標準生命表が改定!生命保険はどう変わる?
保険の仕事を長年していると、数年に一度は各保険会社から、「○月以降、料率改定になります」という知らせが来ます。同じ保険会社の中でも全ての商品が一律に変更されるではなく、商品毎にあったり、なかったり。
常に40社以上の保険会社に携わっている筆者であれば、一部の保険会社の、一部商品による「料率改定」は日常の出来事ですが、ほとんどの保険会社が一斉に料率改定をするのは、大イベントです。
実は、11年ぶりに生命保険料の算定元である「標準生命表」が改定しました。今回は、その影響などをみなさまにお伝えします。
生命保険料の算定元である「標準生命表」が11年ぶりに改定
昨年末から今年の春まで、世間を(少なくとも保険業界を)騒がせていたのは、2018年春以降の新規契約の保険料と、契約者の資産となる解約返戻率(かいやくへんれいりつ)が、どれだけ「下がるのか」でした。
この原因は、生命保険設計の基礎となる「標準生命表(ひょうじゅんせいめいひょう)」が、11年ぶりの大幅改定された事によります。
標準生命表とは、保険業法に基づいて指定された「公益財団法人日本アクチュアリー会」が作成する、保険会社の「責任準備金」の計算に用いられるもので、「死亡保険用」、「年金用」、「第三分野用」に分けられます。
今回改定されたのは、「死亡保険用」と「第三分野用」で、前者は「死亡保険」に、後者は「医療保険」に大きく関わってきます。
なお、「責任準備金」とは、保険会社が保険契約者から集めた保険料で運用を行い、契約者の資産を増やし、保険契約において定めた事故発生時に支払う保険金を準備するための資金です。保険業法で「最低限いくらかは、保険会社の中で確保しておきなさい」というルールがあります。
その「いくらか」を決める基準となるのが、標準生命表なのです。
生命保険料は死亡保険は下がり、医療保険は今後上がる可能性
今回の改定で、死亡保険に係わってくる数値はどの年齢でも一律に下がりました。これは医療の進歩や、自殺者の減少が要因といわれています。
死亡する確率が下がったのであれば、死亡事故で支払う保険金の準備の為の「いくらか確保しておきなさい」とルールで決められた金額も、当然少なくて済みます。
少なくて済むのであれば、その為の資金を保険料から差し引くことができるので、保険料は下がります。これは読者の皆様(保険料負担者)からみれば、うれしいことですね。
ただし、責任準備金は将来、契約者が解約をして手にすることのできる「解約返戻金」の一部でもあるため、掛けたお金(保険料)と返ってくるお金(解約返戻金)の割合で計算する「解約返礼率」は、改定前よりも下がる事になります。
特に法人系の保険設計では、解約返礼率の良さで活用している面がありますので、単に保険料が下がるから良し、というわけにもいかないのが実情です。
また、死亡率が下がったのに対して生存率は上がった事になりますので、生存中の医療系保障は、保険会社から見れば給付リスクが高くなります。給付リスクが上がるということは、その分契約者から集める保険料は上げなければなりません。
つまり、死亡保険系の保険料が下がったのに対して、医療保険系の保険料は今後値上がりする事が予測できます。
まとめ
「保険料が値上がりする?」というウワサは、医療保険やがん保険、介護保険など、生存中に保険会社から支払われる保障の保険のことです。
2018年4月以降に医療保険の値上げをした会社はほとんどありませんので、今後保険料の値上げに踏み切る保険会社が出た場合、他の保険会社が追従して値上げをする事が考えられます。
加入を検討される方は、今後の医療保険系料率改定の前に加入できるよう、情報収集が必要ですね。