行政サービスの99%がデジタル化!「エストニア」電子政府のここがすごい
どうしてエストニアは電子政府を作ったの?
エストニアの電子政府のサービスは、このように大変進んでいますが、電子政府を作ったそもそもの理由は何のためなのでしょうか。
それには、エストニアの歴史が関係しています。
エストニアはロシア・旧ソ連占領されていた時代が続き、1940年の旧ソ連によるエストニア占領時には、多くのエストニア人が処刑、シベリア抑留もされたと言われています。
そういった経緯から、エストニアはロシアへの警戒感を強くしており、国力をつけるための国策のひとつとして政府の電子化がありました。
世界に先駆けて政府の電子化を進めることで、この分野ではなくてはならない存在感を示すことができ、多くの海外資本の流入によって経済がさらに活性化されるでしょう。
今後エストニアではどんなサービスができる?
これほどまでに進んだエストニアの電子サービスですが、さらに進化し続ける予定です。行政サービスのオンライン化がさらに進めば、官僚がゼロになる日もくるのではないでしょうか。
また、公的機関へのAI導入が進んでいきます。実験段階の自動運転車両や、ロボット宅配サービスなど、エストニアがどこよりも早く導入するかもしれません。
さらに、デジタルマネーについても注目です。エストニアの中央銀行は、電子政府システムの中核を成す技術が、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の開発に活用できるかを調査すると発表しました。※
クレジットカードの利用により、キャッシュレスは広まっていましたが、さらにデジタルマネーが通貨として流通する日に、一歩近づいたようですね。
※参考:coindesk JAPAN「電子政府の経験を活かすエストニア銀行、デジタルユーロを研究」
日本は電子政府になれるのか
日本もまた、電子政府を目指しています。2020年9月に発足した菅内閣で、デジタル庁設置を発表したのもその表れです。
デジタル庁のリーダーシップにより、各省庁を横断した電子化を進めていってほしいと思います。
電子化のカギは、マイナンバーカードの普及です。エストニアの電子IDカードのように広く普及すればよいのですが、日本ではすべての国民のわずか20.5%(2020年10月1日現在)。※
2020年9月から、マイナンバーカードを作ってマイナポイントを申し込むと、最大5000円分のマイナポイントが受け取れるキャンペーンが始まっていますが、それでもマイナンバーカードの普及は進みません。
マイナンバーカードを取得すると、今後マイナポータルを利用してオンラインでさまざまなサービスをうけることが可能になります。
たとえば、医療サービスです。2021年3月からはマイナポータルで事前登録しておくと、マイナンバーカードが保険証代わりに使えるようになります。引越しや転職などで健康保険証が切り替わっても、マイナンバーカードが使えるので便利です。
また、特定検診情報や、服薬履歴がマイナポータルから閲覧でき、医療者に共有することも可能になります。医師などから「どんな薬を飲んでいますか?」と聞かれて、薬剤名までは思い出せても、何ミリグラム錠だったかまでは…という時もありますよね。
そんな時にも患者が同意すれば、医師と情報を共有することができます。
さらに、年末調整が省力化できるようにもなります。年末調整では、保険会社の控除証明書を勤務先に提出する必要がありましたが、マイナポータルを利用して電子証明書として受け取れば、データとして提出して自動計算してもらえるという仕組み。
勤務先が対応しているかどうかにもよりますが、年末調整のシステムは2020年10月から、所得税の確定申告の手続きは2021年1月以降に利用できる予定です。
※参考:総務省「マイナンバーカードの市区町村別甲府枚数等について(令和2年10月1日現在)」
電子政府を目指すには、ひとりひとりの意識が大切
エストニアでは、政治・経済共に高い透明性を有し、各種資料や指標のほとんどがインターネットで閲覧可能である状況も、電子政府が実現した要因のひとつでしょう。高いセキュリティと政府に対する信頼は、デジタル化の基礎です。
日本が電子政府になるためには、多くの課題がありつつも、国民ひとりひとりの意識も大切なのではないでしょうか。
文・監修:ファイナンシャルプランナー(AFP) タケイ啓子