国の税金はどこから徴収されて、何に使われている?防衛費「1兆円増」はどこから補う

国の税金はどこから徴収されて、何に使われている?防衛費「1兆円増」はどこから補う
マネーケア

防衛費は今後年間1兆円強の財源確保

戦争を回避するための防衛力強化とはいえ、現状の自衛隊の抑止力では十分ではないのは明白です。しかし、防衛費の増額が避けて通れない問題だとしても、財源の確保ができなければ、他の政策経費を圧迫することになります。そこで防衛費の増額は、「国家安全保障戦略」などの3文書の決定とともに2023年度の与党税制改正大綱にも盛り込まれました。

岸田総理は、世界的な安全保障環境が悪化する中、防衛力は将来にわたって維持強化していく必要があると強調し、2027年度には防衛費の財源の1兆円強を法人税中心に、所得税、たばこ税の増税で賄うことに決定しました。増税のタイミングは、2024年以降適切な時期とし、税目ごとの税収の規模は示されていません。

法人税

法人税は、本体の税率は変えずに一定比率を特例として上乗せする付加税として、4~4.5%増とします。税額500万円以下の中小企業は対象外です。
対象となる法人は全体の6%弱だといわれていますが、税引後の収益が減るため、企業経営には厳しい課題が突き付けられた格好です。また法人税収は景気に左右されやすく、安定財源とはいえない側面があります。

所得税

所得税は、東日本大震災の復興特別所得税の枠組みを使い、今の復興特別所得税を1%引き下げ、税率1%の新しい付加税と合計2.1%に保ち課税します。
本来復興所得税は課税期間が2037年までの25年間ですが、課税期間を延長することになり、延長期間は改めて検討するとしています。

たばこ税

たばこ税は、段階的に1本あたり3円相当の増税とします。

税制大綱における防衛費増額の確保は、反対派に譲歩して時期や規模の決めないままどうにか間に合わせたという感じが否めません。

さらに、今回の2023年度予算案では、予算の規模の議論が先行してしまい、財源の確保や具体的な政策の議論は後回しになっています。
巨額の財源を必要とする防衛費、GX(グリーントラストフォーメーション:脱炭素化に向けた取り組み)、子ども関連予算は「歳出三兄弟」と呼ばれていました。防衛費にいたっては、やっと大枠が決まったところです。特に子ども関連予算については、防衛費の予算に関心が高まったため、財源確保の状況は予算案の段階では着手できていません。このような状況では、出産・子育て応援交付金も増税で補うという話が浮上してもおかしくありません。

今後も税金は増える一方なのか

2023年度の一般会計の予算案を契機に増税への圧力が懸念されます。
超高齢社会の日本では、今後の医療費や介護費の増大が見込まれ、現役世代が高齢者を支えるしくみにほころびが見られます。その証拠に、国民の所得に占める税負担や社会保障の負担を合計した「国民負担率」は増え続けています。国民負担率は、公的負担の重さを国際的に比較する指標の一つです。

国民負担率は、令和3年度で48%。財政赤字を加えた潜在的な国民負担率は60.7%です。推計ですが、令和4年度の国民負担率は46.5%、潜在的な国民負担率は56.9%となる見通しで、高水準で推移することが予想されます。(参考:財務省
少子高齢化の流れをくい止めることはむずかしく、対策を講じても時間がかかります。若い働き手が減り国の成長が鈍れば、税収が低迷するのは明らかです。そうなれば高齢者といえども応分の負担は避けられず、保険料の負担増や増税などの財源確保の問題に取り組まざるを得ません。

今回の国の予算案では足りない歳入を国債でまかない、社会保障費や国債費(借金の返済)の膨張がその他の政策経費を圧迫する状況になっています。企業でいえば、利益を生まない経費にお金がかかり、成長が見込めるところに投資ができる資金が少ない状態と同じです。

財務省の資料によれば、日本と諸外国の支出と税収の規模をGDPで比較すると、社会保障の支出は世界で11位なのに対し、社会保障以外の支出は31位、租税収入は29位となっています。2023年度に税収が過去最高になるといっても、他の先進国にくらべると低いものになっています。

岸田総理が日本の経済再生が最優先課題だというのなら、すぐには効果が期待できなくても、研究開発や教育といった未来に向けた成長を促す支出をし、次の投資の財源となるような好循環を作り出す必要があります。ムダな経費や支出は抑えつつ、成長の芽を育てるところには、税金を使わなくてはなりません。先ごろ持続可能性な社会実現ということが叫ばれています。
増税というと、国民一人ひとりに痛みを伴いますが、大きく税収が増えないのなら、世代間の公平性を重視して増税という選択肢を選ぶ時期に来ているといえるでしょう。

池田 幸代

株式会社ブリエ 代表取締役 証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不...

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