人口が増えている国では年金制度はどうなっている? 世界の年金を日本と比較

年金・社会保険

日本では高齢化が進んでおり、1935年には4.7%であった高齢化率(65歳以上の人口が総人口に占める割合)は、2018年10月時点では28.1%にまで達しています。(内閣府「2018年度版高齢社会白書」より)
日本がこのままの状態でいくと、老後の生活の収入基盤である年金がどうなっていくのか不安ですね。そうはいっても世界には人口が増えている国もあります。そうした国々との比較から考えられる日本の年金制度の将来を考えてみましょう。

人口が増えている国の年金制度

国連の報告書によると、2019年の世界の人口は77億人だそうです。将来はますます増えていき、2050年には97億人、2100年には109億人※1まで増えると推計されています。

そうしたなかで、今後人口が増えると予測されるのは、インド、ナイジェリア、パキスタン、コンゴ民主共和国、エチオピア、タンザニア連合共和国、インドネシアの順※1になっています。
また、世界の人口で1番多い中国は、2027年にはインドに追い越されてしまう見通しです。
今回はアジア圏のインド、インドネシアとともに、GDPランキング1位アメリカ、2位中国の年金制度を紹介します。
※1国際連合広報センターhttps://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/33798/

インド

インドの年金制度は、労働者が属する部門によって異なっています。部門には、「組織部門」と「非組織部門」があります。
組織部門とは、政府や地方公社など公的部門、10人以上を雇用している民間企業のことで、これらの部門に属する一定水準以下の賃金の労働者に対しては年金制度が強制適用されます。

それ以外の部門に属する非組織部門の労働者や、組織部門でも賃金が一定水準を超える労働者には、一部任意加入の制度があるのみです。
労働者のうち非組織部門に属するものは82.7%(2011~2012年)なので、年金制度の対象は限定的なものになっています。

月払いの年金(EPS)は58歳から受け取ることができ、退職時の一時金(EPF)は55歳で受け取れます。
また、非組織部門の年金制度加入促進のため、2015年6月から確定給付方式の年金制度(APY)が新設されました。

日本の国民全員が強制加入している年金制度とは、大きく異なっていることがわかります。生計の維持が難しくなった場合には、公的年金よりも家族の支え合いによってまかなわれているのが現状のようです。
参照:厚生労働省 インド https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kaigai/19/dl/t6-02.pdf

インドネシア

もともと、インドネシアには国家公務員や軍人を対象とした年金など、業種ごとの年金制度が複数ありましたが、全国民を対象とした制度にはなっていませんでした。
しかし、2015年からは全国民を対象とした年金制度が開始し、インドネシアの労働者とその家族が加入する社会保険制度の構築を目指しています。

老齢年金は、当初56歳から年金の受取り可能としていましたが、2019年には57歳からとなり、以降は3年毎に1歳ずつ上昇させて最終的には65歳からの受取りに移行する予定です。

このように、インド、インドネシアとも今は年金制度を整えている段階です。人口が増えると国だといっても、2050年までにはアジア太平洋諸国の65歳以上の高齢者の人口にしめる割合は2倍以上増え、高中所得国では23.9%、低中所得国では14.5%まで増加すると予想されています。今後の高齢化を見据えた施策が必要であると言えるでしょう。※2

問題点として、正規の年金制度への加入率が低いこと、年金を一時金として受給されるケースが多くそれを使い切ってしまう恐れがあること、年金額に景気変動を反映するようなしくみが取られていないことがあげられます。
年金制度を守るためには、これらの改革が必要になるでしょう。
参照:厚生労働省 インドネシア https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kaigai/19/dl/t5-02.pdf
※2経済協力開発機構 アジア太平洋諸国は、最下層の人々の医療格差を削減すべき https://www.oecd.org/tokyo/newsroom/asia-pacific-should-reduce-inequalities-in-access-to-care-for-the-most-marginalised-groups-says-oecd-japanese-version.htm

続いて、GDPランキングの1位のアメリカ、2位の中国の年金制度がどうなっているのかを解説します。

NEXT:「GDPランキング上位2カ国の年金制度」

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池田 幸代

株式会社ブリエ 代表取締役 証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不...

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