確定拠出年金の加入年齢引き上げ、どう変わるの?

年金・社会保険

厚生労働省は、じぶん年金作りに最適な「確定拠出年金」について、加入年齢を引き上げる改正案を自民党の会合に提示しました。
では、実際に引き上げられるとどのような影響があるのか、現状と比較して解説します。

加入年齢を引き上げるワケ

企業は希望者全員を65歳まで雇用することが「高年齢者雇用安定法」により義務付けられました。
60歳を超えても働き続ける環境が整いつつあり、人生100年時代を見据えた働き方を選ぶ人が増えています。

ただ、現行の制度では確定拠出年金の加入者が掛金を拠出(つみたて)できるのは59歳まで。
仕事を取り巻く環境が変化するなか、加入年齢の変更を期待する声があがっていました。
そこで厚生労働省は、現状を考慮した改正法案の成立を目指しています。

これまでの制度との比較

厚生労働省が提示した変更点は、大きく2つ。
加入年齢と、受取開始年齢の引き上げです。

確定拠出年金には、自営業者など個人で掛け金を拠出する「個人型(iDeCo)」と、企業が退職金制度として掛け金を拠出する「企業型」の2種類があります。
いずれも積立てできる加入可能年齢は原則59歳までですが、改正案ではiDeCoは64歳、企業型は69歳までの期間延長を提示
60歳から70歳までの間で選ぶ受給開始時期も、70歳超まで拡大することを目指しています。

話題になった2,000万円不足問題もあり、50歳を過ぎてからiDeCoへの加入を考える人もいるでしょう。
ただ、現状の制度では拠出できる期間が短くなる点がネック。
また積立金を受け取るには、最初の掛け金積立から10年以上経過していることが必要です。
そのため、60歳になった時点で10年に満たない場合は、受け取り開始が61歳以降になる点に注意が必要です。

iDeCoの受け取り開始年齢

60歳から受給開始までの期間は、「運用指図者」として掛け金を拠出せずに運用方法の指示だけすることになります。

確定拠出年金は、掛け金を積み立てる時、運用している時、年金をもらう時に税金優遇がある制度。
もし、加入年齢が引き上げられれば、税制メリットを受けられる金額が大きくなることも期待できます。

以上のことから、筆者はより一層の自助努力で老後に備えることが望まれているのだと解釈しています。

加入はどうすればいいの?

確定拠出年金の加入年齢引き上げの話題をきっかけに、加入をしたいという人も増えるかもしれません。具体的な手続きはどのようにすればいいのでしょうか。
勤務先に企業型確定拠出年金がある場合には、会社の加入資格ルールに沿って手続きをふみます。

一方、個人型確定拠出年金であるiDeCoは、個人が自分の意志で加入する制度です。
自分で金融機関を選択し、つみたて口座を開設するところから始まります。
iDeCoに申し込みをする際に用意する書類として、マイナンバー、本人確認書類、「個人年金加入申出書」の他、「事業所登録申請書兼第2号加入者に係る事業主の証明書」も提出しますので、勤務先に提出して、記入や捺印をもらう必要があります。

企業型、iDeCoいずれの場合も、自分で運用商品を選択し配分を決めることが必須です。
金融機関を選ぶ際は、口座管理手数料、商品の品揃えや手数料、サービスなどの観点からじっくり比較検討することをオススメします。

まとめ

長生きがリスクとならないためには、働きながらお金の寿命を延ばす工夫が必要です。政府と個人の両輪で、社会的課題の解決に取り組む姿勢が求められています。

辻本 由香

CFP、おふたりさまの暮らしとお金プランナー 企業の会計や大手金融機関での営業など、お金に関する仕事に約30年従事。暮らしにまつわるお金について知識を得るこ...

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