2章第1話:「行きつけのコーヒーショップ」/恋する3センチヒール

恋する3センチヒール

これは、俊明と1年ぶりに再会した翌朝のお話・・・
俊明と再会する恋3ヒール第1章はこちらから

第1話「行きつけのコーヒーショップ」

春の風が、スカートの裾を揺らした。
青空が広がる朝。
なんだか、気分が明るく、足取りも軽い。
昨日会ったスーツ姿の俊明くんの姿を思い出しては、緩む頬。
アルコールなんて摂取していないのに、楽しい気持ちで世界が明るく見えた。

―俊明くんって、あんなにイケメンだったっけ?スーツマジック?

イヤホンから流れる恋の歌が、更に私の気分を高まらせる。
浮かれた足取りのまま、アイスコーヒーを買いにコーヒーショップに立ち寄った。
出勤前の社会人らしき人物で、構成されている列に並ぶ。

「玲奈?」

自分の名を呼んだ太い声に、片方のイヤホンを耳から外して振り向く。

「えっ。大介さん?」

ササっと、両耳のイヤホンを外して鞄にしまった。
学生時代、インカレのテニスサークルでお世話になった先輩が目の前に立っていた。
チェック柄のスーツが、細身で長身というスタイルの良さを際立たせている。

右手に焦げ茶色の革の鞄を持ち、左手には、先ほど購入したであろうホットドリンク。
当時、「王子」と呼ばれていた大介さん。
その風貌に、更に磨きがかかっているように感じた。

「よっ。久しぶりじゃん。まさか、こんなところで会うとはな」

「三年ぶりとか…、ですよね?」

大介さんは、考えるように左斜め上を見て口をキュッと結んだ。
私にテニスの指導をする時、よくこの顔をしていた。
大学一年生の時に、大学四年生の先輩。
テニスラケットを片手に、リストバンドで汗を拭う姿。
憧れていたことを思い出した。

「そうだなぁ。追いコン以来、飲み会とかも行けてないからな」

「私もですよ」

列が進んだので、私は一歩前へと進んだ。

「職場近いの?」

「そうです!青山です」

「おっ!奇遇。俺も、今月から青山なんだよね」

「また偶然お会いする事が、ありそうですね」

大介さんは、腕時計を確認した。
私の列が進んだので、また一歩進む。
歩く時に、腕時計を確認した。

8時31分。

「今日は会えて嬉しかったよ。せっかくだから、また日を改めて会おう。連絡する」

「はい!また」

軽くパーマのかかっている大介さんの後ろ姿を、ぼんやりと眺めた。
オーダーの順番が来て、私は大介さんと同じようにホットドリンクを購入して、会社に向かった。

2章第2話:「シャンパンと彼女」

みかみ

パグ犬愛好家。 趣味は、投資。夢は、世界を虜にする小説家。

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