仕組みは?金額はいくらくらい?厚生年金保険料について
厚生年金は、サラリーマンや公務員として企業などで働く人が加入している年金制度です。自営業や20歳以上の学生が加入する国民(基礎)年金と比べると、保険料の計算や年金の給付について大きな違いがあります。
今回は厚生年金を詳しく解説します。
厚生年金の仕組み
公的年金制度は次の図のような仕組みになっています。
第1号被保険者:第2・3号被保険者ではない20~60歳の人(自営業者や学生など)
第2号被保険者:会社員や公務員で65歳未満または65~70歳未満の老齢基礎年金の受給資格のない人
第3号被保険者:第2号被保険者に扶養されている20~60歳の配偶者
厚生年金の仕組みの図
筆者作成
厚生年金は「被用者年金」とも言われ、誰かに雇われている人が加入している年金制度です。会社の社長も会社(法人)に雇われていると考えられるので、社長しかいない会社でも厚生年金に加入することになります。
一方個人事業の場合は、基本的には5人以上働いている人がいれば働いている人は厚生年金の対象となりますが、事業主は誰かに雇われているわけではないので厚生年金には加入できません。
会社や、5人以上働く人がいる個人の事業所で働いているからといっても、全員が厚生年金の被保険者になるわけではなくて、正社員または正社員の4分の3以上の日数と時間を働いている人が対象となります。
正社員の4分の3以上の労働時間がなくても、被保険者が501名以上いる会社に勤める以下の要件をすべて満たす人は厚生年金の加入対象となります。
・月額賃金が8万8,000円以上
・1週間の労働時間が20時間以上
・1年以上雇われる予定
・学生ではない
厚生年金の保険料の決まり方
厚生年金保険の保険料は以下の計算で決定されます。
給与からの保険料
基本的には毎年次の順番で計算され、その額が9月分から翌年の8月分までの1年間の毎月の保険料となります。
① 毎年4・5・6月に支給された3カ月間の給与総額(通勤手当含む)を3で割って平均額を出します(この平均額を「報酬月額」といいます)
② 下図の表で、報酬月額から「標準報酬月額」を決定し、その額に18.3%を掛けた額が毎月の保険料となります
※標準報酬月額とは、報酬の月額を区切りのよい幅で区分した金額。健康保険・厚生年金保険の保険料などの計算の基準になります。
③ ②の額を、会社と従業員が折半で負担します
【例】
4月の給与総額:23万5,300円
5月の給与総額:22万2,300円
6月の給与総額:28万2,900円 だとすると
① (23万5,300円+22万2,300円+28万2,900円)÷3=24万6,833円…報酬月額
② 報酬月額が24万6,833円なら、下の表から標準報酬は16等級24万円となります。
24万円×18.3%=4万3,920円が1カ月の厚生年金保険料となり、
③ その半分である2万1960円が9月分給与から毎月天引きされ、半分は会社が負担し、合算した額が保険料として会社が納付します。
厚生年金保険料額表(令和元年10月現在)
日本年金機構ホームページを一部抜粋 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo-gaku/gakuhyo/20170822.files/1.pdf
賞与からの保険料
賞与で納付する保険料は賞与の都度計算されます。
総支給額(上限150万円)の1,000円未満を切り捨てた標準賞与額に、保険料率18.3%を掛けた金額が保険料額となります。
【例】
賞与総支給額:30万円なら、
① 30万円×18.3%=5万4,900円
② その半分である2万7,450円が賞与から天引きされ、給与と同じく残り半分は会社が負担し合算して納付されます。
このように会社負担はあるのですが、会社としては従業員の福利厚生のため、経費として計上できることもあり、厚生年金に加入しています。つまり社員からみれば、厚生年金に加入することで、半分の負担で将来の年金が増えるという大きなメリットがあるのです。
厚生年金はいつからもらえる?
男性1961(昭和36)年4月2日、女性1966(昭和41)年4月2日以降に生まれた人は、公的年金に加入している期間が10年以上あれば、老齢基礎年金の上乗せとして老齢厚生年金が65歳から受け取り開始となります。
厚生年金からの支給は老齢に関するものだけではありません。
厚生年金加入中の病気やけがが原因で障害を負ってしまったときに支給される「障害厚生年金」と、厚生年金の加入者や加入者であった人が死亡したときに遺族に支給される「遺族厚生年金」もあります。
障害厚生年金も遺族厚生年金も、それぞれ要件を満たしていれば受給の対象となり、国民年金だけに加入していた場合よりも受給者にとって有利な給付内容となっています。
まとめ
厚生年金の加入手続きや保険料の決定や変更の申請は会社がすべてしてくれて、自分ではタッチすることがありません。なので、知らない間に保険料の天引きが始まって、知らない間に保険料が変わっているという印象になります。
けれど、若いころからの厚生年金保険料が、老後に受け取る年金に大きくかかわっているだけでなく、障害や遺族の保障にも関係しています。
ぜひ厚生年金のしくみや保険料に興味を持ってもらいたいと思います。