第5話:肉バル/恋する3センチヒール
会う約束を取り付けるもなにも準備が出来ていない俊明。
休みを利用し、玲奈からの宿題をしていくと・・・
前回 第4話:「玲奈さんからの宿題」
第話「肉バル」
「ねぇ、宿題について覚えてる?」
最近流行っていると、教えてもらった肉バル。
月曜日なのに店内は満席で、予約もカウンター席しかとれなかった。
スペアリブを頬張っていた俊明君は、口元をナプキンで拭いてニヤッと笑った。
「やっと、この話題がきましたね」
「え?待ってたの?」
「そりゃあ、玲奈さんのイケメンの先輩の話しよりも、お金の運用の方が興味あります」
へへっと、笑った俊明くん。横顔でも、八重歯がのぞいた。
宿題を出してちゃんと覚えている辺りが、さすが俊明くんだなと思う。
「で、どんなことを勉強してきたの?」
俊明くんの方に身体を向けて、首を傾げた。
「先に言っておきますが、僕、今回玲奈さんからの宿題で初めてお金の運用について調べて、初めて資産運用っていう言葉についてシックリきた位のレベルなんです」
「うんうん、なるほど」
「だから、そんなに高度な意見は、まだ求めないで下さいね」
右手で、オッケーサインを作ると、俊明くんは一口赤ワインを飲んだ。
「資産運用の中で、気になったことあった?」
「気になったことというか、お金を分けて運用していくことによってリスク分散をして、将来に向けて資産を蓄えていくっていう考え方が新鮮でした」
「ポートフォリオを組んでいく、っていう考え方ね」
「そうです。正直な話し、タンス預金でも充分じゃないかと、今までは思っていました。けれど、今回勉強してみて、インフレが進んでいくとお金の価値が目減りしちゃうっていう事を知って、反省しました。リスクを避けている気になっていたけれど、逆に落とし穴に向かって進んでいくところだったなと」
「学んだのね」
大きく頷いた俊明くん。ただ、そのまま少し考えるような顔をして黙ってしまった。