相続手続きが済んでいない不動産への課税開始!今後はどうなる?

税金

誰が所有しているのか分からない「所有者不明土地」が増えています。法務省の調べによれば、50年以上相続登記がされていないものや、中には90年以上放置されたものまであるという結果が出ています。その面積は、2016年時点で九州の面積を上回る410万ヘクタールと推計されているから驚きです。こうした問題を受けて、税制改正が行われることになりました。

相続手続きが済んでいない不動産とは

土地や建物といった不動産は、第三者が見てすぐに誰のものか分かりません。ですから、「登記」という制度によって、その不動産の物理的な情報(表題部)と権利関係を公示して、誰でもわかるようにしています。

その登記のうち建物や土地の番地といった基本情報の表題部は、登記する義務があります。しかし、所有者や抵当権者などの権利関係については任意になっており、相続によって不動産を取得した場合には登記に期限がありません。ですから、そのまま登記をしないケースがあるのです。

また相続登記をしない背景には、登記費用がかかることや、管理するのに固定資産税の負担があることがあげられます。特に利用価値の低い土地や管理しにくい不動産は、相続登記が行われずに放置されたままになるケースがあります。
最初は誰が所有者か分かっていた不動産でも、何世代も経ていくうちに相続人も増え、実際の所有者が不明の不動産になってしまうのです。

税制改正の内容とは

こうした相続手続きが済んでいない不動産が増えていくのを食い止めるために、国では2020年までに必要な制度改正を目指すとしています。これを受けて、2020年度の税制改正大綱では、固定資産税に対して改正が行われることになりました。

【改正点1】現に所有している者の申告

登記簿上の所有者が死亡している場合に、条例を制定してその土地や家屋を所有している者に、住所、氏名などの固定資産税の賦課徴収に必要な事項を申告させることができることになりました。罰則も設けることができます。
これは、2020年4月1日以後の条例施行があった場合から適用になります。

【改正点2】使用者を所有者とみなして課税

市町村が調査をしても固定資産の所有者が1人も判明しない場合には、使用者を所有者とみなして固定資産税台帳に登録して固定資産税を課せられるようになりました。この改正は2021年度以後の年度分の固定資産税に適用されます。

こうした改正がなされたのは、賃貸をしていた者がそのまま住み続けていたり、相続放棄をしても親族の関係者が居住し続けたりしても、所有者が不明であるために課税できないといった場合がありました。
固定資産税には、土地や家屋を所有し、利用することで行政サービスの利益を受けているから納税するという考え方があります。この改正によって、市町村では現在のタダ乗り状態が是正され、税収確保に一歩近づくことができます。

今後の納税はどうすればいいのか?

死亡届を出すと、今後の税金の納付書の送付先として、代表相続人の住所や氏名を役所の税務課などに提出する場合があります。所有者の相続登記がされなくても、課税を行うためです。

現に市町村の税務職員には、実地調査や納税義務者への質問、帳簿書類等の検査が地方税法で定められています。今後の税制改正後は、申告に関して罰則規定を設けることも盛り込まれていますし、登記簿上の所有者でないからという理由で、納税の義務を逃れることができなくなりそうです。
参考:法務省「民法及び不動産登記法の改正について」「不動産登記簿における相続登記未了⼟地調査について」、相続税の教科書「令和2年度の相続税・贈与税の税制改正大綱のポイント【2020年度】」

まとめ

現在のところ2020年の税制改正だけではなく、民法や不動産登記の手続きを含めて、相続登記を義務化する準備が進められています。親族間で争っているなどの相続登記をしない理由がある場合を除き、相続登記が未了の場合には申請を早めに済ませておきましょう。

池田 幸代

株式会社ブリエ 代表取締役 証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不...

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