イギリスのEU離脱は遠い国の話じゃない! 日本経済への影響は?
イギリスは2020年1月31日、正式にEU(ヨーロッパ連合)を離脱しました。2020年12月31日までは離脱のための移行期間となりEU加盟時のルールが適用されますが、2021年からはEUのルールとは関係なくイギリス独自で経済活動をしていくことになります。
イギリスのEU離脱の動向によっては経済に悪影響があるのでは、と心配する声もあります。今回はイギリスのEU離脱による日本経済への影響について考えてみます。
イギリスのEU離脱について解説
EUはヨーロッパ間での人やモノ、お金などの移動を自由にすることで、平和や経済の発展を目指して設立されました。イギリスは1973年にEUの前身であるEC(ヨーロッパ共同体)に加盟し、その後もEUに加盟。2016年の国民投票でEU離脱を決定し2020年1月31日、正式に離脱しました。
離脱後は、すぐにイギリスがEUのルールから外れるのではなく、2020年12月31日まではEU離脱の移行期間としてEU離脱前のルールが適用されています。
貿易に関しては、EU加盟国間の輸出入には関税はかかりませんが、移行期間が終了するとイギリスにはそのルールが適用されなくなります。
そこで、移行期間中の課題として注目されているのが、イギリスがEUや他の国々と貿易のルールを締結できるかという問題です。
移行期間が切れる2021年からはEUの貿易ルールで取引ができなくなるので、イギリスはEUや他の国とFTA(自由貿易協定)を結ぶ必要がでてきています。
イギリスはGDPの規模が世界で5番目の経済大国です(2018年)※1。イギリスが各国とFTAを締結できなければ貿易で関税がかかり、イギリス経済が悪化することで、さらに世界経済への影響が大きくなることが懸念されています。
※1:International Monetary Fund
日本経済に与えると考えられる影響
2019年2月1日に日本とEU間でEPA(経済連携協定)が発効されました。ヨーロッパから輸入するワインやチーズが安くなるというニュースを見た方もいらっしゃるかと思います。
貿易が行われる際には、お互い自国の産業を守るためにも税金をかけます。ワインもヨーロッパから入ってくるものには関税がかかっていましたが、EPA発行と同時にワインへの関税は即時撤廃されました。チーズや他の輸入品ですべて即時ゼロとなるわけではありませんが関税を撤廃するルールが締結※2されました。
このEPAは日本とEU間で締結されたものですので、EU離脱移行期間終了後の2021年から、イギリスはEPAの対象外となります。
移行期間中に新たにイギリスと日本の間でFTAが締結されなければ日本、イギリスともに輸出企業にとっては不利になります。
日本とのFTA締結も気になりますが、これまで関税がゼロだったEUとのFTAがまとまらなければ、一時的にイギリスの評価が下がり、ポンド安になることから円高になるかもしれません。そうなれば、日本の株価に悪材料となる可能性もあるでしょう。
ただ、イギリスも自国が不利になるような着地はしたくないと考えて動いていると思います。イギリスの離脱の動向次第では一時的に経済の混乱はあるかと思いますが、筆者は日本、他国とFTA締結できると期待していますので、長期的な視点では日本経済に与える影響も過度に心配することはないと考えています。
※2:毎日新聞「日欧EPAでワイン、チーズ割安 消費者に恩恵」