日銀は世の中に出回るお金のバランスをどうやって決めているのか
お金をたくさん刷るとどうなる?
ここで最初の問題に立ち返ります。金融政策だ、財政政策だと、そんな回りくどいことをしなくても、お金をどんどん刷ってばら撒けば、誰も困らないのではないでしょうか?
そんなことはありません。お金が過度に世の中に出回っても、お金で買えるモノやサービスの数はそれほど変わりません。すると、お金が世の中に増えるとお金への需要が減ってしまうので、需要と供給の関係で、お金の価値が下がり、モノやサービスの価格が上がる「インフレ」が発生します。
インフレになると、モノやサービスの価格が上がり、買われる量が変わらなければそれに応じて企業収益が上がります。企業収益が上がれば、みんなの給料も上がるので、上がった分は消費に回ります。国民の消費が増えれば、経済は拡大して好景気のサイクルが生まれます。
このようにインフレは景気を刺激するカンフル剤になるのですが、インフレが行きすぎると経済を破綻させる可能性があります。
たとえば、アフリカの南部、ジンバブエでは21世紀に入ってから紙幣の供給量が急増した結果「ハイパーインフレ」とも呼ばれる事態が発生しました。実際に「100兆ジンバブエドル」という紙幣が使われ、買い物かごに入れた商品の価格がレジに行くまでに上昇するというのですから、驚きです。
日銀の金融政策には、経済を安定させる目的もあります。ですから、考えなしにお金をたくさん刷るわけにはいかないのです。
インフレ社会を目指す日本
安倍政権誕生後、日銀は国債の買い入れを大幅に増加させ、マイナス金利を導入しました。また政府はアベノミクスに代表される財政政策を行い、減税や公共事業の拡大を進めてきました。これらによって、政府・日銀はインフレ率を年2%ずつアップさせることを目標にしていました。なぜなら、それまでの日本は、デフレにあえぐ状況だったからです。
デフレは、インフレとは反対に、モノやサービスの価格が下がることをいいます。一見、消費者としてはよさそうですが、デフレ下でモノやサービスの価格が下がると企業収益が下がり、給料が下がり、物が売れなくなり、また価格が下がる…というデフレスパイラルに陥ってしまいます。こうなると、景気回復が遠のいてしまいます。
そこで政府はデフレ脱却を図り、インフレを前提とする社会を構築するために日銀とタッグを組んで金融政策・財政政策を推し進めてきた、というわけです。ハイパーインフレというほどのインフレでは困ってしまいますが、年2%くらいの緩やかなインフレならば、経済に好影響だと考えているのです。
その結果、インフレ率2%は達成できたのかというと、実は達成できていません。
2%を達成できなかったのは、金融政策では対処できない構造的な問題がたくさんあったからと言われています。元々2%のインフレが日本経済にとって望ましいかどうかの根拠は乏しいのです。
とはいえ、今後もインフレ社会を目指すと考えられます。
景気回復の為に今後の政策に注目を
世の中に出回るお金のバランスは、日銀の金融政策によって決まっていることを紹介してきました。金融政策は、政府の財政政策とともに、景気の回復を目指して行われています。
新型コロナウイルスで経済は混乱していますが、この状況を打開するためにどのような政策を取っていくのか、ぜひ関心をもってニュースを見てください。