仮想通貨取引所での資金洗浄(マネーロンダリング)額、2年で100億円超
Wall Street Journalの調査報道によると、過去2年間で仮想通貨を通じ8,800万ドル(9月執筆時点で約100億円相当、以下円換算はすべて9月時点のレートで概算)以上が資金洗浄されたそうです。この調査では、犯罪行為に関与していると裁判所が認めた2,500個を超えるウォレットが追跡されました。
米国で運営している取引所の中で、違法な資金を最も多く受け取っていたのが「ShapeShift AG」で、その額はおよそ900万ドル(約10億円)に及びます。同社はスイスで法人化した仮想通貨取引所で、ビットコインとアルトコインの匿名取引サービスを提供しています。
ShapeShiftのエリック・ボーヒーズCEOは、匿名取引に寛容な考えを持つ人物で、仮想通貨取引所における本人確認の義務化や、資金洗浄対策法に反対しています。
Wall Street Journalの調査では、犯罪者がShapeShiftを通じてビットコインをモネロ(Monero/XMR)に交換していることを示す証拠も見つかりました。モネロは匿名性に重点を置いた仮想通貨で、資金洗浄の際に取引を隠す目的でよく使われています。
2017年にはWannaCryという、身代金として仮想通貨を要求する不正プログラムが世界中で猛威を振るいました。このWannaCryによって盗み取られたビットコインは、ShapeShiftを通じて資金洗浄されています。
別の事例としては、あるICO詐欺で盗まれたイーサリアムのうち、51,700ドル(約590万円)相当がShapeShiftに送られ、モネロに交換されたと分かっています。
さらに、ShapeShiftに成り済まして、洗浄目的の資金を騙し取るコピーサイトまで存在するとのことです。
Wall Street Journalは、ShapeShiftに疑わしいアカウントに関する情報を提供し、ShapeShift側はそれらのアカウントを凍結しました。
ShapeShiftの最高法務責任者であるベロニカ・マックレガー氏は、「資金洗浄対策や本人確認に関する規制に従う準備を現在進めています。エリック・ボーヒーズCEOの主義主張とShapeShiftの運営方針は別物です。ボーヒーズCEOは資金洗浄に賛成しているわけではありません」と説明しました。
ボーヒーズ氏自身は、Wall Street Journalのこの報道を批判しています。同氏は、今回報じられた金額はShapeShiftの総取引額のわずか0.2%未満に過ぎず、銀行よりも少ない割合だと語っています。
同氏はTwitterで、「Wall Street Journalの誰かが不完全な調査の下で執筆した記事のことは知っています。これは、不誠実で誤解を招く内容です。著者は都合のいいデータだけを取り上げ、都合の悪い事実は無視しています。900万ドル(約10億円)という数字は我々の総取引額の0.2%未満ですが、銀行での取引における資金洗浄の割合は2~5%に達します」と主張を投稿しています。