若い人ほど早期リタイア希望! なのに退職準備は…行動の伴わない日本人の実態

若い人ほど早期リタイア希望! なのに退職準備は…行動の伴わない日本人の実態
マネーケア

平均寿命も伸び、現役で働く期間も長くなっていきそうです。しかし一方では早くリタイアしたいと思っている人も多いようです。フィデリティ投信が行った、勤労者を対象にした退職準備に関するアンケートによると、若い人ほどその傾向は強いようです。
早期リタイアするためには老後の資金を準備しておく必要がありますが、果たしてみなさん準備できているのでしょうか。アンケートをもとに考えてみたいと思います。

若い人ほど早期リタイアしたい人が多い

2019年9月にフィデリティが米国、カナダ、英国、ドイツ、香港、日本の各地域2,400人を対象に退職準備に関するアンケート調査を行いました。それによると日本人は60歳以上の世代は長く働き、退職年齢に遠い若い世代の方は早期のリタイアを希望していました。

現在、一般的な企業では65歳まで雇用延長で働くことができ、さらには希望すれば70歳まで働くことができるようになります。しかし、20歳から29歳の若者層では63歳と現在の退職年齢よりも早くリタイアしたい人が多いようです。退職年齢に近づいている人たちは、現状を踏まえて長く働くことを希望していているのに対し、退職まで時間のある若い世代の人たちは将来に対して楽観的な希望を持っているのかもしれません。

年齢と年収別の退職希望年齢(中央値)


資料:フィデリティ投信「フィデリティ退職準備スコア」より引用

日本人の退職準備スコアは要注意レベル、若い人は警戒レベル

老後2000万円問題をきっかけに老後資金について真剣に考える人が増えたようですが、実際にどのくらい必要なのかは、その人の生活水準や老後にどんな生活を送りたいかによって異なります。実際に2000万円準備なければならない人もいるでしょうし、もっと少なくていい人もいるかもしれません。反対に、2000万円以上準備しなければならない人もいるかもしれません。つまり、いくら必要なのかは、人それぞれの生活の水準と老後の年金によって違うということです。
とはいえ、目安になる金額はあらかじめ計算して確認しておきたいところです。

今回フィデリティ投信が行った、退職準備に関するアンケートの「退職準備スコア」に沿って考えてみたいと思います。

退職準備スコアは、アンケートを元に、退職までに準備できる金額を推計し、老後に必要になる金額で割ってポイントで表したものです。ポイントは0〜150の間で算出し、それを4段階に分類しています。

日本人全体の退職準備スコアは75ポイントでした。生活にかかる必要な資金がこのままでは準備ができず、老後の生活を見直さなければならない要注意レベルです。

日本のフィデリティ退職準備スコアの分布状況

フィデリティ退職準備スコア


資料:フィデリティ投信「フィデリティ退職準備スコア」より引用

さらに年齢別の退職準備スコアを見てみても、95ポイントを超える年齢層はなく、60歳未満の年齢層では全て要注意、または警戒レベルです。

日本における各セグメント別のフィデリティ退職準備スコアとその分布


資料:フィデリティ投信「フィデリティ退職準備スコア」より引用

特に危険なのは20代の若い人で、なんと63ポイントと全世代で最も低く警戒レベルが高くなっています。さらに、スコアの分布を見ると、20代では警戒レベルが53%、要注意レベルが22%。4人のうち3人は明らかに準備が足りません。
30代でも安心ではありません。全体のスコアでは69%とギリギリ要注意水準ではあるものの、依然として警戒レベルが43%、要注意レベルが20%ですから、全体のおよそ3分の2は準備が足りないのです。
その他の年齢層でも、今よりもさらに自助努力が必要な人が多くいます。

日本の常識は世界では非常識

では、日本人はお金を増やすために行動をしているのかというと、そうではないようです。
日本銀行調査統計局が2020年8月に発表した「資金循環の日米欧比較」によると、日本人は資産の53.3%、半分以上を現金や預金で保有しています。それに対して、株式・投資信託・債券(金融商品)の合計は15.2%で預金の3分の1にも満たないのです。

一方アメリカの保有資産の内訳をみると、現金や預金は12.9%しか保有しておらず、日本の約4分の1程度しかありません。一方、金融商品の割合は、50.8%で日本の3.5倍近くあるのです。

家計の金融資産構成


資料:日本銀行調査統計局「資金循環の日米欧比較」より引用(日本と米国のみ)

日本よりも金融資産の割合が多いアメリカの退職準備スコアを見てみると全世代で83ポイントと日本と比べて高いことがわかります。日本では警戒レベルである若い世代でも82ポイントとあと一歩の水準。日本の現役世代との違いがよくわかります。

米国の年代別のフィデリティ退職準備スコア


資料:フィデリティ投信「フィデリティ退職準備スコア」より引用

これは、どのような方法で準備をしているかの違いが大きく影響していると想像できます。
つまり、日本の預貯金で増やそうという「常識」は、世界から見れば「非常識」なものなのです。

1990年代のように高金利であれば預金で老後の資金を準備することもできましたが、現在の超低金利ではそれは夢のまた夢の話です。
少しでも増やそうと思ったら、預金以外の金融資産に目を向けるしかないのです。

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黒須 かおり

ファイナンシャルプランナー CFP® 女性を中心に、一生涯を見守るFPとしてmoney&キャリアのコンサルティングを行う。幸せになるためのお金の知識...

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