【Z世代のマネー学】運用成績の9割が資産配分で決まるって本当?コアサテライト戦略を実践しよう
運用成績の9割が資産配分で決まる
機関投資家の投資方針書・リスクテイク方針書は数百ページに及びます。このなかで、もっとも重要なのが資産配分(アセット・アロケーション)。つまり、運用するお金をどの資産にどんな割合で投資するかということです。
というのも、さまざまな研究から「運用成績の9割が資産配分で決まる」ことが明らかになっているからです。
運用成績の9割が資産配分で決まる
この表は、投資前に決めた資産配分がリターンに与えた影響の割合を示したものです。
たとえば、Brinson氏・Hood氏・Beebower氏の研究によると、米国の91の年金基金の1973年から1985年の四半期リターンの変動のうち、93.6%が資産配分の影響によるものだと説明できる、というわけです。
同様に、Ibbotson氏とKaplan氏の研究でも88.0%、日本の企業年金連合会の研究でも91.2%のリターン変動が資産配分の影響によるものという結論に達しています。
このような研究や調査は他にもあるのですが、それらでもおおむね9割程度は「資産配分が重要」という結果になっています。
つまり、お金を減らさずに増やす運用をするには、どの銘柄に投資するかより、資産配分をきちんと考えた方がいいというわけです。
機関投資家が活用するコアサテライト戦略とは
機関投資家は、資産配分を考える際に「コアサテライト戦略」という戦略をとっています。
コアサテライト戦略は、運用資産全体を「コア資産」と「サテライト資産」に分け、それぞれの運用商品を変える戦略です。
運用資産の7~9割、大部分は安定成長・長期運用のコアにします。コアは比較的価格変動が少ない商品で構成します。
それに対して、残りの1割〜3割程度はサテライト。サテライトでは積極的な運用を行い、高いリターンを目指します。
コアサテライト戦略はよくサッカーにたとえています。
コアがゴールキーパーやディフェンダーといった「守り」、サテライトがフォワードといった「攻め」というわけです。
コアがきちんと守って、安定して着実に増えているからこそ、サテライトでしっかり攻め、点を取りに行けるのです。
実際に生命保険会社のアニュアルレポートを見てみましょう。
生命保険会社のアニュアルレポートでは、毎年1回、預かったお金をどんな資産配分で投資しているのか、その内訳を開示しています。
生命保険会社のコア資産は債券
※貸借対照評価額ベース
グラフ:各社アニュアルレポートを元に筆者作成
左が第一生命、右がアフラックの資産配分を示す円グラフです。
どちらも、もっとも多く投資しているのは公社債です。公社債とは、日本国が発行する国債や、日本の会社が発行する社債といった債券です。その次に多いのが外国公社債。海外の国々や企業が発行する国債や社債です。
債券は、国や地方自治体、会社などがお金を借りるために発行する借用証書のようなもの。定期的に利息が受け取れ、満期になると元本が戻ってきます。
将来定期的に訪れる保険金支払いのキャッシュフローにもマッチしたコア資産です。第一生命の場合は、その他にも貸付金や現預金、コールローン(金融機関の間で短期間に行われるお金の貸し借り)、不動産といった資産も持っています。これらもコア資産です。
両社のコア資産の割合をまとめると、次のようになっています。
コア資産の割合
※貸借対照評価額ベース
グラフ:各社アニュアルレポートを元に筆者作成
第一生命は資産の8割強、アフラックにいたっては約9割がコア資産になっているのです。
生命保険会社は、お客さんにもしものことがあった場合に保険金を支払わなければなりません。運用によって資産が減ってしまえば、極端にいえば保険金の支払いに困ってしまうかもしれません。
それを防ぐために、債券中心の長期運用を行い、安全性を重視しているのです。
その一方で、第一生命もアフラックも、国内・海外の株式を合わせて10%程度保有しています。
全部債券にすると、利回りが少なくなってしまいますから、多少はサテライト部分で積極的に投資を行い、お金を増やそうとしているのがわかります。
コア資産で守りをしっかり固めているので、サテライト資産で攻めることができているのです。
機関投資家は、このように資産配分を守り、お金を減らさずに増やす運用を実践しているのです。