【Z世代のマネー学】長期積立投資はいつやめるのがいい? 買い時よりも難しい「売り時」を考える

長期積立投資はいつやめるのがいい? 買い時よりも難しい「売り時」を考える
マネーケア

取り崩しは運用しながら複数回に分けて

ただし、売り時のルールの条件を満たしたから「さっと全額売ってしまおう」というのはおすすめしません。なぜなら、一度に売ってしまうと、安いタイミングで売却してしまうかもしれないからです。

これまで長期積立投資をしてきた理由を思い出してみましょう。
長い時間をかけて、一定額ずつ積み立てることで、商品が安い時にはたくさん、高い時には少しだけ購入することになります。これを長期間繰り返していくことで、平均購入単価を下げることができるのです。これを「ドルコスト平均法」といいます。もちろん、安い時に一気に買って、高い時に売った方が儲けは大きいのですが、「安い時」「高い時」は誰にも判断できません。ですから、長期積立投資でドルコスト平均法を生かしてきたのです。

これは、売る時も同じです。当然、高い時に売れれば一番ですが、その判断は誰にもできません。ですから、すべてを一度に売るのではなく、複数回に分けて資産を取り崩していくのがおすすめというわけです。これによって、平均売却単価を安定させることができます。

●売却も複数回に分けると平均売却単価が安定する

筆者作成

長期積立投資をやめてはいけないタイミング

長期積立投資をやめるタイミングについてお話ししてきましたが、逆に長期積立投資をやめてはいけないタイミングも存在します。

●やめてはいけないタイミング:市場が暴落した時

市場は、時に暴落します。記憶に新しいところでは、2020年2〜3月のコロナショックがあります。
新型コロナウイルスの感染拡大が明るみに出ると、日本はもちろん、世界中の株価が一時的に大きく下落しました。こうしたときには、ほとんどの商品が値下がりしてしまいます。すると、いくら長期投資をしていても、「このまま持ち続けていても大丈夫だろうか」と心配になって、売ってしまう人もいるのです。

しかし、いつまでも下がり続ける市場はありません。たとえば日経平均株価は、2020年9月にコロナショック前の水準を回復し、以後はコロナショック前よりも値上がりしています(2021年10月時点)。過去の暴落を見ても、回復までの時間の長短はあるものの、いずれもとの水準に戻り、それを乗り越えています。

本稿執筆時点(2021年10月5日)も、日経平均株価は前日比で622円下落して2万7822円。1週間前(2021年9月28日)の3万183円から2300円以上も下落しています。米国が債務不履行に陥るのではないかという懸念、中国不動産大手の「中国恒大集団」の経営問題、原油高が企業業績に悪影響を与えるのではないかという思惑など、株安の理由はさまざま報じられています。

これらの問題の中には、今後も長引くものもあるかもしれません。しかし、問題が解決すれば、再び株価は上昇していくものと考えます。むしろドルコスト平均法のことを考えれば、今のうちに買っておくことで平均購入単価を下げることすら期待できるのです。

もちろん、暴落で心配になる気持ちはわかりますが、市場の暴落時に売ると、損失が確定してしまううえに、その後の値上がりの恩恵も受けられなくなってしまいます。長期積立投資は、もともと余裕資金で取り組んでいるはずですので、慌てて売ることのないようにしましょう。

●急いでやめない方がいいタイミング:つみたてNISAなどで非課税期間が終わった時

つみたてNISAは、年間40万円までの投資で得られた利益を20年間にわたって非課税にできる制度です。だからといって、「非課税期間が終わるから急いで売らなきゃ」とする必要はありません。

つみたてNISAの商品は、20年の運用が終了したあと、課税口座に自動的に移されます。そして、その後もそこで運用を続けることができます。

このとき、課税口座に移したときの資産額が取得価格となります。

・つみたてNISA口座から課税口座に移した場合の税金の扱い

筆者作成

たとえば、ある年につみたてNISA口座で投資した40万円が、20年後に80万円になっていたとします。課税口座に移されるときには、この商品を「80万円で取得した」とみなすのです。つまり、つみたてNISA口座で運用して増えた40万円には、20年経過後も税金がかからない、というわけです。

課税口座で運用して、そこから値上がりして100万円になったとします。このときは、利益の20万円に対して税金がかかります。逆に、80万円から値下がりした場合には、税金はかかりません。

ですから、とくに資金が必要でないのであれば、つみたてNISAの非課税期間が終わっても無理に売ることはありません。課税口座に移して長期積立投資を続けた方が、堅実にお金を増やすことができるでしょう。

ミレニアル世代・Z世代の最大の武器は時間

長期積立投資の売り時についてお話ししてきました。お金を増やしていくためには、お金をなるべく増えるところに置くことが大切。そのためにも、売り時のルールを定めて、それ以外のタイミングでは売らないようにしましょう。

ミレニアル世代・Z世代のみなさんの最大の武器は時間です。まだ若いうちから長期積立投資をすることで、よりリスクを抑え、堅実にお金を増やしていくことができるでしょう。その武器を最大限に活用するためにも、投資はできるだけ早く始めて、長く続けていくことを心がけましょう。

頼藤 太希

(株)Money&You代表取締役/マネーコンサルタント 中央大学客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。...

プロフィール

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