一般NISA・つみたてNISAの実態 口座数は増えても投資している人は少ないのは本当か

一般NISA・つみたてNISAの実態 口座数は増えても投資している人は少ないのは本当か
マネーケア

NISA(ニーサ・少額投資非課税制度)は、投資で得られた利益(運用益)にかかる20.315%の税金をゼロにできるお得な制度です。預金ではお金がほとんど増えない時代ですから、NISAはお金を増やすためにもぜひ活用して欲しいのですが、中には口座開設しただけで、実際に投資している人は多くないということがわかりました。

投資の税金が非課税になるNISA

NISAには、一般NISA・つみたてNISA・ジュニアNISAの3つの制度があります。このうち、日本に住む18歳以上(口座開設年の1月1日時点)の人が利用できるNISAには、一般NISAとつみたてNISAがあります。一般NISAとつみたてNISAは併用ができないので、利用にあたってはどちらかを選ぶことになります。

一般NISAとつみたてNISA

(株)Money&You作成

一般NISAとつみたてNISAでは、表のように新規に投資できる期間・非課税になる期間・金額、投資対象商品などが異なります。また投資方法も、つみたてNISAでは文字どおり積み立てしかできませんが、一般NISAではタイミングを計った一括購入も可能です。

なお、一般NISAの制度は2024年に変更される予定。「新NISA(仮)」となり、投資対象商品や年間投資上限額などが変わります。つみたてNISAも当初は新規に投資できる期間は2037年まででしたが、2042年までと5年間延長されます。そして17歳までの未成年者が利用できるジュニアNISAは、2023年をもって廃止となります。

一般NISA・つみたてNISAで投資していない人が多い?

投資の利益には、通常20.315%の税金がかかります。ですから、特にこれまで投資をしたことがないならば、一般NISAでもつみたてNISAでも、まずは「NISA」を利用して投資した方がお得です。税金がゼロにできる分、効率よくお金を増やす期待ができるからです。

しかし、金融庁の統計を見ると、せっかく一般NISA・つみたてNISAの口座を開設したにもかかわらず、投資していない人が多いようです。

2020年中の一般NISA買付額別口座数の割合

金融庁「NISA・ジュニアNISA口座の利用状況調査(2020年12月末時点(確報値))より(株)Money&You作成

グラフは2020年の1年間の一般NISA口座での買付額を20万円ごとに区切って、口座数をまとめた割合です。調査の対象になっている一般NISAの口座数は1063万1174口座。そのうち、約54%にあたる578万1586口座は、2020年1月1日〜12月31日中の買付額が「0円」でした。「0円超20万円以下」も約10%ですから、一般NISA口座を持つ人のおおよそ3分の2は、非課税の恩恵をほとんど活用していないことがわかります。

なお、次に多いのが「100万円超120万円以下」で約17%。一般NISAの年間の非課税投資枠が120万円であることを考えると、上限いっぱいまで取り組んでいる人も相応にいることが考えられます。一般NISAで5年間運用した商品を翌年の非課税投資枠に移管する「ロールオーバー」を利用している「120万円超」の人も約2%います。

2020年中の一般NISA買付額0円の年代別割合

金融庁「NISA・ジュニアNISA口座の利用状況調査(2020年12月末時点(確報値))より(株)Money&You作成

一般NISAの口座数が多いのは50歳代〜70歳代です。その世代でも、おおよそ半数程度が買付額0円となっています。また、40代、30代、20代と年代が若くなるにつれて買付額0円の割合が増加しています。

2020年中のつみたてNISA買付額別口座数の割合

金融庁「NISA・ジュニアNISA口座の利用状況調査(2020年12月末時点(確報値))より(株)Money&You作成

同様に、つみたてNISAも見てみましょう。調査の対象になっているつみたてNISAの口座数は304万3502口座。そのうち、約32%にあたる98万2789口座が、2020年1月1日〜12月31日中の買付額が0円でした。つみたてNISA口座での買付額0円の割合は一般NISAより少ないのですが、それでも約3人に1人はせっかくのつみたてNISAの非課税投資枠をまったく利用していません。また、つみたてNISAの非課税投資枠を半分も利用していない「0円超20万円以下」の人も約40%います。

2020年中のつみたてNISA買付額0円の年代別割合

金融庁「NISA・ジュニアNISA口座の利用状況調査(2020年12月末時点(確報値))より(株)Money&You作成

つみたてNISA買付額0円の年代別の割合も、一般NISAとほぼ同様の構成となっています。つみたてNISA口座は20歳代〜40歳代での開設が多くなっていますが、その20歳代から40歳代でも3割以上は買付額0円となっているのです。

「買付額0円」がこれだけ多いにもかかわらず、一般NISA・つみたてNISAの口座数は増加し続けています。2018年・2019年・2020年・2021年(速報値)で確認すると、次のようになっています。

一般NISAの口座数

2018年 1150万667口座
2019年 1174万7353口座
2020年 1220万9886口座
2021年 1248万4106口座

つみたてNISAの口座数

2018年 103万6603口座
2019年 189万230口座
2020年 302万2422口座
2021年 518万1403口座

特に2020年・2021年はつみたてNISAの口座開設数が大幅に増加していることがわかります。老後資金2000万円問題やFIRE(経済的自立と早期リタイア)ブームなどを背景に、資産運用に脚光があたったことで、口座数が増加したものと考えられます。

現に、2021年は市場の環境もよく、右肩上がりでお金を増やしやすい環境でした。しかし、当たり前のようですが、そのような環境であっても、「買付額0円」ではお金は増やせません。つみたてNISAであれば、ネット証券などでは100円からでも投資ができます。また、一般NISAでも投資信託は購入できますし、個別株にも数万円程度から投資ができます。NISA口座を持っているだけでは当然お金は増えませんので、まずは少額であっても投資する、そして投資を続け、市場に長く参加することが大切だと考えます。

続きを読む
1 / 2

頼藤 太希

(株)Money&You代表取締役/マネーコンサルタント 中央大学客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。...

プロフィール

関連記事一覧