海外転勤になったら源泉徴収はどうなるの?

税金

日本で働いている会社員は、所得税の支払いは給与天引き=源泉徴収になっているので手間を感じることはないでしょう。
では、年の途中で海外勤務になったら源泉徴収はどうなるのでしょう。今回は、海外勤務になった場合の税金の話をお伝えします。

海外転勤の所得税は居住者・非居住者かで変わる

海外転勤になった時、日本の所得税がかかるかどうかは、居住者か非居住者かで変わります。居住者とは、日本に住所があってくらしている人という意味で、海外転勤といっても1年未満に帰国の予定がある人は居住者です。
居住者の場合は、日本の所得税が引き続き課税されます。

海外転勤が1年以上に及ぶ場合には、転勤前の市区町村で住民票の転出届を出し、非居住者となります。
海外で受け取る、海外法人からの収入には、日本の所得税はかからないため、給与からの源泉徴収はありません。
そのため、転勤前には年末調整を行い、日本での所得税を精算しておくことになります。

転勤先での税金は、その地域の税法などに従うことになります。
たとえばアメリカへ1年以上の転勤をするならアメリカの居住者になり、アメリカの所得税がかかります。基本的に所得税の源泉徴収はせず、個人で確定申告をします。
手間はかかりますが、自己責任で申告できるアメリカらしい方法ですね。

1年以上の海外転勤になる場合に、可能な限り節税するには?

毎月の給与から源泉徴収されている所得税は、給与金額から計算された概算の金額です。そこで、年末になり給与などで受け取った総額が確定するタイミングで所得税を改めて計算し、払い過ぎていたら払い戻され、不足があれば追加で支払うことになります。これが年末調整です。
1年以上の海外転勤になる場合には、この年末調整を転勤前に行います。

年末調整では、所得控除できるものがあれば申請することで所得税を安くできます。ただし、海外転勤になる人は、日本国内での状況や、支払ったものに限ります。
そのため、海外に転勤した後に支払っても、その分は所得控除の対象になりません。同じ金額を支払うのであれば、転勤前に払っておくことで損をしないですみますね。

結婚、仕送り

転勤前に結婚をしたり、親などへの仕送りをしたりと、扶養家族が増えた場合には扶養控除の対象になるかどうか、確認しましょう。
扶養控除の対象になるかどうかは、次の2点で判断されます。

(1)生計を一にしていたかどうか及び親族関係にあったかどうか・・・出国の時の現況
(2)合計所得金額の判定・・・出国の時の現況により見積もったその年の1月1日から12月31日までの合計所得金額

生命保険、医療保険

生命保険や医療保険は、生命保険料控除の申請を考慮に入れて支払い方法を決めるとよいでしょう。控除の対象になるのは、転勤前に払った保険料なので、年払いや半年払いを上手に利用するといいですね。
ただし、月払いを年払いや半年払いに変更するのは、すぐにできないこともあります。海外転勤が決まったら、早めに保険会社に問い合わせるようにしましょう。

iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)

節税しながらおトクに老後資金を準備できる制度、iDeCoに加入している人も増えてきました。iDeCoは公的年金に上乗せできる私的年金の位置付けのため、加入は日本の居住者が対象です。
海外転勤によって非居住者になった場合には、掛け金の拠出はできなくなり、運用指図のみをすることになります。

iDeCoの拠出金も、所得控除は海外転勤前に払った分が対象です。生命保険、医療保険の保険料と同様に、月払いから年払いなどに変更することで控除できる金額を増やせる場合があります。
生命保険料控除には上限額がありますが、iDeCoの掛け金には控除の上限はありません。

まとめ

いざ海外転勤になると、しなければならないことがたくさんあり、つい自分のことは後回しになってしまいがちです。
しかし、海外転勤になった後、現地で「日本にいる間にやっておけばよかった」、と後悔しないよう、早めの準備で損をしないようにしておきましょう。

タケイ 啓子

ファイナンシャルプランナー(AFP)。 36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務...

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