FIREすると厚生年金が減る盲点! いったいいくら減る?

FIREすると厚生年金が減る盲点! いったいいくら減る?
マネーケア

経済的自立を果たして早期リタイアを目指す「FIRE」が注目されています。FIREのために資産を増やすこと自体は結構なのですが、一方で忘れられがちな問題が。それは、年金の問題です。
実はFIREすると、厚生年金が減ってしまう盲点があることは、あまり語られていません。
今回はFIREによって厚生年金が減るしくみと、具体的にいくら減るかについて、紹介します。

そもそもFIREっていったい何?

FIREは「Financial Independence, Retire Early」の頭文字をとって略した言葉。「経済的自立して早期リタイアを目指す」という意味があります。

経済的自立と早期リタイアというと、億万長者になって悠々自適の生活を送るイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし、FIREの経済的自立と早期リタイアはそれとは違います。簡単にいえば、FIREでは年間の生活費を資産運用の収入でまかなうことを目指すのです。

たとえば、年間の生活費300万円を、資産運用で得られた年300万円の収入でまかなうことができれば、計算上は資産を減らさずに生活できます。FIREでは、この年300万円の収入を得られるだけの資産(FIRE資産)を築くことを目指します。

仮に年4%で運用できるとしたら、FIRE資産が7500万円(年間の生活費の25倍)あれば、年300万円の収入が得らます(7500万円×4%=300万円)。何も億万長者にならなくても、経済的自立や早期リタイアが達成できるということから、FIREは国内外で大きな注目を集めているのです。

もっとも、資産運用で必ず毎年4%で運用できるとは限りません。年3%に下がってしまえば、1%分(ここでは、75万円分)を節約するか、資産を取り崩すなどして工面する必要が出てくることになります。それに加えて、冒頭でお話しした年金の問題も生じます。

FIREしても国民年金の支払いは義務

日本の公的年金制度には、国民年金と厚生年金があります。
国民年金は、20歳から60歳まですべての人が加入する年金。それに対して、厚生年金は、会社員や公務員として働く人が加入する年金です。日本国憲法の三大義務(教育の義務・勤労の義務・納税の義務)にもあるように、年金の保険料の支払いは国民の義務となっています。これは、FIREした場合でも例外ではありません。

国民年金では、加入者を3種類に分けています。

・第1号被保険者…第2号被保険者・第3号被保険者以外の方(自営業・学生・無職など)
・第2号被保険者…会社員や公務員の方
・第3号被保険者…第2号被保険者に扶養されている配偶者(主婦・主夫など)

FIREすると、勤め先をやめて無職になるのですから、第2号被保険者から第1号被保険者に変わります。会社員・公務員は、国民年金保険料と次に説明する厚生年金の保険料を毎月の給与から天引きする形で支払っています。

しかし、無職になったら、毎月の国民年金保険料を自分で支払います。2021年度の国民年金保険料は月1万6610円。年間で19万9320円です。国民年金保険料は毎年多少変動します(近年は上昇傾向)。60歳までは、年およそ20万円納めなくてはならないのです。

国民年金保険料を40年間(480か月)すべて納めると、65歳から満額の国民年金(老齢基礎年金)を受け取れます。2021年度の老齢基礎年金の満額は78万900円です。また、所定の条件を満たした場合には、障害年金や遺族年金などを受け取ることもできます。

厚生年金は払わなくていいが、もらえる金額が減る

一方、厚生年金は会社員・公務員といった第2号被保険者が加入する年金なので、FIREを実現し、無職になった場合は、厚生年金には加入しません。ですから、厚生年金保険料を支払う必要もありません。厚生年金に1か月でも加入していれば、こちらも原則65歳以降に厚生年金(老齢厚生年金)を受け取ることができます。

しかし、老齢厚生年金の金額は、厚生年金に長く加入し、保険料をたくさん納めるほど増えるしくみ(細かくいうと、平均標準報酬額(平均月収と賞与より算出される金額)に所定の比率と加入月数をかけて算出します)です。毎月の給与や賞与が多いほど、支払う保険料も多くなるのですが、将来受け取れる年金額も多くなります。

つまり、FIREすることによって、厚生年金の加入期間が短くなり、納める保険料が少なくなってしまうため、FIREした期間も厚生年金に加入していた人に比べて、もらえる金額が減ってしまうのです。

では、FIREすると老後の年金額はどのくらい減るのか、具体的に見てみましょう。

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頼藤 太希

(株)Money&You代表取締役/マネーコンサルタント 中央大学客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。...

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