4章第2話:「2年越しの再会」/恋する3センチヒール
玲奈と離れている間に資産形成を学んでいった俊明。
2年の間に二人はどう変わったのか。
前回 4章第1話:「2018年5月」
4章第2話「2年越しの再会」
表参道。A2出口。
朝から、やっと時計の針が19時に近づいた。
約2年振りの俊明くん。
出口に向かう階段を一段ずつ上がっていく。
私の胸の高鳴りと、階段を上がっていく速度は比例していた。
「玲奈さん」
階段を上がりきったところのすぐ横に、俊明くんは立っていた。
右手を挙げて、微笑んだ俊明くん。
着ているスーツも、鞄も、靴も、この2年間ですっかり大人の余裕を醸し出している。
「俊明くん、なんか変わったね」
前は、ヘラヘラしていたのに、全体的に凛々しくなった。
「2年間で、酸いも甘いも経験した結果です。玲奈さんも…」
まじまじと、足元から頭のてっぺんまで私を見た俊明くんは、顎に手をあてて黙った。
「えっ。なになに?」
「お店、予約してあるので行きましょうか」
「えー…」
歩きだした俊明くんを不満そうな顔でみると、俊明くんは真面目な顔をして答えた。
「秘密を作りたくなる相手って、多分特別です」
「どういう意味?」
「嫌いか、好きか、の二択じゃないですか?」
こちらを伺うようにして、俊明くんは悪戯っぽい笑みを浮かべた。
私は、この場に適した言葉を思いつくことが出来ず、頬を少し膨らませて、俊明くんを見ることしか出来なかった。
「東京に戻ってきて、バタバタしちゃってさ。なかなか連絡出来なくて、ごめんね」
実は、俊明くんに一番に連絡をしたかった。
けれども、自分から連絡する勇気が出せなかった。
【玲奈さん、東京にいますよね?会いましょう】
俊明くんからきたメッセージに、心躍らされた私がいた事を俊明くんは知らない。
「寂しかったです。連絡、待っていましたよ?」
少し大袈裟に、俊明くんは悲しそうな顔をした。
本心では無いと理解しつつも、胸がきゅんと動く。
「冗談も上手くなったなぁ」
ふふっと、俊明くんは笑っただけだった。
「なんで僕が、玲奈さんに連絡を入れたか分かりますか?」
「なんでだ?」
「なんででしょう?」
「んー。ポートフォリオの話し?」
「まぁ、良いでしょう!正解です!」
楽しそうに俊明くんは笑った。
春風が、フワッと俊明くんの香水の香りを漂わせた。