【Z世代のマネー学】アノマリーってなに?行動ファイナンスとの深い関係

アノマリーってなに?行動ファイナンスとの深い関係
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規模効果

株式市場に上場している銘柄の規模を表すのが時価総額です。時価総額の高い会社ほど会社の規模が大きく、価値が高いといえます。

では、単に時価総額の高い銘柄に投資すればいいのかといえば、そうではありません。

時価総額の小さい銘柄(小型株)のリターン(収益率)の方が、規模の大きい銘柄(大型株)のリターンより高い傾向にあるからです。こうなる原因は、「横並び効果」のひとつ、「情報のカスケード」が影響していると考えられます。

たとえば、お客さんが誰もいない2つのレストランがあり、あなたがどちらかに理由もなく入ったとします。
すると、その後に来る人たちは、あなたが入った店を選ぶことが多いのです。
どちらのレストランがおいしいかという情報がないのに、「人がたくさんいるからおいしいに違いない」と勘違いして、横並びの行動を取ってしまうのです。

このように、自分の持っている情報を無視して、多数派を選んでしまう傾向のことを情報のカスケードといいます。

株式投資の世界はよく、「小型株はテンバガーになりやすい」といいます。テンバガーとは、株価が10倍になることです。

小型株のなかには、本当はいい銘柄なのに、そもそも注目度が低かったり、機関投資家が購入できなかったりして、割安なまま放置されているものがあります。その銘柄を見つけて投資することができれば、レストランと同じようにお客さん=投資家が増え、テンバガーとなって「億り人(おくりびと・資産が1億円を超えた人)」になることだってできるかもしれません。

リターン・リバーサル(過剰反応効果)

リターン・リバーサルは、ある期間に相対的に高かった(低かった)銘柄の収益率が、続く期間では逆に、相対的に低い(高い)収益率となる傾向があることです。リターン・リバーサルは、3年から5年といった長期のリターンで見られます。また日本では、6ヶ月以内といった短期のリターンでも見られることがあります。

特に高かった収益率が下がってしまうと「なんだか調子が悪いな」と感じるでしょう。しかし、これは「平均回帰の効果」で単に平均に近づいているだけかもしれません。
逆に、収益率が低いときに「平均回帰してこれから上がるに違いない」と見越して、逆張りの投資戦略をとるヘッジファンドもあります。

他にもある投資のアノマリー

ここまで紹介したアノマリーの他にも、市場でよく見られるという投資のアノマリーがあります。
中には、ことわざや格言のようになっているものも。3つ、ご紹介します。

1月効果

他の月に比べて1月は特に収益率が高くなる傾向があることを、1月効果といいます。
効率的な市場では、どの月だろうと収益率に違いはないはずです。しかし、日本でも1月は「ご祝儀相場」と呼ばれ、値上がりする傾向があることが知られています。

その理由は、お祝いだけではありません。
前年の12月は、損失を抱える銘柄を売って、損失と利益を相殺する節税対策の売りが出やすいとされています。1月に入り、そのお金を投資に回す買い戻しが入ることが理由のひとつです。

また、1月になると機関投資家やファンドが新規の資金で投資を行うことが多くあります。そのため、1月の市場は値上がりしやすいと言われています。

曜日効果

株式市場や為替市場は平日、月曜日から金曜日までしか取引ができません。この中で、米国では金曜日のリターンが高く、月曜日のリターンが低いといわれています。

効率的な市場では、先の1月効果と同じく、曜日による差は生まれないはずです。しかし、曜日によって差が生まれるのは、取引のできない土日に重要なイベントがあることがあるからでしょう。

たとえば土日に首脳陣の会談や、会社の業績に影響を与える発表などがあっても、それを反映して取引できるのは次の月曜日になってからです。よくないニュースがあった場合は、ここで値下がりしてしまうというわけです。

セルインメイ

イギリスの相場格言に「5月に株を売って、9月半まで戻ってくるな」というものがあります。6月から9月までは株式相場が軟調になるため、5月のうちに株を売りなさい(Sell in May)ということを説明しています。

理由は様々な要因が考えられますが、その1つはヘッジファンドの動向に関係があります。

というのも、ヘッジファンドの決算期は5月と11月。ここで利益を計上するため、その前の4月と10月にはポジション(信用取引や先物取引などで決済していないもの)を減らすことが多いのです。
そのため、市場が下落してしまう傾向が毎年見られます。

従来の経済学で説明できなくても、行動ファイナンスは投資に役立つ

以上、さまざまなアノマリーを紹介してきました。その多くは従来の経済学では説明できないものです。
しかし、理論上どんなに「こんな相場はありえない」といっても、実際にアノマリーが示すような値動きをする傾向があるのは事実です。

行動ファイナンスやアノマリーを知っておけば、市場の値動きがよりわかりやすくなりますし、投資の幅も広がります。ぜひ、投資の際の参考にしてくださいね。

頼藤 太希

(株)Money&You代表取締役/マネーコンサルタント 中央大学客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。...

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