金融庁は何をしているところなの?意外と身近な役割とは
ニュースなどでも耳にする機会の多い「金融庁」ですが、お金に関する仕事をしているのだろう、というイメージはなんとなくあるものの、何をしているところかよく知らない、という人も多いのではないでしょうか。
しかし、実は私たちの大切なお金や暮らしに直接関係する仕事をしているのが金融庁なのです。金融庁が、具体的にどのような業務に関与しているのかご紹介します。
預金者や保険契約者を守っている
身近な金融庁の役割のひとつとして、私たち預金者や保険契約者、投資家の利益を守り、保護するための業務をになっています。そのための制度のしくみについてみていきましょう。
預金保険制度:銀行が破綻しても預金者のお金は守られる
給与の振り込みや光熱費や家賃の支払い、将来のための貯金など、ほとんどの人が銀行などの金融機関を利用しているのではないでしょうか。
その金融機関が万が一破綻したとき、一定の範囲ではあるものの、私たちの大切な預金などを守ってくれる制度が、預金保険制度です。
では、一定の範囲とは、どのようなものでしょうか。次のような図表にまとめてみました。
保護される預金等の分類と範囲
金融庁「預金保険制度」をもとに筆者作成 https://www.fsa.go.jp/policy/payoff/03.pdf
普通預金や定期預金といった一般預金等については、ひとつの金融機関に同じ名義で複数の口座を持っていたとしても、合算して元本1,000万円までと、金融機関が破綻した日までの利息が保護されます。1,000万円を超える部分については、破綻した金融機関の財産の状況に応じて支払われます。
つまり、普通預金や定期預金は、少なくとも合計で1,000万円までは守られます。
また、ここで注意が必要なのは、外貨預金です。円預金の金利が低水準であることなどから、金利の高い外貨預金をしているという人も少なくないと思います。
しかし預けている金融機関に万が一のことがあっても、外貨預金は1円も保証の対象とならないことを知っておく必要があるでしょう。
保険契約者保護機構(保険会社のセーフティネット):守られる保険金などは種類などによって違う
死亡保険や医療保険などの生命保険や、家の火災保険・地震保険、車を所有している人は自動車保険などの損害保険の契約をしている場合、契約している保険会社が万が一破綻したとき、保険金の支払いなどはどうなるのでしょうか。
もし保険会社がそのような状況になった場合、それまでの保険の契約が有効に継続するため、ほかの保険会社へ移転・承継されるように保険契約者保護機構が資金援助を行います。
破綻した保険会社が、責任準備金といって将来の保険金支払いに備えて積み立てていたものの一定割合までを、保険契約者保護機構が補償してくれます。
その範囲は、生命保険や損害保険といった保険種類により異なります。さらに損害保険は保険契約の区分により、さらに補償してくれる割合が変わります。
現在、加入している保険の種類や区分はどのくらいの範囲まで補償してくれるのか、次の図表で確認しておきましょう。
生命保険が保護される範囲
損害保険が保護される範囲
投資者保護基金制度:投資家の資産は二重に保護されている
私たち投資家が株や投資信託などを購入したとき、その代金や株式・債券などの有価証券は証券会社に預けることになります。
証券会社は、その財産を「分別管理制度」により管理しています。これが、ひとつめの投資家の保護です。
分別管理制度とは、投資家から預かった財産と、証券会社の財産を分けて保管することによって、投資家の資産を保護してその安全を守ることを目的としています。
そのため、証券会社が万が一破綻したとしても、投資家の金銭や有価証券などの資産に影響はなく、破綻した証券会社に資産の返還を求めることができます。
しかし、破綻した証券会社が、義務である「分別管理」をせず違反していたなどの理由から、投資家に資産の返還ができない場合は、投資者保護基金が一人1,000万円まで補償をしてくれる制度です。これが、ふたつめの投資家の保護です。
このように、証券会社が法律により義務付けられている「分別管理制度」と、もし分別管理が守られていなかったときのための「投資者保護基金の補償」の二重の制度により守られています。
「投資社保護者制度」 参照:金融庁 投資者保護基金制度の概要 https://www.fsa.go.jp/ordinary/tousi_hogo/index.html
「分別管理制度」 参照:日本投資社保護基金 投資社保護とは http://jipf.or.jp/introduction/index.html
金融システムのチェック、監督など
お金が不足している会社や人が、お金があるところから利息を支払うことなどを条件にしてお金を借りるしくみが「金融取引」です。
金融取引をスムーズに行うため、銀行や証券会社などの金融機関や、株式や債券が売買されている市場、中央銀行、そして私たち個人がそれぞれの役割を果たしながら構築されているのが金融システムです。
その金融システムの安全性を保つための検査や監督も、金融庁の仕事のひとつです。
銀行などの預金を取り扱っている金融機関や、証券会社の持っている資産の質のチェックをはじめ、そこから金融危機を防ぐための課題を先取りして対応するための検査や監督を行っています。
将来にわたり金融システムが安定的にすることは、その中にいる私たちの生活の豊かさの増大につながります。
金融システムのチェック方法 参照:金融庁 金融システムの安定を目標とする検査・監督の考え方と進め方 https://www.fsa.go.jp/news/30/dp/prudence.pdf
まとめ
金融庁の仕事は、私たちの大切なお金や暮らしに、とても密接な関わりがあることがわかりました。金融庁による検査や監督によって、私たちが普段当たり前のように使っている銀行預金や契約している保険、資産形成のために持っている有価証券の安全性が保たれています。
「金融とは、身体をめぐる血液のようなもの」
と金融庁のホームページにあるように、まさにこの血液が適切に供給されることによって、私たち国民の生活の向上につながるのですね。