早期リタイア「FIRE」を目指すミレ二アル世代が増えている理由
近年、早期リタイアを目指す「FIRE(ファイア)」が若者を中心に広がりをみせています。しかし、言葉は知っていても具体的な内容は分からないという声も少なくありません。
そこで今回は、FIREの概要や注目される理由、実現したときの生活の変化などについて紹介していきます。FIREについて知りたい方は、ぜひご一読ください。
早期リタイアを目指す「FIRE」とは?
「FIRE(Financial Independence,Retire Early)」とは、経済的な安定を確立して早期リタイアを実現する取り組みのことです。
これまで一般的には、60歳前後に定年してセカンドライフを送ることがモデルとされてきましたが、FIREの概念では40歳代~50歳代前半を目安にリタイア生活を送ることが提唱されています。
もちろんこれまでも、ビジネスで成功したり遺産を相続したりと、お金のために働く生活から若くしてリタイアする動きはありました。しかしFIREは、特定の富裕層だけでなく誰にでも始められる可能性があるところに、従来の概念との違いがあります。
また、FIREを実現した後は、投資などの資産運用を主な収入源としながら、豊かな人生を送ることを目的としているのもポイントです。お金持ちになることを目指したり、お金をたくさん貯めてから仕事を辞める、という概念ではないことを覚えておくとよいでしょう。
なぜ今「FIRE」が注目されているの?
では、今なぜFIREがこれだけ注目されているのでしょうか。その理由には、次のような変化が関係していると考えられています。
人生設計の考え方が変わったため
FIREが注目されている背景には、人生設計の考え方が変わったことが関係しています。人生100年時代といわれるように、日本人の平均寿命は年々長くなっており、年金だけに頼るような老後の人生設計は成り立たなくなりつつあります。加えて、定年が70歳に引き上げられるなど、年金受給時期もどんどんと後ろ倒しになっているのも現状です。
リタイア後のまとまった資金である退職金も1997年の平均2,871万円をピークに右肩下がりで減少しており、2018年には平均1,788万円と20年間で1,000万円以上減っています(厚生労働省「就労条件総合調査」)。また、フリーランスや転職を繰り返している場合は退職金そのものを受け取らない可能性もあるでしょう。こうした時代の流れは自分の力だけでは変えられないため、FIREのような人生設計に注目が集まっているといえます。
価値観が変化しているため
FIREは元々アメリカで起こったムーブメントで、主な支持者となっているのがミレニアル世代(2021年時点で20代前半~30代後半)の人たちです。この世代はマイカーやマイホームなどに強い憧れがないなど、これまでの成功概念に縛られない価値観をもっているといわれています。
とくにFIREを目指す若者の多くは、たくさんのものを持つことよりも人生の時間の使い方に敏感であり、より豊かな人生設計を作り上げていきたいという共通認識があるようです。そのため、世代間での認識の違いが顕著に見られることもあり、FIREに批判的な意見を持つ年長者もいますが、多くは価値観の違いであると認識しておくとよいでしょう。
資産運用が始めやすくなっているため
かつては、ある程度まとまった金額がなければ行えないイメージがあった資産運用ですが、近年では1万円以下で始められる少額投資も登場するなど、そのハードルはぐっと低くなりました。
中には数百円から始められるものもあるなど、若者でも資産運用がしやすい仕組みが出来上がっており、FIREを後押しする一因となっています。また、低金利の影響で銀行に預けておくだけでは資産が増えないことから、資産運用に目を向ける人が増えていることもFIREを身近にしている要因でしょう。
では、FIREを実現すると生活はどう変わっていくのでしょうか。ここからは、FIRE実現後の生活の変化について紹介していきます。