年金14兆円の赤字! 赤字の理由やこれからの年金がどうなるのか社労士が徹底解説
国民年金と厚生年金の積立金の運用が、約14兆円の赤字だったと、2019年2月に発表されました。
14兆円という大きな金額の赤字と聞くと、年金制度自体が大丈夫なのかと不安になってしまいますよね。でも決してそうではありません。
今回は、14兆円の赤字の中身を解説した上で、自分でできる老後の備えについても考えます。
14兆円の赤字の中身は?
「14兆円の赤字」という報道で、押さえておかなければいけない重要なことが3点あります。
- 2018年10~12月の3カ月間だけで見た数字である
- 年金保険料収支の黒字部分を積み立てて、資産運用している残高のことであり、時価(もし今資産を売却したらの額)で計算した数字である
- 保険料収支だけで考えると黒字である
2018年9月末に比べると、12月末の国内外債券の利回り、国内外株式の指数などともに下がりました。そのことによって、年金積立金の時価総額が14兆円の赤字となったのです。
しかし、年金積立金の運用を始めた2001年度当初からみると、2.73%のプラスになっています。損益はあくまでも持っている資産を売却などして、現金に換えたときに確定するものです。今後の債権利回りと株式指数などの上昇があれば黒字に転じますので、期待したいところです。
もうひとつ、保険料内での収支は全体として黒字だということも重要なことです。つまり受け取った保険料のほうが払った年金総額よりも多いことも、きちんと理解しておきたいことです。
厚生年金・国民年金の収支決算(2013年度〜2017年度)
厚生年金
国民年金
※厚生労働省年金局HPの各年度資料より筆者作成
※計数については端数整理のため合計に一部不一致あり
これからの年金制度はどうなるか
公的年金は「賦課方式」といって、基本的に現役世代が支払う保険料から高齢者の年金が支払われています。国民年金については税金も投入されています。なので、高齢者が増え現役世代が減って、受給バランスが大きく崩れてしまうことが心配されています。
しかし年金は、老後の暮らしを支える大切な収入源。年金制度のバランスが崩れてしまうことは避けなければいけません。
受給バランスを維持する方法は、現役世代を増やす、受給開始年齢を遅らせる、またはそのふたつを併用する方法が考えられます。
2019年現在、年金受給開始年齢は65歳を基準とし、遅くても70歳までには受給し始めることとしていますが、個人の希望でその70歳をさらに遅らせることができるように検討されています。これはあくまでも選択肢を増やすということです。
自分でできる老後資金のつくり方
現役時代と同じ暮らしをしたいと望むのであれば、公的年金の上乗せとなる「自分年金」を準備しておく必要があります。
老後資金を準備する上で重要なのは、「早く始めて毎月少しずつ積み立てていく」ことと、「途中でお金を使えない制度を利用する」ことです。
会社員などで退職一時金制度とそれに準ずる制度(確定給付企業年金や企業型確定拠出年金)があれば、財形年金や個人年金を選択肢に入れましょう。
自営業など公的年金以外に老後資金の制度に加入していない場合は、iDeCo(個人型確定拠出年金)や小規模企業共済が老後資金準備に適した方法といえます。
まとめ
大きな額の赤字という言葉だけ一人歩きしていますが、家計に置き換えて考えてみましょう。
「年間の収支は過去4年間黒字です。今まで貯めてきたお金の資産運用だけで見ると、直前3カ月間は時価では赤字になりました。でも、保有資産なので赤字が確定したわけではありません。17年前から比べると我が家の金融資産は3%近くプラスとなっています。」ということです。
公的年金は、老後収入の基本であることに間違いはありません。報道の見出しに惑わされることなく、個人として保険料の支払い漏れを防ぎつつ、さらに自身でできる老後資金の積み立てを少しでも早くから始めておくべきなのです。