見積り、税収は消費税を全体の3割強の23兆3840億円、所得税を21兆480億円、法人税を14兆6020億円、相続税を2兆7760億円としています。コロナ禍からの経済再開を見込んで個人消費が持ち直し、企業は円安から輸出企業や海外展開する企業の業績が改善するだろうと予想したためです。しかし、税収の予想は、前提とし名目GDP成長率が前年比2.1%と楽観的な見通しであり、もしも価格高騰のため消費を手控えたり、世界の経済が減速したりしてくれば、税収が予想を下回る場合もあります。

税収のほかには歳入を新たな国債の発行に35兆6230億円も頼っています。このうち赤字国債が29兆650億円、建設国債が6兆5580億円になっており、国債の依存度は3割を超えています。

国債の発行が30兆円を上回るのは、リーマンショック後の2009年度から15年連続となっています。欧米ではコロナの影響で一時期公債の依存度が高まったものの借金の依存度は1~2割前後まで下がっています。
また、他の主要国はコロナ禍やインフレ対策など財政の立て直しに動いています。それにくらべると、日本の国家予算は、財政再建からはさらに遠くなったといえます。

今まで、低金利の恩恵を受け日本の財政は歳入を国債に頼っていますが、そろそろ方向転換が必要になってきました。2022年12月に日銀は長期金利の変動率を0.25%程度から0.5%程度に広げたため、長期金利が急上昇しました。今後は、国債の調達コストが財政運営に響いてくることになり、歳入の確保といえども規律が求められます。

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池田 幸代

株式会社ブリエ 代表取締役 証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不...

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