年末調整までに今からできる節税対策 「住宅借入金等特別控除」でいくら税金戻る?
年末調整で手続きができる控除の一つに「住宅借入金等特別控除」があります。通称、「住宅ローン控除」や「住宅ローン減税」などとも呼ばれています。
今回は「住宅借入金特別控除」についてと気になる消費税率10%へ引き上げ後の支援策について解説します。
そもそも「住宅借入金等特別控除」ってなに?
住宅借入金等特別控除とは、住宅ローンを利用してマーホームの取得又は増改築等した場合、一定の期間、住宅ローンの年末残高の一定割合に相当する金額が、所得税や住民税から控除される制度です。別名、「住宅ローン控除」とも呼ばれます。住宅借入金等特別控除の適用条件は次の通りです。
適用条件
・新築又は取得の日から6ヶ月以内に居住し、かつ適用を受ける各年の12月31日までに引き続いて住んでいること
・控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下であること
・床面積が50㎡以上であり、床面積の2分の1以上の部分が自分の居住用であること
・住宅ローンの返済期間が10年以上であること
・居住の用に供した年とその前後の2年ずつの5年間に長期譲渡所得の課税の特例などの適用を受けてないこと
・中古住宅の場合、建築された日から取得の日までの期間が20年(マンションなどの耐火建築物の建物の場合には25年)以下、耐震基準に適合する建物である、生計を一にする親族などからの取得ではないこと、贈与による取得でないこと
住宅借入金等控除でいくら税金戻る?
控除される限度額は居住した年月により異なります。居住の用に供した時が平成26年4月1日から令和元年9月30日の場合は、控除期間は10年間、控除率は年末ローン残高の1%、年間控除額は最大で40万円であり、10年間で最大控除額は400万円になります。
※住宅の取得等が特定取得以外の場合は20万円
参照:国税庁「住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1213.htm
例えば住宅ローン3,500万円を借入れて一般住宅を購入し、毎年元本を100万円ずつ返済した場合、10年間でいくら税金が戻るでしょうか。
1年目の年末ローン残高3,400万円だと、3,400万円×1%=34万円が控除額となります。
2年目、3年目と10年目まで計算すると10年間の合計控除額は295万円になります。
この住宅借入金等控除額は、納めた所得税から控除されるものです。したがって、その年に納めた所得税が24万円だとしたら、住宅借入金等控除額が34万円だったとしても所得税から戻るのは24万円となります。
所得税から控除しきれなかった金額については、住民税から控除されます。控除額は以下のいずれか小さい額です。
・所得税の住宅ローン控除可能額のうち、所得税で控除しきれなかった額
・所得税の課税所得金額等の額に7%乗じて得た額(限度額136,500円)※
※平成26年4月から平成31年6月までに入居した場合
参照:「所沢市」住民税での住宅ローン控除額の計算https://www.city.tokorozawa.saitama.jp/kurashi/zeikin/shiminzei/kojinshiminzei/shinkoku/zyuusyusinnkoku.html
消費税増税でどう変わる?
2019年10月より消費税率が10%へ引き上げられました。それに伴い、消費税増税の負担が軽減される措置があります。
消費税率10%が適用される新築・中古住宅の取得、リフォームで、2020年12月末までに入居した人については、住宅ローン控除の控除期間が3年延長され、現行の10年から13年になります。
参照:国土交通省「消費税率引上げに伴う住宅取得に係る対応について」https://www.mlit.go.jp/common/001284823.pdf
※1 「住宅取得等対価の額」は、補助金及び住宅取得等資金の贈与の額を控除しないこととした金額をいいます。
※2 住宅の取得等が特定取得以外の場合は20万円
参照:国税庁「住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1213.htm
控除額
適用年の11~13年目までの各年の控除限度額は、以下のいずれか小さい額
・住宅借入金等の年末残高(4,000万円※を限度)×1%
・建物購入価格(4,000万円※を限度)×2/3%(建物購入価格に2%を掛け、さらに3(年)で割る)
※長期優良住宅や低炭素住宅の場合:借入金年末残高の上限:5,000万円、建物購入価格の上限:5,000万円
不動産は、土地の取得には消費税がかかりませんが、建物価格にはかかります。
消費税10%が課税された住宅購入について、住宅ローン控除の控除期間が3年延長されることで、消費税増税により負担増となる建物価格の2%分が軽減されるため、消費税増税後でも影響は限定的と考えられます。
ただし、住宅ローン控除についての影響だけを考慮するのであれば消費税が10%になってからでも軽減措置がありますが、消費税8%の時と消費税率10%の時では建物価格や住宅ローン金利に変動がないとは限りません。住宅購入の決定には、不動産の市場価値や住宅ローン金利の変動なども含めて検討する必要があります。
初年度は確定申告が必要
住宅借入金等特別控除の適用を受けるための手続きは初年度と2年目以降とでは異なります。
初年度は会社員の人でも個人で納税地の所轄税務署に確定申告書を提出する必要があります。確定申告には、契約書のコピー、住民票の写し、源泉徴収票などの書類が必要になりますので、住宅購入に関する書類はまとめて保管しておくと確定申告書を作成する際にスムーズです。
2年目以降については、勤務先の年末調整で手続きが可能です。
金融機関から送付される「借入金の年末残高証明書」と、確定申告後に税務署から送付される「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書」・「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」を勤務先に提出します。
まとめ
住宅借入金等特別控除の適用を10年間受けるまでは繰上げ返済をしない方がいいのではと考えている人も少なくありません。しかしながら、繰上げ返済は金額が大きいほど、時期が早いほど効果が高くなります。住宅ローンは総合的に考えて返済計画をたてましょう。