すしざんまい社長が初セリでマグロ3億円! これって税金対策?広告宣伝費?
平成最後の2019年のお正月は、豊洲市場のマグロ初セリの話題で盛り上がりました。過去の最高値は2013年の1億5540万円。その倍以上の買値で購入して、果たして儲けになるのか疑問に思いますね。
さて、こうした高値で競り落とす、すしざんまい木村社長の意図はどこにあるのでしょうか。
豊洲の初セリでマグロが3億円!
2018年10月に開場した豊洲市場で、初めてのマグロの初セリが2019年1月5日に行われました。何と青森県大間産の本マグロが史上最高値の3億3,360万円で競り落とされて、テレビなどでも報道されました。
いくらご祝儀相場といっても、278kgのマグロが3億3,360万円だと1kgあたり120万円になります。1貫あたりに換算すると2万3,000円~2万5,000円(1貫 約20g)になり、大トロになれば3万円超えに相当するという声までささやかれました。
しかし、お客様に提供する値段は、大トロ398円、中トロ298円、赤身158円の通常価格(1貫あたり、税別)だというから驚きです。
この豊洲で落札したマグロで作った寿司は、売上高から売上原価を差し引くと完全に赤字となります。
3億で買っても儲かるカラクリは税金対策?!
一般的な商売では、商品を仕入れて販売するのが本業です。
会社が儲かっているかどうかは、本業でどれだけ稼いでいるかという「営業利益」を見ます。
この営業利益は、次の式で求められます。
営業利益 = 売上高 - 売上原価 - 販売費・一般管理費
今回の初セリで落札したマグロを経費上どう計上するのかは、見解が分かれます。売上原価の仕入れが高くついたとみることもできるし、販売費の広告宣伝費ととらえることもできるでしょう。
こうした経費という部分が大きくなれば、売上高から差し引くものが大きくなり、当然営業利益は少なくなります。
そうすれば、利益が圧縮されるので、税金(法人税)の納税額が少なくてすみます。
儲かる仕組みは「安く買って、高く売る」だけじゃない
大きな費用を投じて初セリでマグロを落とす理由は、いくつか考えられます。
1つ目は、大きな宣伝効果が期待されることです。
テレビ等にCMを流すためには、まずCMの製作費がかかり、有名なタレントを起用すれば、1億円近い契約金が必要になることも。たった15秒のCMを1回流すだけでも、数百万円かかるといいます。
しかし、マグロを競り落とすことで報道機関が話題として取り上げてくれれば、無料で「すしざんまい」の名前が全国に広告されたことと同じになります。
就職情報サイトのdoda(デューダ)によれば、すしざんまいの売上高は2018年9月現在で285億円です。外食関連サービス業の売上に対する広告宣伝費の平均的な比率は5%です。これに当てはめれば、14億2,500万円が年間使われる広告宣伝費になります。それなら高く仕入れたマグロであっても納得がいくのではないでしょうか。
2つ目は、ブランディングが考えられます。ブランディングとは、名称や商品、キャッチフレーズなどを消費者に知ってもらい、価値を高めていく活動のことです。
すしざんまいはマグロが自慢の会社です。そして木村清社長は、お客様に一番いいマグロを食べてもらいたいという、こだわりがあるそうです。
特に初物は日本人にとって縁起物なので、たくさんの人に楽しんでほしいから初セリのマグロでも通常価格で提供するとのこと。もし、別の業者が競り落としていたら、海外のセレブが集う高級すし店に流れて、庶民が口にするチャンスはなかったかもしれません。
確かに豊洲市場で落としたマグロだけをみれば、採算があう価格でお客様に提供されてはいません。
しかし、すしざんまいの店舗にマグロを1貫だけ食べにきたわけではなく、他のすしネタも注文しているはずです。また、マグロ3億円の落札のニュースを耳にしなければ、長蛇の列に並んでまでお寿司をわざわざ食べにくることもなかったかもしれません。
さらに、お店の名前をおぼえてもらって、リピーターになれば、集客や売上アップにつながります。
まとめ
売上げをアップさせるために、どのように資金を使うのかは、経営者の手腕が問われるところです。結果的に利益につながればいいのです。
豊洲市場の初セリの報道で、「マグロ寿司のすしざんまい」と日本中に知れ渡りました。全国展開したいすしざんまいにとっては、大きな宣伝効果を得られたことでしょう。
みんながあっと驚くようなやり方で、「すしざんまい」に足を運んでもらい、最終的に売上が伸びれば、マグロ3億円落札は成功ではないでしょうか。