配偶者控除廃止でわたしたちの納める税金はどうなる?

税金

私が子どものころ、母親が「家計を助けるためにお母さんはパートに行くね。でも、あんまりたくさん働くと税金がかかっちゃうのよ。」と言っていました。当時は何のことか分かりませんでしたが、私の父親がサラリーマンだったこともあり、母親は年収103万円以下に抑えていたそうです。

私が学生になってからも、「アルバイトで働くのは良いけど、年間の給料が103万以上にならないように注意してね。」と親に口酸っぱく言われたことを思い出します。読者の皆様でも、同じような経験をされた方は多いのではないでしょうか。

これは、「配偶者控除」と呼ばれる制度を利用していたのです。いま、この制度が改革のタイミングを迎えています。

そもそも配偶者控除とは

「配偶者控除」とは、配偶者(もちろん奥様とは限りません)の年収が一定の枠内で収まると、もう一方の配偶者の所得税が減税する(控除される)制度になります。
配偶者控除が導入されたのは1961(昭和36)年です。商店主などの個人事業主は奥様の給与相当額を自身の所得から控除できた一方、いわゆるサラリーマンなどの給与所得者には同様の制度がなく、不公平の解消として配偶者控除制度が導入されました。実際にはサラリーマンの仕事を配偶者が手伝っていることは少なく、代わりに導入されたのが「年収要件」です。

なぜ配偶者控除の廃止が議論されている?

配偶者控除は、制度ができて55年。約半世紀が経過しました。その間、各家庭の働き方に強い影響を与えるなど、生活に深く浸透してきました。ただその一方で、日本がこれから人口減少時代を迎え、どうにかして「労働力を確保」しなければいけないという社会の課題にぶつかることになりました。家計の味方であったはずの配偶者控除が、「年収の上限」を必要以上に意識させていた制度といわれるようになったのです。
女性の社会進出に対する意識は半世紀前から大きく変わり、1997年以降は共働き家庭が専業主婦世帯数を上回る(※)など、年々共働き、いわゆるダブルインカムの家計が増え続けています。それにともない、配偶者控除が女性の就業意欲を削ぐ原因となっているという指摘が生まれ、今回の廃止議論に発展しました。
(※)厚生労働省労働力調査より

これからどうなるのか

配偶者控除の廃止は政府の方針であり、実際に法律改正となるには国会の議決が必要となります。また、配偶者控除廃止議論への賛成、反対は立場によって色々な意見が出ています。
既に社会で活躍される共働きの女性や独身女性からは、配偶者控除の廃止に対して歓迎の声があがっていますが、専業主婦家庭からは税負担が増えると反対する声もあります。
そのため、代替案として、共働きの夫婦に対しては、あたらしく所得控除を適用する「夫婦控除」の導入が検討されているようです。

配偶者控除の廃止を巡る世論

これまで共働きで、年収103万円以下で仕事をしてきた方の意見は、二手に分かれているようです。これで年収上限に気兼ねなく働けるという歓迎の立場と、これまで通り働くと所得控除の対象外となるので働く時間を抑えるという考え方です。
そして配偶者控除廃止に強く反対しているのは専業主婦家庭です。これは、新設が検討されている夫婦控除では、現在の配偶者控除よりも控除額が減り、単純に専業主婦家庭の負担増が予想されるという理由からです。
配偶者控除の廃止議論に関しては、主に「気兼ねなく働けるので歓迎」「働く時間を抑えなくてはならないから賛成しにくい」「専業主婦には負担増なので反対」という3つの立場から議論が起こっているといえます。

現実には、「誰もが納得して、誰もが恩恵を受ける」制度を作ることは困難です。法律は、最近の社会情勢を分析し、共働き家庭と専業主婦家庭を比較し、今後絶対数が多くなっていくのはどちらかということも考慮して決まっていくと考えられます。現政府では、女性活躍と称して女性の社会進出を推進していることもあり、配偶者控除は見直しに向かっているといえるでしょう。

配偶者控除の見直しは、各家庭の立ち位置によっては納める税金の状況も変わります。配偶者控除の見直しにより、夫婦控除が導入されるのか、配偶者控除とは全く別の、例えば住宅ローン減税が導入されるなど、によっても結果的に家計から節税できる金額は変わってきます。

まとめ

配偶者控除が廃止となった場合には、今まで配偶者控除を利用していた家庭は、納める税金が増えることになります。反対に現在配偶者控除を利用できなかった家庭が新たな制度で控除対象となると、納める税金は減ることになります。大切なのは配偶者控除のみを考え過ぎるのではなく、自分の働き方を含めた家計の全体像を見て、それぞれの家庭にとってベストな選択をすることなのです。
まずはこの廃止議論がどのようにまとまるのか、注視していきましょう。

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監修:杉浦 詔子 (スギウラ ノリコ)
(ファイナンシャルプランナー・カウンセラー)
森公認会計士事務所 公認会計士・税理士
「働く人たちの夢をかたちにする」会社員とそのご家族等へのキャリアプラン(生活)とライフプラン(家計)の相談と講義、執筆を行っています。
女性のキャリアと家族や恋愛等コミュニケーションに関する相談、FP等資格取得支援にも力を入れています。

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