人口が増えている国では年金制度はどうなっている? 世界の年金を日本と比較

年金・社会保険

GDPランキング上位2カ国の年金制度

アメリカ

アメリカの年金制度は、日本の基礎年金(国民年金)にあたる定額給付がなく、厚生年金に相当する年金のみになっています。会社員などの被用者と、年収が一定額以上の自営業者が加入対象者です。無職などの場合は保険料を支払う義務がありません。
保険料は労使折半で、会社員などは一定の料率(6.2%)の保険料が源泉徴収され、雇用主が同額負担します。自営業者の場合12.4%負担します。

日本にはない仕組みとして、年金を受け取っている人に65歳以上の配偶者や18歳未満の子がいる場合には、退職年金の50%に相当する「家族年金」がもらえる制度があります。

アメリカの年金制度も将来の給付が危ぶまれていることから、受給年齢が65歳から67歳に少しずつ引き上げられています。どこの国でも年金を維持するために、制度の改革を行わざるを得ない現実があります。
参照:日本年金機構 アメリカ https://www.nenkin.go.jp/service/kaigaikyoju/shaho-kyotei/kyotei-gaiyou/20120802-01.html

中国の一人っ子政策の影響と今後

現在世界で一番人口の多い中国ですが、「一人っ子政策」がとられていたことはよく知られています。しかし、その一人っ子政策も2016年に廃止され、すべての夫婦が二人目の子供を持つことが認められるようになりました。

一人っ子政策は、もともと1979年に、人口が増えすぎて食料などの資源が足りなくなる「人口爆発」が心配されて始まったものです。一人っ子政策では、夫婦1組あたり1人の子どもしか持てないことにしました。
その国策も、人口爆発よりも少子高齢化のほうが問題になってきたのです。

子どもを持つのなら、労働力となりうる男性を望む傾向が中国ではありました。その影響で、今の若い世代では女性より男性の数が多すぎて、結婚できない男性が3000万人※3もいるそうです。

一人っ子政策が撤廃されたといっても、急に女性が子どもを産む気にはなれないでしょう。住宅が高騰し、多額の教育費をかけて子どもを育てることが風習となっている中国では、出生率がすぐに回復することは難しいでしょう。
いずれ人口の減少がはじまり、中国も高齢化社会へと変わっていくと予想されます。

中国の年金制度は、「基本年金・基礎年金」と本人が納付した累計総額を基礎とする「個人勘定」の2階建てです。会社員と公務員で構成される強制加入の「都市職工年金」と都市の非就労者と農村住民が加入する任意加入の「都市・農村住民年金」の2種類があります。
今までに格差があった会社員と公務員の年金を統合するなどの改革も行っています。しかし、会社員が加入する年金の積立金が2035年に枯渇※4するという試算も出ているので、年金制度の見直しは避けられないのではないでしょうか。
参照:朝日中高生新聞 中国に「一人っ子政策」が終わる https://www.asagaku.com/chugaku/newswatcher/5088.html
※3読売新聞 男女差3000万人、中国の結婚できない男たち https://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/20181012-OYT8T50023/
※4日本経済新聞 中国の年金積立金「2035年に枯渇」 長期試算に衝撃 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47457260X10C19A7FF8000/

人口が減少していく日本の年金

厚生労働省では、5年毎に年金制度の財政検証※5を行っています。このほど2019年8月27日にその結果が発表されました。

その内容は、経済成長率が高い場合でも将来の給付水準は今より約16%下がり、成長率の横ばいが続く場合では約3割弱も低下するというものでした。
もし、今20歳の人が現在の水準の年金をもらうためには、68歳まで働く必要があると試算を示しています。
さらに、女性1人が一生で出産する子どもの数が今より減れば、この試算はもっと厳しいものになります。
※5厚生労働省 2019(令和元)年財政検証結果のポイント https://www.mhlw.go.jp/content/000540198.pdf
日本経済新聞 年金、68歳まで働く必要 制度改革急務 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO49054290X20C19A8MM8000/

まとめ

「持続可能な社会」という言葉をよく耳にするようになりました。自然環境が保たれて、将来の世代が必要とするものを損なうことなく、現在の世代の要求を満たすような開発が行われている社会のことです。

年金もお金という資源を、いかに公平かつ安定的に給付して管理していくかにかかっています。これからは日本の人口減、超高齢化も予想されるので、若い世代は老後資金を自ら備えることが不可欠になります。

池田 幸代

株式会社ブリエ 代表取締役 証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不...

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