第4話：玲奈さんからの宿題／恋する3センチヒール
昔と変わらない俊明の姿に、ある宿題を課した玲奈。
俊明はその宿題に取り組むがなかなか難しくて・・・
前回 第3話：「セロリの浅漬け」
第４話：「玲奈さんからの宿題」
「お金の運用なんて、勉強しちゃえば僕の方が玲奈さんより詳しくなっちゃいますよ？」
一週間前に自分で言った言葉が、脳内で再生された。
元バイト仲間で新春会をやって以来、約一年振りに会った玲奈さん。
学生時代に、憧れていた先輩。
スーツ姿で会えば、少しは男として意識してくれるかと思ったけれど、そんな風には感じられなかった。
『バイト先の後輩』から、自分がいつ格上げされるのか…。道のりは遠そうだ。
－やらかしたなぁ。
明日会う約束をしているのにも関わらず、お金の運用について何一つ勉強していない。
また玲奈さんと会えるなら、正直理由は何でも良かった。
クズだなぁと、自分でも思う。
カフェで働いていた時も、玲奈さんがトレーナー担当だったから頑張れた。
－少しだけでも、勉強してから会わんとあかんな。
インターネットの検索窓に、『お金の運用方法』と打ち込んだ。
今まで画面に登場したことがなかった『資産運用』という言葉が並ぶ自分の携帯電話に、場違いな画面を表示してしまった気持ちになった。
－貯金すらロクに出来ていないしなぁ。先月貰った初任給は、いくら位余るんやろか…。
苦い気持ちで、日頃の金遣いの荒さを思い出しつつ、画面をスクロールしていく。
玲奈さんに、認められる男になるために。
－目的に応じて、お金を分けて貯めていく…。
明日の夜、玲奈さんに会ったらどの話しをしようかなと頭の片隅で考えながら、資産運用に関する情報に目を通した。
いくつか運用に関する記事を読むと、自分の中でしっくりときた。
－資産運用って、貯金が無くても始められるんか。なるほど。
玲奈さんが、宿題にした理由が分かった気がした。
