ラグビーワールドカップ2019の経済効果はどのくらい? オリンピックTOKYO2020では?
昨年2019年を代表する出来事といえば、元号改正が筆頭にあるでしょうが、経済的に日本を底上げした出来事といえばやはり、ラグビーワールドカップ2019™日本大会が目下一番ではないでしょうか。
そして今年2020年はいよいよオリンピックの開催TOKYO2020です。今回は、ラグビーWC2019とオリンピックTOKYO2020の経済効果を、比較検証してみたいと思います。
ラグビーWC大成功の裏で、ビール・ハイネケンの消費貢献あり?
ワールドラグビーHPによると、2019年の本大会は「大成功」。観客動員数は延べ170万4,443人で、チケット総売り上げ枚数は約184万枚、販売率にして99.3%という、過去最高の販売率でした。
観戦チケットを購入できなかった人にも、ファンゾーンと呼ばれる大型スクリーンが設置された、入場無料の施設が各地に設置され、そこでのグッズ販売や飲食も経済効果に寄与しました。
筆者はラグビーには詳しくなく、流行語になった「にわかファン」でもないのですが、興味深いワードをインターネットで見つけました。
「ラグビーファンは、ビールを浴びるように飲む」
本当に浴びるように飲むかどうかの真相はさておき、実際にWC2019でビールメーカーとして唯一のスポンサー企業、ハイネケンを国内で製造販売するキリンビールの、10月販売概況レポートを見て、納得しました。
試合会場とファンゾーンで販売されるビールは、ハイネケンが独占販売権を持っています。大会開催期間9~10月の2カ月間で、ハイネケンの売り上げは前年比282%と、約2.8倍の売り上げをたたき出しています。大会開催期間の2カ月間だけの売り上げですから、WC2019が寄与したのは確実でしょう。
街の酒屋に生まれ育った筆者、お酒は好きで嗜んでいますが、メーカーに勤めているわけでもなく、さほど詳しいデータを持ち合わせていないにしても、オランダのビール・ハイネケンが日本で流通している度合いがそれほどメジャーでない事ぐらいわかります。
それが、ラグビー観戦期間に前年比2.8倍です。
オリンピックTOKYO2020はラグビーWCの、4~7倍の経済効果!?
さて、今年の大イベントオリンピックTOKYO2020ですが、開催決定からメディアで話題になっているのが、その「経済効果」です。
せっかくなので、ラグビーワールドカップ2019™と比較してみましょう。
ラグビーワールドカップ2019™の経済効果
ラグビーワールドカップ2019™では、スタジアム等のインフラ整備費用や大会運営費用、観客による消費といった直接的な経済効果があるほかに、国内のサプライチェーンを通じた需要拡大(第一次間接効果)、雇用増加による消費拡大(第二次間接効果)が期待されました。
オリンピックTOKYO2020で予想される経済効果
参照:東京都 オリンピック・パラリンピック準備局、会計検査院調査
では、オリンピックTOKYO2020はどうでしょうか。ラグビーWCと比べると、オリンピックが比較にならないほど大きな経済効果を見込んでいることが分かりますが、注意して見なければならないのは、内訳です。
経済効果の多くを占めるのは、会場建設やインフラ整備、大会観戦収益である「直接効果」ではなく、大会後のインバウンド効果や日本企業の輸出拡大、大会で使用した施設の再利用などから得る収益である「レガシー効果」だとされています。
経済効果はプラスの面で働くものだけではなく、「負の遺産」となるケースも見受けられます。
記憶に新しいのが2004年のアテネ大会です。オリンピックの開催のため多額の設備投資を行い、政府予算は当初の2倍に膨れ上がりました。オリンピック開催後は景気の落ち込みに加え、財政赤字に苦しみ、結局2009年以降、デフォルト一歩手前までの「ギリシャ危機」を迎えます。
建設した会場が効率よく使われる事も無く、その後設備の維持管理にコストがかかる、典型的な「負の遺産」となった例です。各機関がその効果を試算していますが、大切なのは「つくった後」の長い期間、いかに効率よく文化的に、その維持と発展をしていけるのかが問われます。
まとめ
去年今年と、スポーツの世界的祭典が立て続けに行われる日本。ラグビーWCが大成功を収めた次に、オリンピックを大成功に収められるかは、2020年以降に掛かっています。
1964年の戦後復興を世界にアピールした東京オリンピックから56年、TOKYO2020では独自の日本文化やホスピタリティ文化、高度な技術を、世界に発信できるかどうかがカギになるといわれています。
読者世代が社会の担い手となるこれから10~20年、経済の動きにより敏感に、そして参加していく気持ちを忘れずに、2020年を楽しみましょう。