2章第2話:「シャンパンと彼女」/恋する3センチヒール
偶然に出会った大介と会う約束をした玲奈。
思わぬ話を聞いて玲奈は・・・
前回 2章第1話:「行きつけのコーヒーショップ」
2章第2話「シャンパンと彼女」
「お待たせしちゃって、すみません」
元々20時に待ち合わせていた。
時計を見ると、19時57分。
「いや、俺がたまたま早く着いただけだから。玲奈、遅刻してないじゃん」
「けれど、ギリギリになってしまったので」
グレーのジャケットに、軽くウェーブがかった髪。
唇が、ぷっくらと濡れている。
暗めの店内を照らすオレンジ色の間接照明が、彼女の美しさを際立たせているように感じた。
「ごめんね、カウンター席しかとれなくて」
「いえいえ、そんな。こんな素敵なところを予約して下さって、恐縮です」
先週、たまたまカフェで遭遇した彼女は、後輩から素敵な女性へと変貌を遂げていた。
今の彼女に似合う店に連れていこうと思い、正統派英国風のラウンジバーを予約した。
「大介さんは、いつもこんなに素敵なところでお酒を愉しんでいらっしゃるんですか?」
「まぁ、稼いだお金の使い道って、こういうお店で美味しいお酒とつまみを頂くことかなって思ってさ」
「良いですね、そういうの。やっぱり商社勤めの方とかって、余裕があるイメージです!」
「別にお給料とかが格別に良いっていう訳ではないと思うんだけど、最近株の調子が良いから、個人的には好景気って感じかな」
「株ですか!私も最近お金の運用を始めたので、色々と教えてください」
まさか今日株の話しが出来るとは、思っていなかった。
意外だなと思いつつ、今の彼女の口から出た一言としては違和感がなかった。
「一杯目、シャンパンでいいかな?」
「良いですね!大賛成です」
ニコッと笑った彼女の顔は、テニスサークルに所属していた時の、あどけない笑顔と重なった。
そこに、昔は感じなかった大人の余裕をふわっと纏っている。
「それにしても、垢抜けたね」
「えっ?そうですか?」
細めのグラスが似合う女になったなぁと、不思議な心もちで彼女の顔をみた。
キョトンとしている彼女の瞳に、今の自分はどう映っているのだろうか。
自分らしくないなと思いつつ、少し気になった。