日銀が「大株主」なのはどうして?金融経済にどんな影響があるのか

日銀が「大株主」なのはどうして?金融経済にどんな影響があるのか
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日銀のETF出口戦略とその問題点

ETFの買い入れは、政策金利がマイナスやゼロまで低下している状況では、政策の一つとして続けざるを得ない厳しさがあると考えられます。
しかしながら、株価が高くなってからも買い続けるとなると、含み損が発生する損益分岐点が上がってしまいます。そこで、株価が上昇局面になっても、ETFを買い続けていくことに意味があるのかという批判も出てきています。

買ったものは最終的には売って、利益を確定させなければなりません。出口戦略とは、ETFの売却のことを指します。
現在のところ、日銀はETFをこれからも引き続き買うという姿勢を崩していません。しかし、日銀が一転してETFの購入を減少させる政策を打ち出せば、株式市場の動揺を招き、売り圧力が大きくなると予想されます。

日銀はこれまで約5年間にわたり、前日の終値から前場(午前中の相場)終値が0.5%のTOPIX下落率を目安に、後場(午後の相場)でETFの買い入れを行ってきました。これを「0.5%ルール」と呼んでいます。こうした日銀の動きに期待して、下げたところを買う動きが見られました。
しかし、日銀が買い入れ額を減少させれば、今までのように日銀が買わないので株価を維持する機能が低下し、日本株の空売りにつながる恐れもあります。

さらに、日銀がETFを買うのを止めることになれば、株価が大きく下落する可能性もあります。しかもETFには債券のように満期がありません。
株式市場の混乱を招かないように残高を減らして売却を進めるためには、時間をかけて慎重に対応する必要があります。

参考:三井住友DSアセットマネジメント点検結果後の日銀ETF買い入れ動向を検証する

日銀ETFの買い入れ方針転換で今後はどうなる?

日銀は2021年3月に年間のETFの買い入れの見直しを行いました。
今までの方針を変更し、年間の買い入れ額の目標から「原則年間6兆円」を削除し、TOPIX連動型のETFに限定して購入することにしました。

これは日経平均型やJPX日経400型の買い入れでは、市場の一部の銘柄へ投資することになり偏りがあるとの批判を是正するものです。
TOPIX(東証株価指数)型に置き換えることで、一部の株価への影響が大きくなるのを防ぐことができるとしています。

また「年間6兆円」目標の削除は、上限の12兆円買い入れは維持しつつ、今後も柔軟な買い入れを続ける意向で、「引き締めの方向にはならない」というメッセージを伝える工夫だと受け取られています。
日銀は物価上昇の妨げとならないように、株価の乱高下による国民心理の悪化や投資行動の萎縮を防ぎたい考えです。
上限の12兆円を維持したのは、今後、市場の混乱時に積極的な買い入れを行う姿勢を明確化したものだとされています。

日銀の方向転換は、買い入れ目標額や購入対象の限定にとどまりません。2021年5月はETFの買い入れがなく、買い入れのルール変更があったとみています。

先ほど書いたように、日銀は0.5%のTOPIX下落率を目安にETFの買い入れを行ってきました。それが2月には1.0%ルールになり、4月21日には2.2%の下落率で701億円買い入れたので、2%ルールに変更されたと関係者は見ています。
その後、2021年5月にはETFの買い入れはなく、6月21日の2.55%の下落率で701億円の買い入れが行われました。このように、日銀の買い控える姿勢が強くなっています。

もし、日銀のETFの買い入れが2%の下落率で出動するとすれば、2015年から2020年の6年間の平均では、年間9回程度しかありません。
2020年度は約7兆円の買い入れを実施していたので、日銀内で下落率の見直しがされたとすれば、これからのETFの買い入れは減額になることが予想されます。

参考:三井住友DSアセットマネジメント点検結果後の日銀ETF買い入れ動向を検証する、REUTERS日銀、21日に通常のETF701億円購入 前場のTOPIXは2.55%安、FinTech Journal激減する日銀のETF購入…いずれ株式市場が痛感する「日銀ロス」とは?

まとめ

日銀のETFの買い入れが金融緩和策の一環だとしても、長期化し保有しているETFがあまりにも大きくなりすぎ、すぐには間接保有の株式を縮小できない状態です。ETF保有の積み上がりは、東証1部上場会社の大株主であるだけはなく、日銀の財務体質が株価に左右されやすい不安定な状況であることも懸念されています。
ETFの売却方法や時期については、黒田総裁は一切考えていないと発言していますが、非常にデリケートな部分であるだけに慎重に対応すべきです。

今後ETFを買い入れる場合、株価水準が高いところで買えば株価が下がったときに含み損が発生します。日銀はETFを買い入れる目的を再考する時期に来ているのではないでしょうか。

池田 幸代

株式会社ブリエ 代表取締役 証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不...

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