厚生年金保険料「32等級」でどう変わる? 影響が出る人とは
2020年9月から厚生年金の標準報酬月額の等級が1等級増え、上限額が引き上げられました。
このことによって、今まで最高等級だった31等級の人の中に、新しくできた32等級となる人があります。それと同時に最高等級の標準報酬月額が32万円から35万円となり、厚生年金保険料がアップして、給料の支給額が同じなら手取りが減ります。とはいえ、標準報酬月額が上がり保険料がアップすることによるメリットもあります。
今回は、厚生年金保険料のしくみを説明し、上限等級にはどんな人が該当して、等級が増えたことによってどんな影響があるのかを考えていきます。
厚生年金保険料のしくみと計算方法
厚生年金保険料や健康保険料は、給料や賞与に対して一定の保険料率を掛けて計算されます。つまり、報酬が高いほど保険料が高くなるしくみです。あくまでも給料や賞与の金額に比例しているのであって、扶養している人数は関係ありません。
具体的には、毎月の給料相当の「標準報酬月額」と、賞与毎に決められる「標準賞与額」にそれぞれ保険料率をかけて計算します。厚生年金の保険料率は、2017年9月から18.3%になり現在も変わっていません。会社と個人が折半で負担するので、個人の負担は9.15%です。
「標準賞与額」とは、賞与の総支給額を千円未満切捨てした額で、上限は1回150万円です。
一方、「標準報酬月額」は毎月の給料の総支給額(通勤手当や残業代などすべて含んだ額)を区切りのよい幅で区分して決められます。この区分が等級となります。
標準報酬月額は、毎月の給料額によって決めるのではなくて、基本的には毎年4月・5月・6月の3カ月間の平均額(報酬月額)から決定されます。※1
出典:日本年金機構ホームページ
表を見て頂くとわかるように、同じ標準報酬月額には一定の幅があって、例えば4月・5月・6月の総給料の3ヵ月平均が31万円の人も32万9999円の人も同じく、標準報酬月額20等級32万円の中になり、厚生年金保険料の個人負担はどちらも同じく月2万9280円です。
報酬月額が多くなるほど、次の等級にあがっていく幅も大きくなり、最初は6千円から1万円の幅なのに対して、20万円を超えると2万円ごとになり、38万円を超えると3万円ごととなります。月3万円も給料が違うのに、同じ保険料というわけです。
※1:https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/ryogaku/ryogakuhyo/20200825.html
2020年9月から標準報酬月額に32等級が追加された
先ほどの表の最高等級32等級は2020年9月から新設された等級です。※2
出典:日本年金機構ホームページ
厚生※3年金保険の標準報酬月額の上限は、厚生年金保険法によって、「3月31日時点の全厚生年金被保険者の平均標準報酬月額の2倍が、標準報酬月額の上限を上回って、その状態が継続すると認められる場合は、政令で上限の上に等級を追加することができる」となっています。
2016年3月末にすでに2倍を超えていたのですが、2019年まで毎年超えることとなったので、今回上限の追加となりました。
出典:厚生労働省
厚生年金保険料は、標準報酬月額に保険料率を掛けて計算されるので、上限等級である31等級だった人の中で新設の32等級になる人は、2020年9月分の厚生年金保険料から保険料アップとなりました。
※2:https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2020/202009/20200901.html
※3:https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000561860.pdf
では、新しくできた上限の32等級になるのは、どんな人でしょうか?